大阪・御堂筋に高さ150mの「淀屋橋ステーションワン」が一部開業、地下駅から人を呼び込む街のようなオフィスビルを先行ルポ

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 オフィスビルが立ち並ぶ大阪・御堂筋の玄関口に2025年5月末、「淀屋橋ステーションワン」が竣工。6月23日からオフィスフロアの入居を開始するとともに、店舗の一部がオープンした。約150mという建物高さはエリアでは最高となる。ビルの直下には、京阪電車とOsaka Metro御堂筋線の淀屋橋駅が位置している。

北側を流れる土佐堀川越しに見た全景。梅田や大阪城の方角と正対する面をつくって場所性を示す(写真:以下特記以外は森清)
御堂筋越しに西側低層部のファサードを見る。アウトフレームの見付け寸法は一般部が700mmで、低層部は750mm
断面図の中に街とのつながりを表現したパースを挿入したイラスト(イラスト:濵﨑菫)

 事業主は中央日本土地建物と京阪ホールディングス、みずほ銀行だ。並んで立っていたともに高さ約31mの「日土地淀屋橋ビル」と「京阪御堂筋ビル」を共同で建て替えた。設計・施工は竹中工務店が担当した。

 7月半ばに、設計者である竹中工務店大阪本店設計部の米津正臣氏(設計第5部長)と岩崎宏氏(設計第1部門設計3グループ長)に現地を案内いただく機会を得たので、計画のポイントと空間の見どころをざっとお伝えしよう。低層部や高層部の商業テナントなどは、今年の秋ごろにかけて順次オープンしていく予定だ。ビル全体が動き始めるのは、まだ先になる。

3層の都市貢献スペースでオフィスを挟む“ビッグマック”のような構成

地下1階の京阪電車のコンコースから続く地下接続(左手)
地下接続から入ってすぐの「淀屋橋広場」。内部ながら外観が反転したような壁面が続く
敷地南側の内北浜通りから見る。1階には路面店のベーカリーカフェがオープンしている

 大きな特徴の1つが、都市貢献として地下1階に、長さ45mに及ぶ地下接続を設けていることだ。淀屋橋駅のコンコースから地下接続を通ってビルに入ると3層吹き抜けの「淀屋橋広場」が迎える。「淀屋橋駅の乗降客は1日当たり約30万人なのに、ただの乗り換え駅になっており、人が街に出てこない。そこで地下接続から人をぐっと引き入れ、同時にその人たちを街に出す。淀屋橋の発展に寄与するような都市プロジェクトができないか、事業主と考えた」。こう米津氏は説明する。

 そのためにポイントとなったのがオフィスロビーを3階に持ち上げること。エレベーターピットが1階からほぼなくなることで、1階を取り囲むように路面店を配置することが可能になり、御堂筋などからビルにアクセスしやすくなる。御堂筋に面して1階の中ほどを抜ける通路は、かつて2つのビルの間にあった小路を思わせる。内部空間は透明ガラスで仕切られており、御堂筋の緑やにぎわいとつながる場所を意図した。

建物構成のダイヤグラム。低層・中層・高層の各都市貢献スペースがオフィスフロアを挟み込む(資料:竹中工務店)
1階の北西コーナーに位置するビルのエントランス。ビル内部にも御堂筋の石張りの舗装が連続する
3階オフィスロビーへ続くエスカレーター。1階エントランスを入ってすぐの場所にある
3階のオフィスロビー。ワーク&ライフラウンジと呼ばれる共用空間(写真:下側は古川泰造)
オフィスロビーに設けられた花壇。全体のインテリアデザインは竹中工務店とTERUHIRO YANAGIHARA STUDIOが担当。緑などのランドスケープデザインはSOLSOが手掛けた
オフィスロビーの南側に位置する、まちとつながるワークラウンジ(イベントスペース)。モニターには各仕上げ材の製作プロセスをまとめた映像を流している。下側はイベント時の様子(写真:下側は米津正臣)
設計者である竹中工務店大阪本店設計部の米津正臣氏(設計第5部長、左手)と岩崎宏氏(設計第1部門設計3グループ長)。両氏は計画スタート時から竣工まで担当した

 デザインで印象的なのが、地下1階の淀屋橋広場の床、3階のオフィスロビーの床や壁など、要所に用いられた赤褐色の仕上げ材だ。「淀屋橋には中之島公会堂(大阪中央公会堂)をはじめ歴史的建造物が多く残されている。そうした建物で使われている素材、材料、さらには職人の技術も引き受けながら、街とつながった空間を、インテリアデザインで協働した柳原照弘氏と一緒に考えた。壁のタイルは、施工で敷地を掘削した際の土を混ぜて焼いている」(米津氏)

 周辺の歴史を取り込んだ仕上げは、低層部に限らない。実は中層部、高層部にも都市貢献スペースを配しており、これによって容積率は1600%に緩和され、地上31階、高さ約150mというオフィスビルが実現できた。「低中高と3つの領域で都市貢献スペースをつくることで、セキュリティーにより、街と分断されてしまうことの多いオフィスビルに、街の人々を引き込み、街にあふれた素材や材料と連続させる。そうすることで、土地とつながり、街とつながるオフィスを真の意味で実現できないかというのが、事業主と我々にとっての大きなチャレンジだった」と米津氏は振り返る。

 このように都市貢献スペースを低中高の3層に設けることで、その間にオフィスフロアが挟まれた、まるで“ビッグマック”のようなオフィスビルが生まれた。30階の展望テラス、ビル入居者が使える10階の共有のワーカーラウンジなど、オフィスワーカーにとってサードプレイスとなるような場所も見いだせる。仕事と生活が融合した街につながる新たなタイプのオフィスビルだと言える。

高さ50mの軒ライン。ここから上の中高層部は4mセットバックしている
10階のセットバック部を見る。9階部分の柱は、道路に向かって斜めに、かつ二股に分かれる
オフィス入居者も利用できる10階のワーカーラウンジ。10~11階には中央日本土地建物が運営する「SENQ(センク)淀屋橋」が入る。小型の貸室やコワーキングスペースからなる会員制のオープンイノベーションオフィスだ
10階の大会議室。3分割して使える
30階の展望ホールと一体になったギャラリー。文化発信の場となる
30階展望ホールの屋外テラス。右奥に見える交流サロンと一体で市民やビル利用者向けのイベントを企画する予定。30階は「淀屋橋スカイテラス」として9月1日に開業する

設備シャフトの中にワーカーのためのテラスを配置

 建物の外形や構造フレームについても触れておこう。建物高さなどは、大阪市による2014年の「御堂筋本町北地区地区計画」で新たに示された。建物のデザインなどは「御堂筋沿道建築物のデザイン誘導等に関する要綱」と「御堂筋デザインガイドライン」でうたっている。

 以前は、高さが60m以下(御堂筋に面する外壁高さは50m)に制限されていたが、御堂筋沿いで高さが50mを超えた部分の壁面後退距離に応じて、高さ100m超も建設可能になった。この敷地は通常、容積率1000%で、50m超の壁面を4m後退すれば高さ112mまで建てられる。さらに都市再生特区の活用により、容積率が600%緩和され、高さ約150mが建設できた。

 一方、御堂筋デザインガイドラインでは、高さ50mの軒線を強調することを求め、壁面は窓と壁で構成すること、壁面の素材は重厚感があるものを用いることを基本としている。ガラスカーテンウオールで覆ったデザインは採用できない。

 構造フレームはこうしたガイドラインに従うのに加え、空間の効率、施工コストなどを踏まえて決めたものだ。最大の特徴は、見付け寸法500mmの鉄骨柱を3200mmピッチで配置してアウトフレームとしていることだ。10階から上は3スパンごとに軸力を伝える柱とし、その他の間柱は耐震要素とする。9階では二股の斜め柱で4mのセットバック分をせり出し、2本の柱に分配する形で低層階を支える。制振ブレースやダンパーはコアに配している。線材を編んだような繊細な外観が生まれた。

架構のイメージ。左が構造架構モデルで、右がセットバック部の軸力伝達のイメージ。9階の二股の斜め柱が低層階の柱に軸力を分配し、それぞれの柱に均等に軸力が入るように工夫されている(資料:竹中工務店)
基準階オフィス
基準階オフィスの南側から御堂筋を見下ろす
エコボイドの中に設けられた半屋外のリフレッシュスペース(テラス)。上部は屋外に開放されている。隣接するエレベーターシャフトはシースルーで、エレベーターからテラスの緑が望める
エコボイドを見上げる(写真:古川泰造)

 内部のオフィスは天井高2900mmの無柱空間だ。ガラス開口部は高さ3200mmと足元までオープンで、御堂筋などの景色を取り込む。柱の間に組み込まれたユニットアルミカーテンウオールの上端には、自動換気用の外気取り入れ口があり、中間のマリオンには外気を手動で導入する換気装置を組み込む。

 窓まわりの自然換気口と連動する形で、低層用のエレベーターシャフト上部を利用した重力換気を行い、自然エネルギーにより、オフィスフロアの空気を1時間で2回入れ替えるよう計画されている。エコボイドと呼び、最上部が開放された吹き抜け内にオフィスワーカーが利用できる半屋外のリフレッシュスペース(テラス)を設けている。「通常は設備シャフトになるスペースをワーカーの居場所として両立させた。緑があり、景色や天候を実感できるテラス空間が、シースルーエレベーターの上下動線と絡んでいるのがポイントだ。超高層オフィスにあって豊かさにつながる」と設計者の岩崎氏は話す。

 こうした環境への配慮などによって、エネルギー負荷を通常の6割に抑えた。24年には建築物省エネルギー性能表示制度(BELS)の5つ星、ZEB Oriented(ネット・ゼロ・エネルギー・ビル・オリエンテッド)認証(オフィス用途)などを取得している。環境性能の高さも大きな特徴だ。

南西から見上げた夜景。都市貢献スペースとなる低層・中層・高層のフレームをライトアップしている。照明デザインは岡安泉照明設計事務所が担当した
御堂筋の北側から見通す。右手のビルが「淀屋橋西地区市街地再開発事業(仮称)」で、淀屋橋ステーションワンとともにゲートタワーを形成する

 事業主と設計者は、キタやミナミの2大エリアに対して、OBP(大阪ビジネスパーク)があるエリアをヒガシ、大阪・関西万博の会場エリアをニシ、淀屋橋周辺をナカと呼び、大阪を活性化するには、ナカがカギを握るとみる。このプロジェクトはそんな思いで実現されたものだ。25年12月には御堂筋を挟んだ西側に、大和ハウス工業などによる「淀屋橋西地区市街地再開発事業(仮称)」が竣工する。ゲートタワーを形成する両者の相乗効果に期待したい。(森清)