日本建築大賞で初の「大賞2件」、浅子佳英・西澤徹夫・森純平「八戸市美術館」と遠藤克彦「大阪中之島美術館」

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 4月27日午後にJIA日本建築大賞の最終審査が公開で行われ、「八戸市美術館」(設計:浅子佳英、西澤徹夫、森純平)と「大阪中之島美術館」(設計:遠藤克彦)の2件が大賞に選ばれた。

 筆者(宮沢洋)も審査員の1人として議論に参加した。審査委員は田原幸夫氏(審査委員長)、松岡拓公雄氏、手塚貴晴氏、永山祐子氏、宮沢洋の5名。

八戸市美術館(写真:宮沢洋、以下も)
大阪中之島美術館

 日本建築大賞は、これまで大賞に1作品が選ばれてきた。だが、今回は美術館2件のうちの1つに絞りがたく、また美術館として同時代に異なる可能性を志向するものであることから、審査委員会としては2作品を大賞とすることに決めた(要綱に「大賞は1作品」とは書かれてない)。JIA理事会への報告を経て正式決定となり、審査講評などが発表される。

 「八戸市美術館」と「大阪中之島美術館」については、すでにこのサイトでもリポートしており、詳細はそちらの記事をご覧いただきたい。

加速するミュージアム・ダイバーシティを十和田市現代美術館&八戸市美術館で体感──「青森5館」全制覇・後編(2022年5月10日公開)

八戸市美術館のジャイアントルーム(下の写真も)


「大阪中之島美術館」ついに開館、建築雑誌泣かせのブラックキューブと静謐な巨大洞穴(2022年1月31日公開)

大阪中之島美術館のパッサージュ

優秀建築賞は日建設計「全薬工業」とMOUNT FUJIEntô

 応募228件の中から下記の7件が現地審査対象に選ばれていた。(応募番号順)

・星野神社 覆殿・本殿 (愛知県豊川市市指定文化財)(望月成高:望月建築設計室)
・森の小屋(佐藤文、鹿嶌信哉:K+Sアーキテクツ)
・全薬工業 研究開発センター(頭井秀和、水野悠一郎、チンシャンリン、河野信:日建設計)
・八戸市美術館(浅子佳英:PRINT AND BUILD株式会社、西澤徹夫:西澤徹夫建築事務所、森純平:interrobang)
・大阪中之島美術館(遠藤克彦:遠藤克彦建築研究所)
・太田アートガーデン(ホルへ・アルマザン:ホルヘ・アルマザン・アーキテクツ + 慶應義塾大学アルマザン研究室)
・Entô(原田真宏:MOUNT FUJI ARCHITECTS STUDIO/芝浦工業大学、原田麻魚/野村和良:MOUNT FUJI ARCHITECTS STUDIO)

 優秀建築賞には「全薬工業 研究開発センター」と「Entô」が選ばれた。大賞に選ばれた「八戸市美術館」、「大阪中之島美術館」を含めた4件が4月27日の設計者プレゼンおよび最終審査の対象となった。4件が拮抗しており、例年に増して議論が白熱した。

「全薬工業 研究開発センター」 (以下の2点も)
「Entô」(以下の2件も)

 現地審査対象の残り3件もそれぞれ魅力的な建築だった。

「星野神社 覆殿・本殿」
「森の小屋」
「太田アートガーデン」

 「日本建築家協会優秀建築選2022」の100作品についてはこちらで見ることができる。

 なお、例年、この賞は2月下旬に最終審査が行われていたが、今年度は「Entô」(隠岐島にある海士町)の現地審査が悪天候で延期されたため、最終審査が4月となった。次の期の募集要項は6月ごろに発表される予定とのこと。(宮沢洋)