「MoN Takanawa」は隈研吾氏“原点回帰”のびっくり系建築、内外のぐるぐるを味わい尽くす攻略ルートはこれ!

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 JR高輪ゲートウェイ駅に直結する「TAKANAWA GATEWAY CITY」内に、地上6階・地下3階の複合型ミュージアム「MoN Takanawa: The Museum of Narratives」(モン タカナワ ザ ミュージアム オブ ナラティブズ、以下 MoN Takanawa)が3月28日に開館した。これは隈研吾氏による久しぶりの“びっくり系”建築である。

(写真:宮沢洋、以下も)

 まずは、プレスリリースにある基本情報(太字部)。

館内には、約1,500㎡の展示空間、ステージ全面にLEDを備えたシアター空間、約100畳の畳空間などを有し、展示からパフォーマンス、体験まで幅広い表現に対応します。さらに、足湯テラスや月見テラス、神社、ファームなど、誰でも利用できる滞在空間やレストラン、カフェなども併設し、一日を通して文化に触れながら滞在できる構成としています。

名称:MoN Takanawa: The Museum of Narratives
事業者:一般財団法人JR東日本文化創造財団
敷地面積:7,977.31 m²
延床面積:28,952.55 m²
高さ:44.98 m

階数:地上6階・地下3階
主用途:展示場、ホール、飲食施設、駐車場等
設計者:品川開発プロジェクト(第I期)設計共同企業体
デザイナー:外装デザインアーキテクト/隈研吾建築都市設計事務所
開館:2026年3月28日

 設計者名に「品川開発プロジェクト(第I期)設計共同企業体」とぼやっと書かれているのは、別の資料によれば「JRE設計・JR東日本コンサルタンツ・日本設計・日建設計」である。そして、隈研吾氏は「外装デザインアーキテクト」としてクレジットされているものの、実際には内部の構成にも深く関与しているという。これは隈氏に別件で会ったときに直接聞いた。

 筆者は「隈研吾ウオッチャー」を自称しており、3月25日に行われた内覧会にも行った。速報することもできたわけだが、この日はなぜか外部をぐるぐる巡るスロープが一部しか公開されていなかった。それでは「建築」として語ることができないと思い、オープンしてから改めて行ってきた。それを含めてのリポートである。

 まず1つ目として、外観が“びっくり系”だ。

 筆者は、2021年に上梓した『隈研吾建築図鑑』(日経BP刊)で、隈氏の建築50件を“びっくり系”“しっとり系”“ふんわり系”“ひっそり系”の4タイプに分類して掲載した。この時には、メディアに取り上げられにくい“ふんわり系”のニーズが地方都市で高く、それが隈人気を支えていると分析した。その分析は今でも正しいと思っているが、それ以降は出来上がるものが“ふんわり系”ばかりになってしまった感がある。

 “びっくり系”は「ドーリック南青山」(1991年)や「M2」(1991年)など、隈建築の原点だ。だが、人をびっくりさせるにはお金がかかるし、繰り返しが効かない。この5年くらいは、“びっくり”に分類したくなるものが影を潜めていた。

 MoN Takanawaの外観はオーストラリアのシドニーに立つ「The Exchange」(2019年、写真を見たい方はこちら)に似ているが、あちらはアコヤ材(ラジアタパインなどをアセチル化処理した高耐久木材)を曲げたものをパネル化して、渦状に見せている。一見、らせんに見える。が、平面図を見ると、各階のずれとアコヤ材の傾きでそう見えるだけのようだ。

 対してMoN Takanawaは、外装のぐるぐるが実際に上っていく。かつ木材(アコヤ材)と植栽ボックスのミックスだ。

 ちなみに、「MoN」は、フランス語の「山(Mont) 」なのかと思っていたのだが、「門」と「問」の2つの意味をかけたものだという。

 びっくりの2つ目は、外のぐるぐるよりも室内の方がもっとぐるぐるだということ。

 わかりやすくするために、最初は「できるだけ外を通る」ルートで屋上に上り、下りは室内をめぐって下りてみる。

スタートは北東側の線路脇の階段から
2階南側のメインエントランス(写真右)をかすめて、西側(奥)へ抜ける
西側の外部通路
北側の2階。ここから再び階段
2階の案内図にこれまで歩いた道を青で書き入れてみた。左が北。上(東)が線路側
3階の東側(線路側)まで進むと、この「トレインテラス」で外部通路は行き止まり。いったん右の出入り口から室内に入る
正面奥のエスカレーターで4階へ
4階から5階へは室内線路側の長いスロープで
5階「BOX1500」の北側・西側(室内)を回る
再び南側の外部階段で6階へ
6階。線路側には足湯テラスなどがある
月見テラス
さらに階段で屋上へ
ここが最上部の「花見テラス」。都会のオアシス

 では、下ろう。今度は室内をできるだけ階段で下りる。

5階「BOX1500」(1500は面積を指す)では、「ぐるぐる展 進化しつづける人類の物語」を開催中。9月23日まで.
詳細はこちら
4階の「Tatami」。約100畳の畳空間。内覧会ではこんな厳粛な感じだったのだが…
イベントのないときには、みんな靴を脱いでゴロゴロ、これはいい風景!
4階から下の共用部はほぼワンルームでつながっている。階段やエスカレーターがあちこちにあり、いろいろなルートで下りることができる。左上に見えるのが4階の「Tatami」。手前の床は2階。その奥に進むと1階が連続する
4階から3階へ向かう階段
3階と2階の間には階段状の休憩スペース
上から見るとこんな感じ
2階のメインエントランス付近から吹き抜けを見上げる
2階から1階へ。1階には「BOX1000」がある
図面を見てもわからないと思うけれど、参考まで3~6階

 筆者は現地に行く前、外部のスロープだけで屋上まで上れるのだと思っていた。そういう動線にもできなくはなかったと思うが、あえてそうはせず、「入ったり出たりしながら」多様なぐるぐるを体験させる方法を採ったのだろう。もちろんエレベーターを使えば、ぐるぐるせずに目的の階に一気に行ける。でも、歩きたくなる。これだけの規模で、こんなにフロアをまたいで歩きたくなる建築は珍しい。

 隈氏はもともと、内部空間の複雑なつながりをつくるのがうまい人で、そういう建築もたくさんある。平面的にそういうものをつくれる人は少なくないが、隈氏はそれを高さ方向にも展開できる(例えば亀老山展望台やTOYAMAキラリなど)。最近は、木ルーバーのニーズが高すぎて、世間から「表層建築家」みたいに言われているので、そうした見方への抵抗かもしれない。

 こういう空間を思いついたとしても、それを実現するのは並大抵ではない。区画とか空調とか、とんでもなく大変そうだ。そこは今回、JRE設計・JR東日本コンサルタンツ・日本設計・日建設計の皆さんが頑張ったのだろう。ちなみに今年の「東京建築祭」ではJR東日本建築設計(JRE設計)の担当者がMoN Takanawaを案内するツアーがあるので、興味のある人は公式サイトを見てみてほしい。

 そして、2階の「BOX300」では、MoN Takanawaができるまでを展示する「ひらけ モン!展 はじまりの始まり」が6月6日まで開催中。入場無料。ひょっとして「高輪ゲートウェイ駅」(2020年)すらもまだ見たことがないという人は、ぜひどちらも実物を見てから感想をSNSに投稿していただきたい。建築は「体験」ですよ!(宮沢洋)

高輪ゲートウェイ駅。ここは改札内にゴロゴロするコーナーがあってびっくりする
駅としては地下鉄の泉岳寺駅の方が近いので、「TAKANAWA GATEWAY CITY」全体ではなく、MoN Takanawaを目的に見に行く人は泉岳寺駅がお薦め