筆者は村野藤吾の建築が好きなので、おそらくこの建築家も好きなのではないかと思っていた。これまで、一度も実物を見たことはない。実作がヴェネチアなど北イタリアに集中しているからだ。今回、ヴェネチアに行ったのは「日本館が見たい」が半分(こちらの記事参照)、そしてもう半分はこの建築家の実物が見たいと思ったからだ。

ドはまりだった。まるで大きな波に巻き込まれるように一瞬ではまった。若い頃に見ても良さがわからなかったかもしれない。数多くの建築を見てきて、ディテールを見る目がそれなりに肥えてきたから、いきなり大波がやってきたのだろう。
その建築家はカルロ・スカルパ。20世紀のイタリアを代表する建築家・デザイナーの1人、カルロ・スカルパ(Carlo Scarpa、1906~1978年)である。

1906年ヴェネチア生まれ。ヴェネツィアの美術アカデミーで建築を学ぶ。キャリアの初期には、ヴェネチア・ムラーノ島のガラス職人と協働した。1940年代後半から亡くなるまで、ヴェネツィア建築大学でデッサンと室内装飾を教えた。美術アカデミーで建築学の学位を得たが、イタリア政府の建築士資格試験を拒否したため、「 Architetto(建築家)」という職業名を使用することや、資格を持つ建築家と提携せずに建築業務を行うことが許されなかった。顧客や職人たちは、彼を「 Professore(教授)」と呼んだ。そのキャリアの多くは展覧会の会場構成や既存の建物の改修が占める。1978年、ヴェネチア建築大学の学長だった時、日本の仙台で階段から足を踏み外して亡くなった。日本文化を愛好していたことでも知られる。
大勢に迎合しないプロフィルからして村野藤吾っぽい。その造形の自由さは想像したとおり村野的ではあったが、細部の精度は村野を超えていた(村野さん、すみません!)。今回、イタリア出張で5つのスカルパ作品を見た。そのどれもが圧巻の建築だったので、全部お見せしたい。ちょっとした作品集である。
①オリベッティ社ショールーム(1958年、ヴェネチア)
卓上計算機やタイプライターのメーカーであるオリベッティ社のショールームである。ヴェネチアの象徴であるサンマルコ広場を囲む建物の1階にある。周囲には、カフェやレストラン、土産物店などが並ぶ。


旧行政庁だった建物の1、2階を改修したものだ。間口は4mほど。この中にスカルパは、びっくりするほど多くの、そして精緻なディティールを詰め込んでいる。






















②クエリーニ・スタンパーリア財団(1963年、ヴェネチア)
16世紀に建てられた貴族の邸宅。1959年にカルロ・スカルパ、1990年にV・パストール、1994年にマリオ・ボッタ、2018年にミケーレ・デ・ルッキによってリノベーションされ、ミュージアムとして公開されている。スカルパは1階を改修し、展示や会議のための空間、中庭や橋をデザインした。















ちなみにマリオ・ボッタは、新しいエントランスや屋根付き中庭↓をデザインした。

③ヴェネチア建築大学正門(1985年、ヴェネチア)
スカルパが教べんを執ったヴェネチア建築大学の正門。スカルパの死後、彼が生前に残した案を元につくられた。









後編はヴェネチアから車で北に向かう。後編はさらにすごい!!(宮沢洋)
カルロ・スカルパの超絶ディテール/後編(北イタリア)(2025年7月18日公開予定)
