
こう見えても日本建築学会の会員である。目的は三田の学会図書館を使いたいためなのだが、毎月郵送されてくる伝統の『建築雑誌』(明治20年創刊!!)をパラパラ眺めている。JAF(日本自動車連盟)の会報もそうなのだが、定期的に紙の雑誌が送られてきて、それが楽しいからなんとなく会員を継続し続けているという人はけっこう多いと思う。建築学会ではどうやら『建築雑誌』の完全デジタル化へと向かっているようで、たぶんそうなったら筆者(宮沢)は見ないと思う。頻度は隔月でも季刊でもいいから、紙の雑誌をなくさないでほしい(デジタル化を進めている方、すみません)。
といっても、毎号それほど熱心に読んでいるわけでなく、「ふーん、専門家はいまこんなことを考えているのか」と頭の隅に置く程度だ。ところが、昨日、事務所に届いた『建築雑誌2026年2月号』は表紙を開くなり、「表2」(表紙をめくった最初のページ)の図版に目が釘付けになった。


左は『建築雑誌2026年2月号』の表紙、右は同号表二「建築の寿命と延命処置」(作図=小林恵吾、山本夏希(早大M2小林研究室))。表紙は慣例上そのまま載せてよいだろうとして、図版は著作権があるので、拡大しても詳細がわからない程度の画素数に落とした。
この図、素晴らしい。調べているテーマも、見せ方も、とても雑誌的。元建築専門誌編集長として、この図に何か「賞」を出したいくらいだ。
日本建築学会やJIAによる保存要望書が出されていた建物と、DOCOMOMO Japanによって選定されていた建物で、過去25年間に解体に至った建物の寿命を相対的に示している。X軸が竣工年、Y軸が解体年。
実は筆者も20年くらい前、前職の日経アーキテクチュア時代にほとんど同じようなことを調べたことがあるが、「竣工年、解体年で散布図にする」というのは思いつかなかった。こうすると、平均寿命(図中の斜めの線)より短命か(右側)、長命か(左側)がすくわかる(あくまで壊された建物の中でではあるが)。
Y軸が解体年なので、下の方を見ると、最近壊されたものがわかる。
そこで、再び小さな文字の羅列に目が釘付けになった。
「豊雲記念館」
ご存じだろうか。清家(せいけ)清の傑作だ。神戸市の御影にある生け花の「小笠原流」の施設で、筆者は『建築巡礼』がスタートして1年後の2006年1月に取材した。そのときは「小原流家元会館・豊雲記念館」として取り上げている。








今の若い人はもしかしたら清家清(1918~ 2005年)を知らないのかもしれない。ざっくり説明すると、東京工業大学(現・東京科学大学)で篠原一男(1925~2006年)や林昌二(1928~2011年)を教えた人だ。教育者としてだけでなく、建築家として現在の建築界に与えた影響はとてつもなく、藤森照信氏のこのインタビュー記事(藤森式解説02:バウハウスにこだわり続けた清家清、バウハウスに揺れる丹下健三)が参考になる。
『建築雑誌』に載っている図を見ると、解体されたのは2024年頃か。ネットで調べてみると、2024年の暮れに解体工事が行われたようである(こちらの記事など)。
関西方面では話題になったのかもしれないが、東京でそれなりにこうした話題に関心を持っているはずの筆者は全く知らなかった。
筆者は有名な現代建築をすべて再生活用すべしとは思っていない。でも、清家清の代表作の1つが、人知れず壊されていく社会には「まだまだだ」と思わざるを得ない。
「みんなの建築大賞」を「一般投票」に預けた意図
ここまではとても長い前振りである。
現在、第3回となる「みんなの建築大賞2026」の投票が実施中だ。おかげさまで参加者は回を追うごとに増えている。
この賞は、推薦委員会がノミネートした10件の建築のなかで、「X」「Instagram」「Googleフォーム」上で最も多い票(3メディアの合計)を獲得したものに「大賞」を授与する。1年目は「X」だけだったが、そのときから結果を「一般投票に預ける」やり方だ。
これに至るにはいろいろな議論があった。一般投票で話題づくりだけを狙うならば、「専門家票+一般投票」の合計で選ぶという方法もあり得た。専門家票のウエートを高めれば、主催者側が意図したものが選ばれやすい。
そうではなく、完全に一般投票に預ける形にした。それは、「大賞を選ぶ過程を通して、ノミネートされた10件の魅力を一般の人に知ってほしい」と考えたからだ。自分たちの票だけで大賞で決まる方がノミネート10作の情報をちゃんと見るだろう。2月5日夜に開催した「設計者プレゼン総選挙」↓は、その一環として五十嵐太郎委員長の発案で生まれたものだ。
この話が先の「小原流家元会館・豊雲記念館」の話とどうつながるかというと、篠原一男や林昌二に関心のある人は、清家清にも関心を広げて、社会に発信してほしいのである。「みんなの建築大賞」に投票する皆さんには、「もともと推していた建築“以外”の魅力を知って投票してほしい」のである。
今回の「みんなの建築大賞」は、たまたま国政選挙と期間が重なったこともあって、SNS上には「あなたの1票を」というフレーズがあふれている。だが、主催者側としては「心に響くものがあったら5票でも10票でも入れてほしい」というのがこの賞を創設した趣旨である。
投票期間はまだ3日間ある(2月10日23:59まで)。「あ、1票じゃなかったのね」と思った方、今からでも後追いで投票をお願いしたい。投票はこちらの記事↓から。(宮沢洋)
