辺見設計・C+A共同企業体が設計して今春利用を開始した「アグリカレッジ福島」新校舎等(福島県矢吹町)の見学会が、8月9日と10日の2日間、福島県建築士事務所協会青年部の主催で開催された。木造というと都心の“耐火木造ビル”の話題が多い昨今だが、「木造建築のそもそもの良さってこういうことだよな…」ということを思い出させる建築だった。


筆者が参加した8月9日午前の部は、CAt(C+A tokyo)の赤松佳珠子氏、大村真也氏と、辺見設計の邉見(へんみ)啓明代表が案内してくれた。辺見設計は地元・福島県白河市の設計事務所。邉見代表は見学会を主催した福島県建築士事務所協会青年部の部会長も務める。

アグリカレッジ福島の正式名称は「福島県農業総合センター農業短期大学校」。新たにつくられたのはアグリ探求棟、屋外作業準備棟、一般宿泊棟、学生寮。

スマート農業に対応した探求棟(ホール+ラボ)と研修者のための宿泊棟、学生寮など分棟の木造建物が渡り廊下で結ばれ、既存校舎とも接続する。以下、CAtのサイトより(太字部)。
アグリカレッジ福島-アグリ探求棟・屋外作業準備棟・一般宿泊棟・学生寮-
2021年に実施された公募型プロポーザルで特定され(辺見設計・C+A JVとして)スタートしたプロジェクト。敷地は、福島県南部の矢吹町に位置し、県立農業短期大学の寮施設の建替えとスマート農業に対応した研修ホールの新築計画である。
我々は「新時代のリーダーを生み出すクリエイティブ・プラットフォーム」としての新しいプログラムを提案した。男女寮と外部研修者のための一般宿泊棟、屋外作業のための準備棟、スマート農業の研修ホールなどのプログラムを9つのボリュームに分割し、建築の軒先と各棟へのびる渡り廊下が既存校舎から連続するネットワークとして敷地全体を有機的につなぐ。



寮と一般宿泊棟は、福島の伝統的な前沢曲家集落のようなL字型の屋根が連なる風景を連想させる要素を含みながら、ドマとヒロマ、エンガワによってアクティビティを誘発し、ホール棟と屋外作業準備棟は、周辺環境に呼応するように変形しながら形づくられた六角形平面のホールを中心に、学生や訪れた人々の学びの場として、段差や柱、家具を手がかりに広がるFLA(Flexible Learning Area)が多様な活用を受け入れる空間となる。


屋内空間の目玉は六角平面のクリエイティブホールだろう。説明されなかったら、見えない部分に鉄骨が入っていると思ってしまうが、張弦以外はすべて木造、しかも集成材ではなく製材だという。

クリエイティブホールの構造については、この建築を取り上げた『新建築』2025年4月号の稲山正弘氏による説明文を引用する。
分棟化することによりすべての建物を木造とし、プレカット加工を含めて県内で流通が完結する在来木造スケール(部材の最大長さ6m以下)の八溝(やみぞ)スギ一般流通製材を利用してつくられている。(中略)
クリエイティブホールの六角形平面の大スパン空間の小屋組は、学校のシンボルとなる先端的なリング張弦梁構造を採用している。リング張弦梁の上弦材と束材は地場産スギ製材とし、下弦材と12角錐の下辺については丸鋼を用いた木と鉄骨のハイブリッド構造による軽快でダイナミックな架構としている。ホールの六角平面のうちの4辺の壁は柱のない大きな開口部となっており、開口上部の垂れ壁を合板充腹梁や木造平行弦トラスとすることによって開放的な大空間を実現している。

高さが凸凹の渡り廊下がリズミカルで楽しい
全体の延べ部面積は4000㎡を超えているが、連結する棟を1000㎡以下に抑えることで、すべて在来木造としている。
今回の見学会では、学生寮の室内には入ることができなかった。実は、筆者はここを訪れるのは2回目。1回目の訪問は今年5月で、そのときは同校の職員の方に学生寮も案内してもらったので、そのときの写真を参考に掲載する。




そして、各建物の庇と重なるように伸びる渡り廊下の屋根が、リズミカルで楽しい。渡り廊下は高さが大きく2種類あって、これは単なるデザインではなく、緊急車両が通れるように一部の高さを上げたもの。1000㎡以下に区切って木造化しているので、それぞれに緊急車両が入れなくてはならないそう。なるほど。



なお、この建築は、筆者が3年前から関わっている福島県の建築サイト「ふくしま建築探訪」/ふくしま三つ星建築」(こちら)でも取り上げる予定。掲載は秋になると思うが、お楽しみに。(宮沢洋)
■建築概要
アグリカレッジ福島-アグリ探求棟・屋外作業準備棟・一般宿泊棟・学生寮-
建築主:福島県
用途:専修学校(研修施設)・宿泊施設・寄宿舎
構造:木造(一部鉄骨造 渡り廊下)
階数:地上1 階( 一部地上2 階)
敷地面積:397,940.00 ㎡ ( キャンパス全体)
建築面積:4,180.36 ㎡
延床面積:4,449.98 ㎡
最高高さ:10.47m
■工程
設計:2021.09-2023.03
施工:2023.10-2025.01
■設計
意匠:辺見設計・C+A 共同企業体(辺見設計, 赤松佳珠子+ 大村真也/CAt)
構造:ホルツストラ
設備:ZO 設計・(設計アドバイス)創スペース
外構:SfG landscape architects
照明デザイン:岡安泉照明設計事務所
音響アドバイザー:上野佳奈子( 明治大学)
サイン:imamoi
■施工
建築:藤田建設工業
空調・衛生:山田設備工業
電気:高柳電設工業
