旧県立体育館の解体(こちらの記事)を巡って揺れる香川県のお隣、愛媛県の今治市では、丹下健三の展覧会が3つの会場で同時に開催中。まちをあげて、「世界のTANGE」をアピールしている。
(1)今治市玉川近代美術館「丹下健三と隈研吾 東京大会1964/2020の建築家」
会場のひとつは、今治市立玉川近代美術館。JR今治駅からバスに乗って15分ほどで着く、玉川地区にある美術館である。ここでは「丹下健三と隈研吾 東京大会1964/2020の建築家 パリから今治へ ―凱旋帰国展―」を開催している。


この展覧会のもとになったのは、昨年の5月から6月にかけて、パリ日本文化会館で催された「丹下健三と隈研吾展」だ。この展覧会を見た今治市長が、今治でも開催したいと表明し、
隈研吾氏がそれに応じて実現に至ったという。
展示は4つの展示室にわたって展開する。

第一展示室は「国立代々木競技場と国立競技場」というテーマで、オリンピックの主要施設として建てられた2つの建築のつながりを、明治神宮の森を中心にした都市模型と、石元泰博と瀧本幹也による写真から示したもの。東京の松屋銀座7階デザインギャラリー1953にも巡回した展示だが、ここでは今治ならではのアレンジも加えられている。愛媛県内にある丹下健三と隈研吾の作品が取り上げられているのだ。

丹下は今治信用金庫本店(現・愛媛信用金庫本店今治支店)と愛媛県県民文化会館の模型を展示。前者は地上からは見えない屋上にこんな造形があったのかと、驚く人も多いだろう。隈は新宇和島市立伊達博物館を模型で展示。進行中のプロジェクトで、初めて見るものだった。
第二展示室は「石元泰博撮影『桂』から見た成城の自邸と竹屋」というテーマで、丹下の成城自邸と隈の竹屋(北京、2002年)を並べて比較。併せて、丹下と隈のフランスでの仕事を取り上げる。今治信用金庫本店の家具(実物)も置かれていた。
第三展示室は隈のドキュメンタリー映画も撮った岡博大によるインタビュー映像で、国立競技場を前に隈が語る。
第四展示室は「丹下とパリのモダンアート」のテーマで、丹下が学生時代に憧れた戦前期パリのモダンアートに着目し、玉川近代美術館に所蔵されるピカソ、ブラック、ユトリロ、シャガール、ローランサン、藤田などの作品を展示する。丹下が出征する友人に向けて出した手紙の複製も掲げていて、その文面に表れたみなぎりには心が打たれる。
今治市立玉川近代美術館での展示は9月28日まで。
(2)今治市民会館「海と都市のデザイン展 ―歴史をつぐもの―」
二つ目の会場は、丹下が設計した今治市民会館(1965年)だ。同じく丹下の設計による今治市庁舎・公会堂(1958年)とともに、都市のコアを形成している建築である。その1階のロビーと吹き抜け周りを使った「海と都市のデザイン展」は、今治市内にある丹下作品を解説し、併せて市内の主要な公共建築作品(亀老山展望台/隈研吾、伊東豊雄建築ミュージアム/伊東豊雄、みなと交流センター/原広司)を紹介している。


それぞれを瀧本幹也が撮り下ろした、硬質なモノクロ写真が素晴らしい。今治市中心部の都市模型と、空襲を受けて焼け野原となった直後の空撮写真も並べて展示しており、丹下が今治市の復興に際して思い描いたビジョンについて思い巡らすこともできるようになっている。今治市民会館での展示は9月28日まで。

(3)今治市河野美術館「丹下健三と今治 マンガふるさとの偉人展」
三つ目の会場は、今治市河野美術館だ。今治市民会館からは、歩いてすぐのところにある。ここでは「丹下健三と今治 マンガふるさとの偉人展」を開催している。今治市が作成したマンガ「丹下健三~世界のタンゲと呼ばれた建築家~」(原案・監修:豊川斎赫、漫画:愛馬広秋)をパネルで展示。今治で過ごした少年時代から、広島で戦災復興にかかわり、オリンピックや万博の主要施設を手がけて世界的な建築家になるまでの生涯を、子どもに伝わるマンガのスタイルで見せるもの。


この展示のみ会期が9月4日までと短いので、見たい向きはお早めに。また、マンガはオンライン(今治市電子図書館)で無料で読むこともできる。
同時開催の関連企画として、今治市立中央図書館では『画文で巡る!丹下健三・磯崎新建築図鑑』のほか、関連書籍を集めてコーナーを設けて展示している。JR今治駅のすぐ近くなので寄るのもよしである。

地域と建築家の結び付きを、このような複合的な展示イベントで見せてくれた市の取り組みは、これまでに思い出せない。近い将来、今治市に丹下健三ミュージアムができることを期待したい。(磯達雄)
■展覧会概要
丹下健三と隈研吾 東京大会1964/2020の建築家 パリから今治へ ―凱旋帰国展―
日時:2025年8月2日~9月28日 月曜休館(祝日の場合は翌日)
場所: 今治市玉川近代美術館
観覧料: 無料
丹下健三に学ぶ新しいまちづくり 世界のTANGEビジターセンター
海と都市のデザイン展 ―歴史をつぐもの―
日時: 2025年8月2日~9月28日
場所: 今治市民会館
観覧料: 無料
丹下健三と今治 マンガふるさとの偉人展
日時: 2025年8月2日~9月4日 月曜日休館(祝日の場合は翌日)
場所: 今治市河野美術館
観覧料: 無料
