全国ニュースになる建築家、永山祐子氏がつなげた解体黒瓦のアップサイクル事業が珠洲市で発表

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 建築家の永山祐子氏が率いる永山祐子建築設計と、CACL、LIXILの3社は、能登半島地震で倒壊した家屋の黒瓦を建材へアップサイクルする共同プロジェクトの構想を、9月1日、石川県珠洲市役所で発表した。2024年1月の能登半島地震で全壊・半壊した家屋に使用されていた「黒瓦」を廃棄するのではなく、「創造的復興」のシンボルとみなし、建材へアップサイクルすることで、能登の想いや記憶を未来へとつなぐ。

左は会見時の永山祐子氏、右はマテリアルイメージ(特記以外の画像はすべて会見主催者の提供/写真:Kana Kurata)
能登半島地震で全壊半壊した家屋は公費解体により、解体業者によって分別され、地域集積場を経由し全国の処分場で廃棄されている

 瓦に着目し石川県内の関係者をコーディネートするCACLと、資源の循環利用を促進させる建材技術を持つLIXIL──。永山祐子建築設計がこの2社をつなげて企画発案を行い、デザインから建築への使われ方まで監修する。

 実は、筆者(宮沢)も会見の取材に声を掛けられていたのだが、秋のイベントシーズンに向けての仕事が山積みで行けなかった。

 製品の完成発表ではなく、取り組みスタートの発表である。しかも会見会場が珠洲市だ。この話題がどういうふうに報じられるのかと思って見ていたら、全国紙数社が永山氏の名前を入れてすぐさま報じていた。さすが永山氏の発信力。

 私見だが、この話題を“全国ニュース”として社会に届けられる建築家は、これまで安藤忠雄氏と隈研吾氏くらいだったのではないか。筆者は「建築を社会に開く新たな建築家」としてずっと隈研吾氏の活動をウオッチしているのだが(一覧記事はこちら)、次なるウオッチ候補は永山氏かもしれない。

 というわけで、取り組みに関心はあったのだが、会見に参加できなかったので、以下はプレスリリースのコピペとなる(太字部)。

震災で廃材となった「黒瓦」を建材へアップサイクルし、新たな建築物へ

■背景

「誰かが決めた『境界線』を超えて、新しい価値を見出す」ことを目指し、活動してきたCACL代表の奥山純一氏。震災直後から現地で復興支援を続けてきた奥山氏が「黒瓦」と出会い、黒くて重厚感のある瓦そのものの表面の色と、割れた断面から見えたオレンジ色の対比の美しさに惹かれ、地域の想いや記憶を未来へと繋ぐ創造的復興のシンボルにできないかと考えたことから本プロジェクトは始まりました。

CACL代表の奥山純一氏

この想いを、これまで建材のアップサイクルという課題に取り組んできた永山祐子建築設計がうけとり、同じ課題を模索してきたLIXILへ繋ぎました。「黒瓦」を創造的復興のシンボルとして再生するというビジョンで3社がつながり、珠洲市の協力が得られたことで、プロジェクトが実現しました。

LIXIL常務役員デザイン&ブランド ジャパン部門リーダーの羽賀豊氏
泉谷満寿裕珠洲市長

■マテリアル詳細

黒瓦を破片に粉砕したものを、自然由来の素材を意匠として活用したLIXIL独自の意匠建材「textone※」の原材料に使用し、能登瓦仕様として開発。この素材は、黒瓦の表面の黒くて強いイメージとは異なる、素材そのもののオレンジ色を生かした、とても柔らかくて優しい色味が特長。ある程度の粒感が残るtextone独自の技術だからこそ、能登の黒瓦の風景が目に見える形で生かすことができます。

マテリアル製造フロー
マテリアルイメージ

(※textoneの詳細 2024年4月5日のLIXILのリリースより。
材料には竹・籾殻の炭化物、パルプを使用。軽量かつ木材同等の加工性を実現

株式会社LIXIL(以下 LIXIL)は、セメントとパルプをベースに、自然由来の素材感を無塗装で実現した窯業系の新素材「textone(テクストーン)」を開発し、建材製品への展開を開始します。(中略)

セメントとパルプをベースに、竹や籾殻の炭、鉱石などの自然由来の材料を使用することで、素材そのものの風合いを表現する無塗装の意匠を実現した新素材「textone」を開発しました。「textone」は、これまで実現が困難であった素材そのものの風合いを表現したデザインを実現すべく、自社の技術者とデザイナーが構想段階から協議を重ね、自然素材がもたらす素朴な風合いとマットな質感のデザインを実現しました。

さらに、さまざまな素材を均一に混ぜ加圧成形するLIXIL独自の配合技術により、高い耐久性を確保しながら自然素材を使用した無塗装の意匠を実現しています。また、一般的なコンクリートやタイルといった窯業材および石材と比較し半分の重量であることや、木材同等の加工性を有し割れにくい特長もあります。(中略)

材料のうち約15%は、本来焼却されるはずの籾殻や古紙などを有効活用しています。また、従来のタイルや石材に比べ、製品自体の軽量化に繋がることから、製品輸送における環境負荷低減・施工時の作業不可軽減が期待できます。)

■今後について

本プロジェクトでは、すでに実験的なマテリアル製造を始めています。今後は、具体的な建築などへのアップサイクルを目指し、特に地域へ還元するためのパートナー企業様と協働していきたいと考えています。

おまけ:陶製素材に包まれる永山氏の新作「AOI CELESTIE COFFEE ROASTERY」

 以上がプレスリリースの情報である。会見に参加した朝日新聞の報道によると、「永山さんが手掛ける東京の大型商業施設の壁などに使う予定」とのこと。ああ、あれかなあ…。

 最後に少しだけオリジナルなことを書くと、永山氏は、陶製素材の使い方が非常にうまい。例えば、今年2月に名古屋・新栄町にオープンした「AOI CELESTIE COFFEE ROASTERY(アオイ セレスティ コーヒー ロースタリー)」はこんな感じだ。

カフェの店内にはオリジナルのレンガがびっしり(写真:宮沢洋、以下の4点も)
床や階段にはテラゾータイルも
場所は愛知県名古屋市東区東桜2-17-22


ランドスケープはDAISHIZEN(代表取締役: 齊藤太一)

 詳細はこちら。(宮沢洋)