2月1日から投票が始まった「みんなの建築大賞2026」のノミネート作「この建築がすごいベスト10」の中で、本サイトでまだリポートしていなかったいくつかの建築を紹介していく。今回は長崎市の「ド・ロさまと歩くミュージアム」。設計したのは文化財保存計画協会とDESIGN FOR HERITAGE (D4H)だ。


ド・ロさまと歩くミュージアムは、長崎市の北西部、外海地区にある。「外海」は「そとめ」と読む。複数あるエリアのうち、今回目指すのは大平エリアの「山の修道院」だ(長崎市変岳712番2)。
「ド・ロさま」とは、マルク・マリー・ド・ロ神父(1840~1914年)のこと。明治期に来日し、外海地区で住民の生活向上に尽くしたフランス人宣教師だ。ミュージアムは、ド・ロ神父の関連施設を巡ってその精神を体感してもらう、同地区出津・大野エリアを中心とした歴史遺産活用プロジェクトである。
関連施設を所有する「お告げのマリア修道会」が母体となる一般社団法人「ISHIZUE」(長崎市)が企画運営を行う。先に開業していた「旧出津救助院」(国指定重要文化財、長崎市西出津町2696-1)など、エリアに点在する神父ゆかりの場所を歩いて巡ることができるように整備し、宿泊や食の体験を通して神父の精神や営みを感じる「フィールドミュージアム」を目指している。
大平(おおだいら)エリアの「山の修道院」には、2024年に2つの核となる建物が完成した。1つが冒頭に写真を載せた「大平作業場跡」だ。
設計の中心になったD4Hの西村祐人代表はこの建築だけでなく、ミュージアム全体のデザインを手掛ている。1984年生まれの西村氏は、文化財保存計画協会を経て、2020年にD4Hを設立した。
ド・ロ神父は1879(明治12)年、外海地区に主任司祭として赴任。夫を亡くした女性や母親たちの生計を助けるため、授産場やマカロニ工場などを建設した。大平エリアには17年かけて山林を畑に変え、茶や小麦を栽培・加工して外国人居留地などで売って貧者救済に充てた。

大平作業場跡は1901年ごろの建築とされ、神父が考案した石積みの技法「ド・ロ壁」が使われている。

歴史遺構を修復したものだが、“攻め”の姿勢がすごい。文化財保存を正面から経験して“守り”を熟知しているからこそできる再生だ。

石積みの壁に構造的な負担がかからないよう、覆い被さるように屋根や外壁が建てられている。



最小限の足し算によって、昔のような作業が行える場として生き返った。

茶炒りやパンづくりなどが体験できる場として活用している。






「大平の山小屋」へ
山の修道院のもう1つの施設は、「大平の山小屋」。こちらは新築だ。設計はD4H。




大平の山小屋は1棟借りの宿泊施設。行くまで知らなかったのだが、意外に安い料金で宿泊できる。公式サイトによると、一泊の料金は「基本料金 ¥10,000+人数料金(大人(中学生以上)¥5,000/名 小人(小学生以下)¥3,000/名※幼児は無料でご利用できます)」。つまり、1人で1棟借りても1泊1万5000円だ。借りて泊まればよかった…。詳細は公式サイトで。
ミュージアムの入り口となる管理所なども徐々に整備を進めている。


案内してくれたシスターに聞くと、「作業場跡はいつでも見ることができるので、気軽に見に来てください」とのこと。
レンタカーで行く人に1つ注意事項。山小屋と作業場跡はほぼ同じ場所にあるのだが、住所が違う。作業場跡は長崎市西出津町1196-11。この「西出津町」の読み方がわからず、カーナビに入れられなくて困った。「出津」は「しつ」と読む。
リノベーションに関わる人は必ず見るべき建築だ。設計をやらない筆者ですら創造心がメラメラと沸いてきたので、きっと設計のモチベーションが高まると思う。
そして、「みんなの建築大賞」の誘導から読んでくださった方。心に響いたら以下で投票を。(宮沢洋)
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■ド・ロさまと歩くミュージアム 大平作業場跡
所在地:長崎県長崎市西出津町1195-26/発注者:お告げのマリア修道会/設計者:文化財保存計画協会、DESIGN FOR HERITAGE [D4H]/設計協力者:川村構造設計室(構造)/施工者:福島建設(第I期工事)、西海建設(第Ⅱ期工事)、水口建設(第Ⅲ期工事)/構造: 鉄骨造、一部木造・鉄筋コンクリート造/階数: 地上2階/延べ面積:228.10m2/施工期間:2022年1月〜2024年10月
