垂水駅前の新たなランドマークとして神戸市が建設した「神戸市立垂水図書館」が9月30日に開館した。出張の途中に下車して見てきた。

場所は再整備が進む垂水駅前東広場(神戸市垂水区日向1-4-2)。周囲のどの方向からも全景が見えるロケーションなので、裏がつくれない。ぐるっとまわっても、どこにも見苦しい設備機械類が見えないことにまず感心する。


地下1階・地上4階建て。1階はまるまるピロティで、ロータリーが建物の下にくい込んでいる。図書館は2階より上。2階に一般書、3階に児童書がある。4階がセミナー室と屋上庭園だ。地下1階には駐輪場がある。


設計は、フジワラボ+タト+トミトアーキテクチャーの3者JV。主宰者の個人名で言うと、藤原徹平、島田陽、冨永美保の各氏だ。2020年の公募型プロポーザルで選ばれた。
以下は、フジワラボのサイトからの引用(太字部)。
兵庫県・神戸市垂水にて設計している図書館の新築プロジェクト。図書館だけでなく、1層目には交通ロータリー、地下には自転車や原付の駐輪場を整備する予定で、駅前の交通空間の役割もリデザインも担う。屋上には海を臨む公園をつくり、垂水のまちの結節点となるような図書館を計画する。地域のイベントが多様に行われる駅前広場との一体利用も意識しつつ、本の場所であり、人の場所でもあるような滞在型の新時代にふさわしい図書館を目指して実施設計中である。設計は、フジワラボ+タト+トミトアーキテクチャーの3者で設計共同体を結成し進めている。


確かに、屋上に上ると、南側に海が見える。それよりもインパクトがあるのは行きかう列車。JRと山陽電気鉄道の駅が目の前なのだ。オープンして間もないこともあって、屋上に来る人はみな、「うわあ!」と声を上げていた。本とは関係なく、ここでゆっくりするために来る人もいそうだ。これからの図書館はそういう場でいいのかもしれない。
筆者は上の藤原氏の説明文しか読んでいなかったので、「この柱↓、なんだか不思議なデザインだな」と思ってしまった。

ドリス式の柱頭をアレンジしたポストモダン・リバイバル?
そうではなかった(そういう気持ちも少しはあったかもしれないが)。1階の柱の上(2階のスラブ下)が免震層なのである。こんなに外から見えやすい柱頭免震って珍しい。

そうだとわかると、建築好きはこの建築を2度楽しめる。免震側(上部)と非免震側(下部)の分かれ目がどこかを探したくなるのだ。



「分かれ目を探して!」というメッセージかと思うほど、どこもスッキリとデザインされている。

図書館内も、変化に富んでいて楽しい空間だったが、撮影禁止だったので、見たい方は神戸市公式noteを。
なお、「神戸建築祭」(昨年までの「神戸モダン建築祭」が名称変更)のイベントの1つとして、タトアーキテクツの島田陽氏と、フジワラボの藤原徹平氏がこの建築を案内するツアーが11月30日(日)に行われる。詳細はこちら。(宮沢洋)
