旧横浜市庁舎「OMO7横浜」内覧会ルポ、熱烈な村野藤吾ファンが見た6つの萌えポイント

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 旧横浜市庁舎(設計:村野藤吾、1959年竣工)の一部を活用した星野リゾートの都市型ホテル「OMO7横浜 by 星野リゾート」が4月21日に開業する。JR関内駅前の複合施設「BASEGATE横浜関内」の一部だ。

関内駅側から見る。右が「OMO7横浜 by 星野リゾート」。「BASEGATE横浜関内」のグランドオープンは2026年3月19日(写真:宮沢洋、以下も)
北東側から見る

 3月12日に星野リゾート主催による内覧会が行われ、インテリア設計を担当した成瀬・猪熊建築設計事務所の成瀬友梨氏と猪熊純氏、改修の設計を担当した竹中工務店設計部の前田祐哉氏が案内してくれた。

左から成瀬・猪熊建築設計事務所の猪熊純氏と成瀬友梨氏、竹中工務店東京本店設計部設計第1部門設計1グループの前田祐哉チーフアーキテクト

 ものすごい人数のメディアが来ていたので、BUNGANETは速さとニッチさ(他のメディアが書かなそうなこと)で勝負する。体系的に理解したい人は、大メディアの深掘りレポ―トが出るのをお待ちいただきたい。

(1)村野の旧市庁舎は二度目の大改修

 旧横浜市庁舎は、市政100周年記念事業の一環として、指名設計競技で5者の中から選ばれた村野藤吾により設計され、1959(昭和34)年9月に竣工した。庁舎は高層8階建ての行政棟と、4階建ての議会棟、および両者をつなぐ2階建ての市民広場で構成されていた。設計競技では、両者をピロティではなく、内部空間を持つ「市民広場」でつないだことが高く評価されたという。(このうんちくは文化庁の資料を参考にしました→https://www.bunka.go.jp/kindai/research/kanagawa/009/index.html

 今回、議会棟や市民広場部分は解体されて超高層などが建ち、8階建ての行政棟がホテルに転用された。 

 コンクリート打ち放しの柱・梁を露出し、その内側を暗褐色のタイル貼りとする手法は、村野が設計した早稲田大学文学部校舎とそっくり(31号館のみ現存)。「世界平和記念聖堂」(1953年)にも似ている。

旧行政棟(現ホテル)の外周柱では、見付寸法は変えずに、上にいくに従いゴシック建築のバットレスのように段階的に見込み寸法を細くする手法が用いられている

 ホテルとなった旧行政棟だが、外にも中にも耐震補強らしきブレースが見当たらない。説明を聞いて思い出したのだが、市庁舎時代の2009年の改修工事で免震化していたのだ(このときの改修設計は東畑建築事務所、施工は戸田建設/詳細はこちら)。なので、今回の工事では、ホテルとして使う上での補強で済んだそう。ただし、免震対応の設備配管などのやり替えはかなり大変だったとのこと。

(2)旧市民広間大階段のデザインは継承・再構築

 この大階段↓を見て、「ああ、ここに階段あったなあ」と思ったのだが、位置が変わっていた(そもそも大階段のあった市民広間はもうない)。

 保存した行政庁舎(現ホテル)の1階北東側に新たな吹き抜けをつくり、1階と2階をつなぐ大階段として再構築した。村野藤吾氏の特徴的デザインである滑らかな曲線の手すりの一部も再活用。

 なお、プレスリリースでは市民広場ではなく、「市民広間」と書かれているので、ここからはそれでいく。

(3)村野階段のすごさは「ケ」の空間にあり

 再構築された大階段はもちろん絵になるのだが、村野ファンがもっと萌えるのは、客室階をつなぐ日常用階段の美しさ。「ハレ」の階段だけでなく、「ケ」の階段にもこだわるのが村野の美学。

(4)辻晉堂のタイル画の一部を生け捕り

 「OMOベーカリー」の壁面には、村野藤吾と交流のあった彫刻家・辻晉堂による泰山タイルレリーフ「海・波・船」を保存。これはかつて旧市長室・旧市長応接室エントランスを彩っていたもの。

 こちら↓は、市民広間にあった辻晉堂による泰山タイルレリーフの一部を活用し、新たなタイルを加えて作成したもの。ちなみに、早稲田大学文学部キャンパスには辻晉堂の作品がたくさんあった。

(5)インテリア設計のテーマは「接木(つぎき)」

 インテリア設計を担当した成瀬・猪熊建築設計事務所は、事業コンペの後で星野リゾートから声を掛けられたという。今回、村野の元の空間がドーンと残っているわけではない。元が庁舎なので、基準階はいたってシンプル。そんな中で、残された部分で村野色を出すのはかなり大変だっただろう。

 内覧会の冒頭で2人は、「接木」という言葉で改修のコンセプトを説明していた。

 なるほど、真似ではなく、“近いデザイン”を足す。それによって新たな価値を生む。というような意図か。そういう意味で個人的に感心したのは、この間接照明↓。村野藤吾といわれたら信じそう。

 このカーテン↓は安東陽子デザインによるものだが、これも村野がやりそうな柄。技術的にも村野が好きそう。

模様は辻晉堂のタイル画をモチーフにした。出版技術で言うところの「箔押し」で模様が描かれており、見る角度で色が変わる

(6)展望テラスから見える村野鉄塔

 屋上階のテラス(宿泊者のみ利用可)から横浜スタジアムが見えることに皆さん大喜び。

 そんななかで、筆者は駅側に村野鉄塔が残っていることを発見し、狂喜!

塔は地上からも見える。大阪の輸出繊維会館にもこれに似た鉄塔がある

 なお、ホテルの本丸である客室は、20〜73㎡の9種類で276室設。うち、愛犬と泊まれる部屋が32室もある。公式サイトで空室検索してみたら、1人でも泊まれるし、出張でも泊まれそうなお値段だった。(こちら

手ごろなダブルルーム。客室のテーマカラーである赤・青・緑は旧庁舎で使われていた色から取った
かたりばルーム
客室の窓回りは二重窓で内側が木製建具
ホテル入り口

■建築概要(2026年3月12日付けのプレスリリースより)
施設名 :OMO7横浜(おも)by 星野リゾート
所在地 :神奈川県横浜市中区港町1丁目1番1
アクセス:JR根岸線「関内」駅徒歩1分、横浜市営地下鉄ブルーライン「関内」駅徒歩1分、横浜高速鉄道みなとみらい線「日本大通り」駅徒歩7分
客室数 :276室

客室料金:1泊1室36,000円~(2名利用時、食事別、税込)
施設  :客室、OMOベース(フロント、ライブラリーラウンジ/ミーティングルームOMOダイニング、OMOベーカリー、ご近所マップ、ショップ、ハマイズムコレクション、OMOドッグガーデン)、ロッカー、ワークルーム、ランドリー
事業者 :竹中工務店、東急、京浜急行電鉄
設計  :当初設計…村野、森建築事務所

     改修基本設計・実施設計…竹中工務店
     ホテルFOH(*1)部 インテリア基本設計・インテリアデザイン監修…成瀬・猪熊建築設計事務所
     ホテルFOH部 造作家具実施設計…アイリスオーヤマ・I.P.Mプロジェクトマネジメント
     ホテルサインデザイン…UMA / design farm
施工  :当初施工…免震改修工事:戸田組(現・戸田建設)

     改修施工…竹中工務店
開業日 :2026年4月21日
URL  :https://hoshinoresorts.com/ja/hotels/omo7yokohama/
*1:Front of House ホテルの延床面積のなかで、利用客に使用される面積部分。

 ところで、以前の横浜市庁舎を思い出せない方もいらっしゃるだろう。見出しで「熱烈な村野藤吾ファン」と書きながら、筆者もその1人である。そういう方は、2020年12月に開催された“最終見学会”のリポートを本サイトで掲載しているので、こちら↓をご覧ください。(宮沢洋)

「BASEGATE横浜関内」全体の記事を書く人はすごく大変そう。頑張ってください! 全体像はこちら↓