東海国立大学機構が名古屋大学東山キャンパス内に開設した「Common Nexus(コモンネクサス)」(通称:ComoNe、コモネ)を見てきた。企業や地域住民と交流して研究活動などを発展させる「共創拠点」という位置付けの新しいタイプの施設。7月1日にオープンした。

設計者の小堀哲夫氏(小堀哲夫建築設計事務所)から、「誰でもアポなしで見られるけれど、毎日、見学ツアー(要予約)が行われているので、それに参加するのがおすすめ」と聞き、参加してきた。

建物は地下鉄「名古屋大学駅」直結。槇文彦氏の初期代表作である「名古屋大学豊田講堂」(1960年)と、「名古屋大学中央図書館」(1981年)の間に立つ。設計者の小堀氏は2021年に実施された公募型プロポーザルで、槇総合計画事務所、伊東豊雄建築設計事務所、SANAAといった錚々たる参加者を破って当選した。もしつまらないものになっていたら、建築家としての株を下げるリスクも大きそうだが、筆者が見たところ、想像以上に魅力的な空間に仕上がっていた。
鉄筋コンクリート造、一部鉄骨造で、延べ面積は約7000m2。施工は鴻池組。構造設計は小西建築構造事務所、ランドスケープデザインはランドスケープ・プラスが担当した。


地下2階・地上1階建てで、主要機能を地下に集約した建物だ。地下鉄名城線・名古屋大学駅とは施設東側の地下2階レベルで接続する。

イベント会場や展示スペース、3Dプリンターなどでものづくりができる設備を備える。吹き抜けやハイサイドライトを多用し、地下であることをほとんど感じさせない。




大きな本棚のあるエリアでは誰でも棚の一角を有料で借りて本を展示できる。本を通じた交流イベントも開く予定。


軽やかに、空へと舞い上がる軸線
この施設を見て、筆者には2つの発見があった。1つは、「まっすぐな軸線の新たな可能性」。
昨今は、丹下健三のような「まっすぐで強い軸線」を設定する建築は少なく、路地のようなつくりのものが多い(いい悪いはさておき)。そんななかで2023年、熊本県南阿蘇村にオープンした「熊本地震震災ミュージアム KIOKU」(設計:大西麻貴+百田有希/o+h、産紘設計)は、ぐにゃりと曲がった”柔らかい軸線”が新たな建築の可能性を示している、と感じた(こちらの記事↓参照)。
コモネの東西に延びる地上部分は、緩やかな凹面の屋上広場としている。「谷戸(やと)」と呼ばれる谷状の地形をモチーフにしたものだという。
そして、この凹面は、西方向(図書館側)に緩やかに上昇している。軸線としては道路を挟んだ豊田講堂からの一直線の”強い軸線“のはずなのだが、曲面と傾斜によって、空に舞い上がるような軽やかな印象となっているのだ。




そして、逆にコモネの屋上から見ると、曲面が豊田講堂に集中していくように見え、ただならぬリスペクト感を感じさせる。リバーシブルな軸線なのだ。


なるほど、軸線というものは、まっすぐか曲がっているかだけではなく、面の形や角度によっても印象や意味を変えられるのだな、と感心した。
まるでサクラのようにくつろぐ学生たち
筆者のもう1つの発見は、「ワンルーム空間での無目的な居場所の多様性」。
オープンして3週間弱なのに、学生たちがくつろぎまくっていることに驚いた。室内には仕切られた部屋は少なく、多様な場がずるずるとつながっている。そのどこにも、まるでサクラではないかと思うくらい学生がくつろいでいるのだ。




特にこの大階段の光景は衝撃。


筆者は以前から、「中庭」や「大階段」に興味を持っている。そういうところに人がたまるシーンを見つけると、写真を撮ってコレクションしてきた。人がたまる場を見ると、たまらない場との条件の差を考える。
この大階段の人だまりは、設計者の小堀氏の狙い通りなのだと思うが、その分析をし始めるとあまりにも長い記事になってしまうので、いずれまたの機会に。

なお、コモネの屋上は来年の2月ごろまで、芝生養生のために立ち入り禁止の予定だ。せっかくの目玉空間が残念…。なのだが、見学ツアーに参加すると特別に屋上に出ることができる(天気がよければ)。なので、せっかく行くなら、このツアー(無料)に予約することをおすすめする(サイトはこちら)。(宮沢洋)

■建築概要
Common Nexus(コモンネクサス)
構造: RC構造一部S造
階数: 地上1階地下2階建
建築面積: 5,469㎡
延床面積: 7,313㎡
設計: 小堀哲夫建築設計事務所(意匠)
小西建築構造事務所(構造)
森村設計(設備)
ランドスケープ・プラス(外構)
施工: 鴻池組(建築)
白川電気土木(電気)
日本ファシリオ(機械)
愛知(造作家具)
工事監理: 東海国立大学機構 施設統括部
