「大阪中之島美術館」ついに開館、建築雑誌泣かせのブラックキューブと静謐な巨大洞穴

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 大阪中之島美術館(大阪市北区)が2月2日(水)に開館する。1983年に構想が発表されてから約40年。待望の開館記念展「超コレクション展」の内覧会が1月28日に開かれた。話題の建築は一番に見なきゃ、ということで、大阪まで見に行ってきた。

(写真:宮沢洋)

 美術館の発注者は大阪市。設計者は大阪市都市整備局企画部公共建築課と遠藤克彦建築研究所。施工者は錢高組・大鉄工業・藤木工務店JV。PFI法に基づく公共施設等運営事業(コンセッション方式)を日本の美術館として初導入。PFIの事業者には朝日ビルディング(大阪市)が選ばれた。

 と、運営面もいろいろ面白そうなのだが、まず知りたいのは建築についてだろう。

意外に主張しないブラックキューブ

 敷地面積約1万2871m2、延べ面積約2万12m2。鉄骨造、地上5階建て、高さ約36.9m。

 建設中から外観の「ブラックキューブ」が大きな話題になっていた。私自身は今回、初めて見た。

 イメージしていたブラックキューブとはちょっと違っていた。もっと“主張するブラックキューブ”だと思っていたのだ(黒御影石かピカピカのガラス質素材だと思っていた)。だが実際は、意外におとなしい。黒い外壁はプレキャストコンクリートで、表面には骨材らしきものが露出している。それが黒塗りなので、アスファルト舗装を並べたみたいだ。光沢がほとんどない。もし知らずに川沿いを歩いていたら、見過ごすかもしれない。

 内部の売りである「パッサージュ」(遊歩空間)は、イメージとかなり違っていた。パッサージュは1~5階を貫く巨大で複雑な形の吹き抜けだ。勝手に想像していたのは、外観と対照的なにぎやかな空間だった。さんさんと自然光が降り注ぎ、暖かい素材で包まれる……そんなイメージの空間だ。だが実際は、外観にも増してストイック。相当な大空間なのに、使われている素材はほぼアルミスパンドレル一択。自然光も入りはするが限定的。“静謐な巨大洞窟”といった印象だ。

無限に写真が撮れてしまうパッサージュ

 この建築は、建築雑誌のカメラマンや編集者にはなかなか悩ましいと思う。まず、外観写真から始めるか、内観から始めるか。前述の通り、ブラックキューブは意外に強い主張がない。かといって風景に溶け込んでいるわけでもない。この不思議な在り方を写真で伝えるのは難しそうだ。

 内部で始めるとしたら間違いなく「パッサージュ」なのだが、この空間は、写真が無限に撮れる。どこからどう切り取っても絵になる。ちょっと寄ったり引いたりするだけで、違う構図になる。それぞれが絵になるのだが、写真をたくさん並べると、似た印象になる……。

 建築雑誌各誌がほとんど同じアングルの写真で始まるという建築が少なくないが、この美術館はどうやって見せるのか、雑誌によってかなり差が出そうだ。雑誌を見比べるのが楽しみ。伝える側にも、新しい挑戦を求める建築である。依頼された仕事でなくてよかった……。

オープニング展の締めは 倉俣史朗!

 オープニング展「超コレクション展」もすごい。本展では、これまでに同館が収蔵した6000点を超えるコレクションから約400点の代表的な作品を選び、一堂に公開する。新設の施設なのに、そんなに収蔵品があるって、さすが準備期間40年の証し……。展示室の空間を見がてら、一部を見てみよう(撮影禁止の部分が多かったので、一部でご容赦を)。

 建築好きには、この壮大なオープニング展の締めのエリアが、倉俣史朗ゾーンであることがうれしい。名作絵画をたっぷり見た後でも、この「ミス・ブランチ」の「永遠を閉じ込めたような美しさ」は全く負けていなかった。

 オープニング展の会期は、3月21日までの2カ月弱。

 内覧会では設計者の遠藤克彦氏を見つけられなかったので、遠藤氏の想いは建築雑誌で読もう、っと。(宮沢洋)

■展覧会情報
開館記念展「超コレクション展」
会期:2022年2月2日~3月21日*月曜日休館(3/21を除く)
開催時間:10:00 ~17:00(入場は16:30まで)
会場:大阪中之島美術館 4、5階展示室
主催:大阪中之島美術館、NHK⼤阪放送局、NHKエンタープライズ近畿、読売新聞社
協賛:NISSHA
観覧料:一般1500円(日時指定事前予約優先制)
https://nakka-art.jp/exhibition-post/hello-super-collection/