遅ればせながら、大阪駅前に誕生した「グラングリーン大阪(GRAND GREEN OSAKA)」を見てきた。長く「うめきた2期」と呼ばれてきた貨物駅跡地開発だ。
今年9月6日に全体の4割ほどが先行まちびらきを迎えて以来、「すご過ぎる」「大阪らしくない」など大きな反響を呼んでいる。話題に出遅れた言い訳になるが、こういうものは少し落ち着いてから見た方がいいと思い、2か月ほどたったところで日建設計の担当者2人に案内してもらった。
設計の工夫を紹介する前に、まずは全体の説明を。先行まちびらきの際に事業者が出したプレスリリースから引用する(太字部)。
三菱地所株式会社を代表企業とするグラングリーン大阪開発事業者JV9 社にて開発を進める「グラングリーン大阪(GRAND GREEN OSAKA)」が、本日9月6日(金)に先行まちびらきを迎えました。(中略)
「グラングリーン大阪」は、オフィス、ホテル、中核機能施設、商業施設、都市公園、住宅を有する複合施設です。計画コンセプトとして「“Osaka MIDORI LIFE”の創造」~「みどり」と「イノベーション」の融合~を据え、「まちでの出会いが、様々な価値を創造し、持続的にみんなと社会全体を良くしていくこと」を目指し、まちづくりを推進してきました。
本日(9月)6日(金)より、事業者JVで組成する「一般社団法人うめきたMMO」がうめきた公園指定管理者として今後50年にわたるパークマネジメントとエリアマネジメントを開始しました。多彩な参加型プログラムや非日常体験を味わうシーズナルイベント等を通じて、訪れる人に自らの公園として愛着や誇りを感じていただける取り組みを展開する予定です。
また、中核機能施設「JAM BASE」も本日オープンしました。企業、大学・研究機関、スタートアップ、ベンチャーキャピタルなど多様なプレイヤーが集まることで、ともに新たなアイデアを形にし、社会実装や事業化への挑戦を行うことを支援してまいります。
■開業スケジュール
「グラングリーン大阪」は、オフィス、ホテル、中核機能施設、商業施設、都市公園、住宅を有する複合施設です。先行まちびらきでは、うめきた公園の一部(サウスパークの全面・ノースパークの一部)、北館のホテル「キャノピーbyヒルトン大阪梅田」、商業施設「ショップ&レストラン」、中核機能施設「JAM BASE」がオープンしました。南館は2025年3月21日、うめきた公園後行工区(ノースパークの一部)は2027年春頃に開業予定です。
■グラングリーン大阪 計画諸元
プロジェクト名称:うめきた2期地区開発事業「グラングリーン大阪」
計画地:大阪駅北大深西地区 土地区画整理事業区域内
地区面積:約91,150平方メートル(都市公園を含む)
<民地>
<都市公園>
プレスリリースに補足すると、事業者JV9社は三菱地所、大阪ガス都市開発、オリックス不動産、関電不動産開発、積水ハウス、竹中工務店、阪急電鉄、三菱地所レジデンス、うめきた開発特定目的会社の9社だ。
それと、設計者欄の「ランドスケープ」にあるGGNという会社。このプロジェクトのランドスケープデザインは、アメリカ・シアトルに拠点を置くランドスケープ・デザイン事務所GGNが「デザインリード」の役割を果たした。主な作品に、シカゴのミレニアムパーク内「ルリー・ガーデン」、シアトルの「シアトルシティホールプラザ」などがある。主宰者のキャサリン・グスタフソン氏(1951年生まれ)は、2014年に大林賞を受賞している(詳細はこちら)。
グラングリーン大阪の優れた点は?
2時間ほどかけて案内してもらった結論を言うと、東京にはこれに勝る大規模再開発は今のところない。あくまで個人の感想であるが、東京は完敗である。自分がなぜそう思ったかというと、①緑地の面積、②境界の連続性、③人がくつろぎたくなる空間性の3点からだ。
まず①の「緑地の面積」については、開発エリアの半分以上が緑地だ(約9万1150㎡のうちの約4万5000㎡)。実は、説明を受けるまで誤解していたのだが、この緑地は大阪市の都市公園なのだ(正確に言うと「広域避難地の機能を有する都市公園」)。筆者はてっきり事業者が公開空地として緑化したのか、あるいは行政に土地を貸与しているのだと思っていた。都市公園ということは土地代もベースの整備費も税金であるわけで、グレードアップ部分について民間の知恵と資金を借りつつ、この公園を整備することを決めた大阪府・市の判断がすごい。
②の「境界の連続性」は、「どこまでが都市公園でどこからが民間なのか」が全くわからない施設構成やデザインであることが画期的。これは設計過程で官民の価値観共有に相当努力しないと実現できそうにない。
③の「人がくつろぎたくなる空間性」にはいくつかの要因があるが、一番大きいのは「最大3mの盛り土」だろう。
敷地内に最大3mの盛り土を行い、散策路に視覚的な変化をつけた。そしてその高低差を、噴水を囲む劇場風の斜面に生かした。初期段階では様々な盛土の形状や高さが検討されたそうだが、結果的にはこの大げさでない高さ(緩さ?)が奏功しているように見える。
日建設計では、こうして生まれた緑地の価値を可視化するために「みどりのものさし」という評価ツールを開発した。詳細はこちら。
残りの工区(ノースパークの一部)は2027年春頃に開業する。「ランドスケープはこれから工事が進むノースパークの方がダイナミックで、さらに面白いものになる」と日建設計の小松氏は言う。うーん、東京人はますます負けた気持ちになる…。
このプロジェクトが「大阪でたまたま実現した例」にならないためにはどうしたらいいのか。機会を改めて原稿を書いてみたい。(宮沢洋)