みんなの建築大賞推薦委員会(委員長:五十嵐太郎)は2月16日、文化庁およびジンズ(JINS)協力のもとで実施した「みんなの建築大賞2026」において、大賞を「null²」に、推薦委員会ベスト1を「大屋根リング」に授与することを発表した。





大賞は、「X」「Instagram」「Googleフォーム」の3つの一般投票で最も多くの票(3メディアの合計)を獲得した建築に与えられる。また、推薦委員会ベスト1は、ノミネート作である「この建築がすごいベスト10」を選定する推薦委員会の場で最も評価の高かった建築に与えられる。

【大賞】null²/落合陽一、ノイズ(NOIZ)、フジタ・大和リース特定建設工事共同企業体、乃村工藝社、ワウ(WOW)、アスラテック ほか


「現実には難しいと思われた『建築に対する情報技術の実装』が鮮やかに実現された。メカニックと建築を連動し万博期間中、随時更新する設計施工のあり方も革新的だった。花博への移設も楽しみ」(平塚桂)
「鏡面の有機的なフォルムが周囲を反射し、風景と一体化する。デジタルと物理性が高度に融合したこの建築は、これまでの固定概念を壊し、観る者の思考を誘発する。独自の美学が凝縮された、挑戦的な傑作である」(津川学)
■建築概要
所在地:大阪府大阪市此花区夢洲中1地先/発注者:公益社団法人 2025年日本国際博覧会協会/設計・演出・制作(Design / Direction / Production):落合陽一(プロデューサー/ディレクター、建築外観ディレクション、建築外装演出、内装演出・制作、内装デザイン)、ノイズ(建築基本設計、建築実施設計)、フジタ・大和リース特定建設工事共同企業体(建築実施設計、建設施工、内装施工)、raw(建築外装演出)、アスラテック(建築外装演出、内装演出・制作、ロボティクス設計)、TASKO(建築外装演出、特殊装置設計・施工)、ワウ(内装演出・制作)、アクセル(内装演出・制作)、乃村工藝社(内装演出・制作、内装デザイン、内装設計、内装施工)、アラップ(構造設計)/施工(Construction):フジタ・大和リース特定建設工事共同企業体(建設施工、内装施工)、乃村工藝社(内装施工)、尾崎ウェルスチール(屋根施工)、太陽工業(外装膜)、セイビ堂(LED施工)、プリズム(LED施工)、ファナック(ロボットアーム監修)、TASKO(特殊装置設計・施工)、アスラテック(ロボティクス設計)/マネジメント・事業・運営(Management / Operations):リアルワース(建築マネジメント)、オクサット(建築マネジメント、総合監理)、サステナブルパビリオン2025(ショップ販売事業者、Mirrored Body®︎開発)、博報堂(運営)、博報堂プロダクツ(運営)、一般社団法人計算機と自然(総合監理)、ジセカイ(総合監理、バーチャル万博、作品展示・制作・設置・茶室)、マツダ(総合監理、バーチャル万博) /開発(Mirrored Body®︎ / Digital Systems):アクセンチュア(Mirrored Body®︎開発)、インダストリアルドリーム(Mirrored Body®︎開発)、近藤生也(Mirrored Body®︎開発)、布留川英一(npaka)(Mirrored Body®︎開発)、エユラス(Mirrored Body®︎開発)、TAKUMA YAMAZAKI DESIGN(Mirrored Body®︎開発)、日本電気(Mirrored Body®︎開発)、VESS Labs(Mirrored Body®︎開発)、田中章愛(バーチャル万博)/構造:鉄骨造 /階数:地上2階(展示棟)、地上1階(プレハブ棟) /延べ面積:655.46m2/施工期間:2024年1月~2025年2月/開館日:2025年4月13日/主な雑誌掲載:新建築2025年12月号、日経アーキテクチュア2025年4月24日号
【推薦委員会ベスト1】大屋根リング/藤本壮介、忽那裕樹、東海林弘靖、東畑・梓設計JV、大林組、清水建設、竹中工務店


「戦争や貧富差など様々な分断が生じている世界情勢の中で、調和や平和を思わせる円環木造建築を万博のシンボルとした功績は大きい。寝転がれる芝生や、繊細な花を咲かせた緑化も素晴らしかった」(菅原由依子)
「上に上がれば会場全体を見渡せ、下ではベンチに腰かけて休める。雨よけ、日よけとしても毎日大活躍。これほど多機能な『大屋根リング』は、歴史に名を刻んだと言ってよいだろう」(和田菜穂子)
■建築概要
所在地:大阪府大阪市此花区夢洲中1地先/発注者:公益社団法人 2025年日本国際博覧会協会/設計者:藤本壮介(会場デザインプロデューサー)、忽那裕樹(ランドスケープデザインディレクター)、東海林弘靖(照明デザインディレクター)、東畑・梓設計共同企業体(基本設計)、大林組(実施設計・監理:大屋根リング全体統括管理、PW北東工区)、清水建設(実施設計・監理:PW南東工区)、竹中工務店(実施設計・監理:PW西工区)/施工者:大林組・大鉄工業・TSUCHIYA共同企業体(会場全体統括管理,PW北東工区)、清水建設・東急建設・村本建設・青木あすなろ建設共同企業体(PW南東工区)、竹中工務店・南海辰村建設・竹中土木共同企業体(PW西工区)/構造: 木造・一部鉄骨造(EV)/階数: 地上2階 /延べ面積:6万6900.02m2/施工期間:2023年4月〜2025年3月/開館日:2025年4月13日 /主な雑誌掲載:新建築2025年12月号、日経アーキテクチュア2025年4月24日号
今回、新設された「JINS賞」は、「ラビットホール」に授与された。本賞の協力者であるJINS(ジンズホールディングス)の創業社長で代表取締役会長CEOの田中仁氏がノミネート10施設のなかから選んだ。
【JINS賞】ラビットホール/青木淳@AS

■田中仁氏のコメント:「ラビットホールは、完成を目指さず、使われ、壊され、更新され続けることを前提にした建築と聞いて納得しました。用途や意味を固定せず、行為の積み重ねによって空間が変化していく姿勢は、変化を恐れず挑戦を重ねる我々JINSの思想と深く重なると感じます。過剰な装飾を剥ぎ、最低限の条件だけを残すことで、人と活動に主導権を委ねる。その余白こそが、次の創造を生み続ける力になると考え、JINS賞を贈りたいと思います」


「バブル期の建物をここまでかっこよくするとは! と驚きのリノベーションにより誕生した現代美術館。階段、手すり、むき出しの床など。石川コレクションの現代アートと相まって特別な空間に仕上がっている」(白井良邦)
「工作をするようなコンバージョンを通じて、設計者が『ポストモダン建築』と呼ぶ擬古典的な当初建物がいっそう多義性を増し、概念を揺るがすという、コンセプチャルアートと共鳴した美術館の誕生」(倉方俊輔)
■建築概要
所在地:岡山県岡山市北区丸の内2-7-108/発注者: 公益財団法人石川文化振興財団/設計者:AS/設計協力者:金箱構造設計事務所(構造)、ZO設計室(設備)、菊地敦己事務所(トイレサインのみ)/施工者:太陽建設/構造: 鉄筋コンクリート造、一部鉄骨造/階数: 地上3階/延べ面積:991.76m2/施工期間:2024年3月〜12月/開館日:2025年4月6日/主な雑誌掲載:新建築2025年5月号
また、ノミネート作を決める推薦委員会選考会(1月13日に開催)で「旧香川県立体育館再生計画」に「特別賞」を授与することが決まった。これは完成したプロジェクトではないため、投票対象とはしていない。
【特別賞】旧香川県立体育館再生計画/旧香川県立体育館再生委員会


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投票経過/初日から万博2施設がデッドヒート
今回、投票対象となったのはこの10件だった。
【2026 この建築がすごいベスト10】(掲載は施設名の50音順、施設名の後は主たる設計者)
1)大屋根リング/ 藤本壮介、忽那裕樹、東海林弘靖、東畑・梓設計JV、大林組、清水建設、竹中工務店
2)霞ケ浦どうぶつとみんなのいえ/髙橋一平建築事務所
3)Ginza Sony Park/Ginza Sony Park Project、荒木信雄、石本建築事務所、竹中工務店
4)東海国立大学機構Common Nexus/小堀哲夫建築設計事務所
5)ド・ロさまと歩くミュージアム 大平作業場跡/文化財保存計画協会、D4H
6)ニシイケバレイ/須藤剛建築設計事務所
7)null²/落合陽一、ノイズ(NOIZ)、フジタ・大和リース特定建設工事共同企業体、乃村工藝社、ワウ(WOW)、アスラテック ほか
8)広島駅南口ビル/西日本旅客鉄道、ジェイアール西日本コンサルタンツ、東畑建築事務所、SUPPOSE DESIGN OFFICE、大林組、広成建設
9)横浜美術館 空間構築/乾久美子建築設計事務所、菊地敦己事務所
10)ラビットホール/青木淳@AS
今回の一般投票での獲得票数トップ5は、上位から順に「null²」、「大屋根リング」、「広島駅南口ビル」、「東海国立大学機構Common Nexus」、「ニシイケバレイ」だった。




総評/五十嵐太郎

みんなの建築大賞は、3年目を迎え、投票数が飛躍的に増えたことが、大きな成果だった。その牽引力となったのが、大阪・関西万博から選ばれ、2トップの競り合いがあった「null2」と大屋根リングである。やはり、国民的なイベントにおいて建築の存在が広く意識されたことを示すだろう。通常、万博のパビリオンは、外部のデザインと内部のコンテンツが乖離しがちであるという宿命をもつが、「null2」は両者を連続的につなげることに成功した奇跡的なプロジェクトだった。また、これをプロデュースしたメディアアーティストの落合陽一氏によるnoteのテキスト「最後くらいリングに勝ちたい」は、印象に残った。大屋根リングについても、藤本壮介氏がプレゼン総選挙の番組とは別に、約13分バージョンの動画を公開している。いずれもSNS上で多くの投票を集めるとともに、万博を楽しんだ人たちからありがとうというコメントが多く寄せられていた。そしてX(旧twitter)、InstagramとGoogleフォームの3つのプラットフォームにおいて、「null2」がいずれも最多の得票を集め、みんなの建築大賞に決まった。圧倒的に規模が違う相手に対するジャイアントキリング、おめでとうございます。また大屋根リングは、候補となる10作品に絞る際、推薦委員からもっとも多く挙げられていたことから、推薦委員会ベスト1となっている。
3位と4位となった広島駅南口ビルと東海国立大学機構Common Nexusは、誰もが空間を体験できる公共的な性格をもつ施設であり、おそらく地元からも愛され、票を集めたのだろう。さて、みんなの建築大賞の候補となった10件のプロジェクトは、昨年と同様、リノベーション系の作品が多い。すなわち、ニシイケバレイ、霞ケ浦どうぶつとみんなのいえ、ド・ロさまと歩くミュージアム 大平作業場跡、横浜美術館 空間構築、ラビットホールであり、半数を占める。そしてGinza Sony Parkは新築だが、どこかリノベーション的な感覚をもつ挑戦的なプロジェクトだった。かつてこうしたアワードは、新築ばかりが当たり前だったが、これからは定常化するかもしれない。個人的に興味深いのは、霞ケ浦どうぶつとみんなのいえ、横浜美術館 空間構築、ラビットホールは、ポストモダン建築に対する介入だったこと。モダニズムのリノベーションはめずらしくないが、ポストモダンもそうした対象となる時代に突入したことを実感する。知的かつ遊び心のある操作を探求したラビットホールは、今回新設されたJINS賞に選ばれた。
また推薦委員からそれぞれ3作品を挙げてもらうなかで、旧香川県立体育館再生計画が入っていた。本来、みんなの建築大賞は、竣工したプロジェクトに与えられるものであり、対象外のノミネートとなる。しかしながら、建築の専門外に広く推したいものを応援する賞という性格をもつことから、投票の対象とはしない代わりに、例外的に特別賞の枠で、その試みを選ぶことにした。(五十嵐太郎東北大学大学院教授)
10選の選考過程/全委員(29人)の推しコメントを公開!

有岡 三惠/編集者、Studio SETO
大屋根リング
万博という人類の諸行をゆったりと俯瞰する佇まいが圧巻。屋上では植物がそよそよと風になびき、遠くに大阪湾を望む、公園のような別世界。国内ゼネコンの技術を結集した貫構法による回廊も壮大。
森になる建築
生分解性樹脂を構造材とし、3D プリンタで施工。建築の寿命を終えても、土に還り森になる。素材である酢酸セルロース樹脂の今後の展開に注目だ。単一素材の世界最大3D プリンタ建築でギネスにも認定。
旧香川県立体育館再生計画
建築文化と民主主義、政治の関係を考えるきっかけとなる提案。文化財になり得る丹下建築の解体に公費を投じるのか、民間に売却し利活用するのかを巡って県と民間の意見が対立。結論は司法の場で決着予定。
飯田彩/編集者、Design Communicator
東海国立大学機構Common Nexus
市民も利用できる大学の共創拠点。大地がめくれ上がったような大屋根の上には、キャンパスのグリーンベルトと連続する芝生広場が広がる。長年のキャンパス計画が結実した街に開かれた大学の姿。
霞ケ浦どうぶつとみんなのいえ
霞ヶ浦湖畔の老朽施設を、官民連携で「動物園」として再生。既存建物は大半を半屋外化、新設した歩廊で園内を巡る。自然との共生を考える場として、キリンや動物たちとの距離の近さが画期的だ。


横浜美術館 改修・空間構築
横浜美術館の象徴「グランドギャラリー」の天井ルーバーが再び開いた。開放的な大空間に新たに家具やサインを設え、入場無料の展示・休憩空間に。丹下建築を生かしつつ、街に開く手腕が見事。
五十嵐太郎(委員長)/建築史家、東北大学教授
大屋根リング
将来、2025年を振り返るとき、必ずこのビジュアルが使われるだろう。久しぶりに建築の力を感じさせ、国民的な認知度を獲得したプロジェクトである。すぐに壊さず、もう少し残し、体験できる人を増やして欲しい。
ラビットホール
クセの強いポストモダン建築のリノベーションは、今後の重要な課題になると、以前から思っていたが、やはりこれを巧みにできるのは青木淳さんだった。未完成な感じの空間も、現代アートとの相性が抜群。
横浜美術館 空間構築
かわいらしい什器をあちこちに散りばめることで、丹下健三の強いポストモダン建築を柔らかくチューニングしたプロジェクト。建築の骨格を変えなくとも、空間の印象を大きく変える手法としても興味深い。


磯達雄/建築ジャーナリスト
ド・ロさまと歩くミュージアム 大平作業場跡
長崎県内で布教を行ったド・ロ神父の設計により、1901年頃に建てられた作業所の保存再生。屋根が失われ石積みの壁だけが残る遺構に最小限の手を加え、廃墟を廃墟のままに建築化している。


大屋根リング
全周2kmという超巨大構造物だが、屋上の通路から内側を眺めると、612m 先に反対側を歩いている人々の姿が小さく認められる。離れているけど、つながっている。そんな状態を達成した建築。
移動型キオスク「雲がおりる」(設計:石上純也建築設計事務所)
ひろしま国際建築祭のインフォメーションセンターとして、会期中、福山駅前に設置されたもの。鋼板シェルがわずか3点で地面と接する。クレーンで吊って、置かれただけなのに安定している。
市川紘司/建築史家、東北大学助教
横浜美術館 空間構築
ポストモダン美術館のいかめしい大空間を今風の柔らかな居場所群へと転回する、見事なリノベーション。非日常の日常化、あるいは「遊園地」の「原っぱ」化。バブル建築改修のモデル例としたい。
大阪・関西万博休憩所3(設計:山田紗子)
カラフルでガチャガチャとした造形が、自由と秩序のぎりぎりのバランスを成立させる。この設計理念が展開された公共建築が見てみたい。そう思わせる万博パビリオン、意外と少なかった。王道。
加藤純/編集者、Kazana Inc.代表
大屋根リング
円環で閉じながら、多孔で余白のある開いた姿で、地と図の概念を超越。親しみを覚えるスケール感の柱・梁で生み出した圧倒的な存在感。来場者数の増加ともに共鳴を呼ぶ現象を生んだ半建築。
NEWoMan 高輪(設計:sinato、PRINT AND BUILD)
定型化した商業モールの形式を、全力で崩しにかかった意欲作。細長い敷地の中に街路空間と個性のある吹き抜け空間を設け、老若男女が歩いて楽しい体験に。恐ろしく多彩な仕上げも効いている。
あなぶきアリーナ香川(設計:SANAA)
2つのアリーナと武道施設を流線型の大屋根で覆ってつなげた多目的施設。海や山の景色と一体化、透明感と開放感のある軒下は公園のような場所に。ステンレス屋根は光を鈍く反射し、空に溶ける。
神中智子/編集者
横浜美術館
切妻のトップライトに明るさがよみがえり、自由なふるまいを誘発する手がかりがあちこちに。寸法や素材の緻密な検討、繊細な配置が、重厚感ある大空間を「みんなの広場」に更新している。
シグネチャーパビリオン Dialogue Theater―いのちのあかし(設計:SUO)
奈良県と京都府の山あいに建つ廃校の校舎を解体・移築し、大阪・関西万博のパリオンとして再生。子どもたちの記憶が積層する空間の中で繰り広げられた対話は、無作為とは思えない、心震える体験でした。
倉方俊輔/建築史家、大阪公立大学教授
Ginza Sony Park
銀座の一等地に、有名建築家の名を借りず、これだけのオープンスペースを有する、従来にないプログラムの建築を生み出すとは、あのSONYが唯一手を出していなかったジャンルに進出した好例。


ハニヤスの家(設計:AATISMO)
既秋に訪れると、それは鎌倉の紅葉も映し出していた。陶芸の技法を取り入れた壁面、茶室の設え、即物的なコンセント類などが、みな山居という理想において合致する、軽やかに工芸的な住まい。
ラビットホール
(コメントは前掲)
阪口公子/編集者、コンフォルト編集部
土層の小屋(デザイン:内田鋼一)
ギャルリ百草の敷地内に立つ版築による小屋。ごく小さな空間だが土の迫力に満ち、限られた窓からのぞく緑とあいまって生命力にあふれる。瓦も内田氏の作。周辺から出土した陶器の欠片も活用。
千葉工業大学茶室「青灯亭」(設計:三井嶺)
水無瀬神宮「燈心亭」を写した茶室。格式の高い本歌に倣いつつ、素材やディテールを吟味。小間・広間・立礼として使用可能とし、現代に活きる茶室としての工夫を散りばめている。
遷庵(主催・施工:GRANDIR クリエイター:小阪雄造 田中悠史 市川善幾 萩谷綾香 佐藤洋美)
DESIGNART2025 で披露された金属製の茶室。鉄骨の柱を四隅に立て、床・壁・天井はLGSのスタッドを詰め打ちして仕上げとしている。格子のように視界を絞り、外界との結界に。
坂本愛/編集者、 ライター
あなぶきアリーナ香川(設計:SANAA)
戸内の島々や讃岐平野の“ おむすび山”とシンクロする白く有機的な大屋根が美しい。その下には大小2つのアリーナと武道施設を収容。海へと通り抜けできる広場で潮風を感じるのがオススメだ。
佐川町立図書館さくと(設計:ハウジング総合コンサルタント+森下大右建築設計事務所+イシバシナガラアーキテクツ)
町民の署名運動を機に、約12年かけて誕生。高知県産材8 本を束ねた大黒柱の下に、天井高の異なるさまざまな居場所が広がる。大黒柱と中庭が作る8の字型の動線に沿って館内を歩くのも楽しい。
EXPO ホール「シャインハット」(基本設計・監修:伊東豊雄建築設計事務所)
金色に輝く大屋根を持つプリミティブな外観に驚き、白いファブリックが壁一面を覆う内観に圧倒される。万博会場における唯一無二の存在感は岡本太郎〈太陽の塔〉に匹敵。これぞ、芸術は爆発だ。
櫻井ちるど/編集者、建築画報
旧上野市庁舎SAKAKURA BASE(改修設計:MARU。architecture)
坂倉準三設計の旧伊賀市庁舎が、ホテルや図書館へと再生。起伏に富む地形や山並み、城下町と調和する低層美を継承しつつ、名建築のポテンシャルを現代に更新。モダニズム建築の持続可能な利活用を体現している。
Tull Weekend Home(設計:三井嶺建築設計事務所)
建築の存在を消し、自然と一体化する極限を追求。急勾配の屋根は雨を凌ぎつつ、視点によって視界から消え去る。常識を疑い建築の根源を問い直すことで、当たり前の中に潜む新しさを発見する喜びを提示している。
大屋根リング
分断が進む世界で、多様な国々が繋がり未来を考える場を「輪」で表現。日本の伝統と最先端技術を融合した世界最大級の木造建築を発信することは、多様性の象徴として極めて意義深い試みである。
白井良邦/編集者、慶應義塾大学SFC 特別招聘教授
移動型キオスクー小さな建築プロジェクト(設計:石上純也、堀部安嗣、中山英之)
『ひろしま国際建築祭』に登場した仮設建築。展示中心の建築祭にあって、建築に興味がない人にも「なんだこれは!」と思わせ、人と建築をつなぐタッチポイントとなった好例。
大屋根リング
「世界はひとつ」を表現するため海外パビリオンをリング内に配置したコンセプト、巨大さ、そしてリング上から見る「目の前に広がる今まで見たことのない風景」。万博を訪れた多くの人の脳裏に焼き付いたはず。
ラビットホール
(コメントは前掲)
菅原由依子/編集者、日経クロステック副編集長/日経アーキテクチュア
大屋根リング
(コメントは前掲)。
広島駅南口ビル
路面電車がすうっと吸い込まれるように2階ホームへ入る。軌道を持ち上げる駅前大橋のダイナミックさに加え、乗降客が行き交うホームを包む開放的なアトリウムを設けるなど画期的な駅ビルだ。


TOYOTA ARENA TOKYO
Bリーグ人気で話題のアリーナ。センタービジョンやリボンビジョン、音響を連携した最新技術、コンコースや観客席の設計など楽しませる工夫が多い。東京湾岸エリアを変える期待の施設といえる。
介川亜紀/編集者
ニシイケバレイ
池袋駅西口から徒歩数分の閑静な街区。オーナー、建築家、デザイナーがタッグを組み複数の既存建築を段階的に改修。住居、店舗等を重層的に配し、地域コミュニティの場として育ててきた。2025年には集合住宅「TELAS」を新築。縦横無尽な構成はそれ自体が街のようであり、街区に溶け込み人と人を繋いでいる。


泊船~旧上野市庁舎~(設計:MARU。architecture)
解体寸前だった建築家・坂倉準三氏設計の旧上野市庁舎が一転、市指定文化財となり、宿泊施設として改修された。当初の設計を活かしつつ採光や温熱環境を見極めて現代に見合う快適な空間を目指している。内装にウッドパネルを用い天童木工の家具を採用する等60 年代当時の雰囲気も再現。日本モダニズム建築存続の旗手となるか。
高木伸哉/編集者、フリックスタジオ代表
Ginza Sony Park
短絡的な事業収益にしばられない、企業による市街地土地利用の新たな道筋をつくった。その結果、都心に立体的なオープンスペースが実現。民間による都市の公共空間づくりをリードする例だ。
ド・ロさまと歩くミュージアム
文化財保存と利活用の事業主体の多くは民間で苦戦する中、エリアまるごとの観光コンテンツとして整備することで経済的な裏付けを図る成功例。さや堂形式だが完全に囲わないデザインが秀逸。
大屋根リング
万博はランドスケープデザインでもあるはずで、それを俯瞰できる視点が存分に提供された例。広域を把握できることで逆に距離感が縮まり、万博を具象化するイメージとして記憶に残るだろう。
津川学/ジャーナリスト、日刊建設通信新聞社
日東工器 おおざそう工場(設計:芦原太郎建築事務所、デザイン監修:隈研吾建築都市設計事務所)
世界的に類を見ない工場の新プロトタイプ。繊細な木の軒先と透明感が「ポエムのある工場」を体現する。地域に開かれ、ものづくりの矜持と温もりが調和する佇まいは、産業建築の新たな地平を拓く傑作である。
大屋根リング
日本の伝統的な木組み技術を世界最大級のスケールで体現。圧倒的な円環が空を切り取り、人々を優しく包み込む。木の香りと光が交差するこの空間は、まさに現代の「杜」と呼ぶにふさわしい、圧巻の公共建築だ。
null²
(コメントは前掲)
富井雄太郎/編集者、millegraph代表
霞ケ浦どうぶつとみんなのいえ
旧水の科学館を大規模改修してつくられた「動物園」。既存の建物を壊すことと、必要なものを新たにつくることがほとんど等しくある。アニマルウェルフェアについても考えさせられる。
横浜美術館 空間構築
横浜美術館(1989年開館)の大規模改修。御影石貼りの空間から抽出した色の什器によって小さな居場所が沢山生み出されている。従前の雰囲気からの変化が絶妙で、敬意と革新性を感じさせる。
北鎌倉にて(設計:立石遼太郎建築設計事務所)
設計者自身の住宅。門型、方行、三廊式など7つの建築的な形式を重ね、作者の意図を超えたものをつくろうとする。過剰な方法で、つくりやすさや合理性から逸脱しているが、不思議と静謐さがある。
長井美暁/編集者、ライター
ド・ロさまと歩くミュージアム 大平作業場跡
明治時代に長崎の外海地区で活躍したド・ロ神父の物語を伝えるフィールドミュージアム。大平作業場跡はその主要施設で、「ド・ロ壁」の遺構を保護・再生。新旧の要素が絶妙な匙加減で共存する。
Ginza Sony Park
“銀座の庭”というソニー創業者の想いを“銀座の公園”へと継承・拡張する建て替えプロジェクトの最終形。都心の一等地に、このように街に開かれた施設が完成したことの意義は大きい。
東京藝術大学大学美術館取手収蔵棟(設計:aat+ヨコミゾマコト建築設計事務所+東京藝術大学施設課)
“魅せる収蔵庫”として、六角鬼丈設計の既存収蔵庫の隣に完成。博物館や美術館が収蔵庫の内部を一般公開するのは世界的な流れ。この建築は機械室をガラス張りで見せているのもポイント。
中村光恵/編集者、リトルメディア
霞ケ浦どうぶつとみんなのいえ
旧施設の解体・増築を建築的に操作し、動物と触れ合いながら人間と自然の関係、未来を考える環境づくりが意図されている。動物園機能だけでなく、教育施設、地域交流、道の駅、地元農業拠点といった役割も担う。
大屋根リング
巨大な木架構を万博全体の会場に円形状に配置することで、木架構が単なるゲートではなく、万博会場の地形そのものとなっている。リングを回遊することで、万博会場全体と周辺環境を俯瞰することができるのは圧巻。
ひろしま国際建築祭
広島県福山市・尾道市の美術館や寺院などを会場に、23組の建築家・クリエイターが出展。建築で未来の街をつくる、こどもの感性を磨く、地域活性化、名建築を未来に残すミッションがさまざまな切り口で展開された。
萩原詩子/編集者、ライター
あなぶきアリーナ香川(設計:SANAA)
海辺にふわりと舞い降りたUFOのようなアリーナ。イベントがなくても出入りでき、中に瀬戸内海を一望する屋内公園、外に双丘を一巡する道がある。滑らかな動線に沿って変化する眺めが楽しい。


鳥取県立美術館(設計:槇総合計画事務所・竹中工務店共同企業体)
南面はほぼガラス張り、内に巨大な吹き抜けを抱く、透明度の高い美術館。開放的な無料ギャラリーや屋外テラスを通って展望テラスに至る構成は、さながら立体公園のよう。ブリロの箱も大活躍。
ド・ロさまと歩くミュージアム 大平作業場跡
潜伏キリシタンの奥里を拓き、骨を埋めた宣教師の、偉業を偲ぶ遺構の「覆屋」。屋根を失い崩れかけた石積み小屋を大切に残して囲み、作業と見学の場に甦らせた。背景にある信仰を想う。
八久保誠子/編集者、LIFULL HOMES PRESS 編集長
大屋根リング
大阪・関西万博で建築がはたす意義を見事に示した「大屋根リング」。木造大規模建築の可能性と循環型社会を未来へ示した象徴的建築となり、万博のアイコンとして記憶と記録に残るものとなった。
FK Kindergarten and Nursery(設計:日比野設計)
坂のまち長崎市にある園舎。園全体の屋内外が連続する空間、地形による立体や回遊をうまく採り入れ、子どもたちは身体的な成長とともに創造的な遊びを発見することができる設計になっている。
上原坂道のマンション(設計:ULTRA STUDIO)
渋谷区上原の賃貸住宅。上斜面地形を活かした多層的空間は、段差によってレベル差をつけ、一つの空間で複数の居場所や機能を持てるよう設計されている。新築を感じさせないヴィンテージ感も特徴。
平田悠/編集者、商店建築
SKAC(設計:DAIKEI MILLS)
主にアートブックやレコードの倉庫とすることで、躯体現しや単管に表現を超えた合理性を宿している。アートや家具なども空間の構成要素として扱い、粗野な雰囲気と上質さを共存させている。
ニュウマン高輪(設計:sinato PRINT AND BUILD)
高密度なデザインで共用部とテナント部の印象を近付けつつ、歩くだけで楽しい空間にしている。滞留を許容する公共性を備えた設計で、商業施設ながら無目的/多目的を許容する空間になっている。


長崎スタジアムシティ(設計:竹中工務店 環境デザイン研究所・安井建築設計事務所共同企業体 戸田建設)
スタジアムを中心に、商業施設やホテルなどが並ぶ。ホテルでは、スタジアムがよく見える中間階にスイートを置くなど、ホテルの定石を更新している。ハレもケも受け入れる、許容度の高い空間。
平塚桂/編集者、ぽむ企画
null²
現実には難しいと思われた「建築に対する情報技術の実装」が鮮やかに実現された。メカニックと建築を連動し万博期間中、随時更新する設計施工のあり方も革新的だった。花博への移設も楽しみ。
KPD(設計:LUNCH! ARCHITECTS)
50㎡弱の平屋の長屋を改修した設計者自邸。人海戦術で自主施工され、伝統工法と工業製品が即興的に混ざり合う住宅。地面を掘って既存容積を広げる氷山的な計画で驚きの広がりを生んでいる。
泉屋博古館(設計:日建設計)
昨年見た美術館・博物館リニューアルで最もグッと来たプロジェクト。エレベーターの移設や展示ケースの更新といった設備を軸とする控えめな改修で、1970年築の「青銅器館」の原設計が蘇った。
宮沢洋/画文家、BUNGA NET編集長
ラビットホール
改修で生まれた現代美術館。難しいことを知らずとも、とにかくカッコいい。難しいことを読み解けば、なおカッコいい。ポストモダンをポストモダン的多義性で上書きして見せた知的コンバージョン。
高橋酒造 田野蒸溜所・交流施設(設計:yHa architects)
「白岳しろ」で知られる高橋酒造の新事業となるウイスキー蒸溜所。元は1988 年竣工の木造校舎と鉄骨造体育館。構造に一切触れずに、内外に見学ルートを新設。「生かしながら変える」の新手法。
ニシイケバレイ
令和版ヒルサイドテラス。各施設の境界がぼやっとしており、全体の範囲もよくわからない。強い図像となる表現は少なく、収まりの丁寧さと外構で居心地の良さを創出。都市再生の希望の星。
前田智成/編集者
東海国立大学機構 Common Nexus
広場の芝生がめくれ上がったような大屋根が、ランドスケープと建築の境界を鮮やかに消し去る。柔らかな光が降り注ぎ、奥行きと高さが複雑に交錯する半地下空間にはつい足を踏み入れたくなる。


クロサワビル/ ティファニー銀座(設計:AS(ファサードデザイン)、大成建設)
すべて一点物の低層部の三次元曲面ガラス、2色のドットを厳密に重ねたガラス印刷など、技術の粋を集めて実現した「藤棚のように揺らぐガラスの衣」。
prewood(設計:VUILD)
万博でも注目されたサーキュラー建築を都市へ。工場でモジュール化した製材を現場でビスのみで連結することで、解体・再利用を前提としたDfD(Design for Disassembly)を都市木造で実践。
森清/編集者、BUNGA NETプロデューサー
大屋根リング
多様なものを大きなリングで緩やかにつなぐ。しかも伝統的な貫接合による大型木造を用いて。平面計画や動線、日よけ機能など、あらゆるレベルでのニーズや課題を解決した最強の建築。
GROUNDING TREE(設計:芦澤竜一建築設計事務所)
樹木の仕組みを建築化したもので、大阪市立長居植物園内に立つ。植物の葉脈から考えられた9枚の楕円平面のスラブによる構造が圧巻。鉄という人工物ながら、生物のように見えてくる。


あなぶきアリーナ香川(設計:SANAA)
風景に溶け込む絶妙なカーブとライズを持つ大小2つのアリーナ。それにも増して内部に立った際の外部との一体感は心地いい。日常的に公開された交流エリアと相まって公園のような場に。
吉田和弘/編集者、草思社
クロサワビル/ ティファニー銀座(設計:AS(ファサードデザイン)、大成建設)
溶けた鉱物のようなファサードが目を引くが、極めて現代的なそれと裏腹にファサードは三層構成、オーダーを翻訳したような柱と、古典建築が隙間から顔をのぞかせる。実に怖ろしい建築。


GROUNDING TREE(設計:芦澤竜一建築設計事務所)
建築が植物のために設計されたらどうなるだろう。異様なスラブの構成は植物を模倣して導かれており、その力強さは建築が持つべき理(ことわり)が人間以外にもあることを教えてくれる。
グレッグ外語専門学校(設計:MET Team Architects)
電車音を遮る壁は花弁に、セットバックするフロアはリズミカルな群れとなる。建築的な操作・解決策をたちまちシューリアリズム絵画の構成に変換してしまう北川原温氏の、事務所改編後の作。
ロンロ・ボナペティ/建築ライター、編集者
霞ケ浦どうぶつとみんなのいえ
廃墟化した科学館を改修し遺跡へと変容させた動物園。遺跡を占拠するかのように棲み付く動物たちの合間に挿入された曲線状の回廊が、自然と人為とを相対化する装置となる。
新横浜食料品センター(設計:ウミネコアーキ)
店主の顔が見える地域の食の拠点。設計者自らが企画・建築設計・不動産・運営を手掛けた。メガフレームの人工地盤を依り代に小径部材で構成された店舗と住居が集まり、その隙間が路地空間を形成する。
神戸市立垂水図書館(設計:フジワラボ・タト・トミト設計共同体)
1階に駅前ロータリーを構える、地域のリビング。全周が正面のファサードに設けられた性格の異なる複数のテラスからは館内の活動が滲み出し、書棚への直射日光を遮るバッファとしても機能する。
和田菜穂子/建築史家、東京家政大学准教授
大屋根リング
(コメントは前掲)
全日本海員組合本部会館(設計:大高正人、改修:野沢正建築工房)
六本木のど真ん中によくぞ残してくれた!と大拍手。改修でサンクンガーデンを復活させ、屋上にはデッキも新設。子どもや一般の人が気軽に立ち寄れる展示室もオープンした。
Satologue(設計:堀部安嗣)
奥多摩は非日常そのものだが、宿の内部には住まいのようなやすらぎがある。大自然とサウナが運んでくる北欧の空気——それはアアルトをリスペクトする堀部さんの感性の表れだろう。
前回までの結果はこちら。→ https://bunganet.tokyo/award/
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