近年、公共の「複合コミュニティー施設」が面白くなっている。すぐに頭に浮かぶところでは、前回の「みんなの建築大賞」で「大賞」と「推薦委員会ベスト1」をダブル受賞した「おにクル」(伊東豊雄+竹中工務店、2023年、開館時の記事はこちら)。少し前だと「須賀川市民交流センター tette」(石本建築事務所+畝森泰行建築設計事務所、2018年 )は「こんなにあれこれ混ぜちゃって大丈夫なの?」と目が点になったし(イラストルポこちら)、2022年の日本建築学会賞を受賞した平田晃久氏の「太田市美術館・図書館」(2017年)も、機能は少ないながら複合の仕方に驚いた。
考えてみると、それらの複合施設の「触媒」となっているのは、いずれも図書館である。比較的ばらしやすい図書館が人を動かす重要な役割を担っている。


前ふりが長くなってしまったが、「こんなものを複合の触媒にしたのか!」と驚いたのが、2025年6月にオープンした「湯田温泉こんこんパーク」(山口市)だ。
触媒になっているのは、「温泉(温浴施設)」と「足湯」だ。









設計したのは光井純氏と大建設計。この施設のことは、昨年秋のイケフェス大阪「セッケイ・ロード」(記事はこちらhttps://bunganet.tokyo/ikefes2025/)で知った。光井純アンドアソシエーツ(JMA)の大阪オフィスに写真や模型が展示されていたのだ。

『湯けむり建築五十三次』という著作を持つ温浴施設好きとしては行かないわけにはいかない。
湯上がりののぼせ気分で書いているので、感想を盛り過ぎないよう、光井事務所の公式説明を引用させていただく(太字部)。
JMAは2009年より山口県山口市湯田温泉のまちづくりに関わり、泉源施設「温泉舎(ゆのや)/2010年竣工」、湯田温泉観光回遊拠点施設「狐の足あと/2015年竣工」の設計に携わってきている。そのような縁の深い湯田温泉にて、“観光客のみならず、多世代が交流し、健康的に住み続けられる都市空間を形成すること”を目的とした取り組みの一環として、本施設「湯田温泉こんこんパーク」が整備された。

施設計画の検討にあたっては、市民ワークショップ、多様な分野の有識者との専門会議、地元小学生との遊具に関するワークショップなど、様々な方々と意見交換を行いながら進められ、地元の多世代にわたる方々との交流によって形作られていくプロセスが展開された。
デザインについては、これまでのまちづくりにおいて一貫して掲げてきた「湯田モダン」のスタイルを踏襲しつつ、健康で活気あふれるまちとして次世代へ発展的に引き継ぐため、「ココロオドル」をサブコンセプトとして新たに掲げた。その実践として、建物全体をあたかも「遊具」のように見立て、子供から大人まで多様な人々がそれぞれの居場所を見つけられる施設として計画している。

施設は中央に交流棟、廊下を介して温浴棟が配されている。交流棟のメインとなる全天候型の大屋根広場は、多目的広場として、マルシェやパブリックビューイングなどに活用できるほか、可動式の大型スライドドアを閉じることで、周辺住宅街への騒音に対する配慮も行いながら音楽イベントなどにも対応できる。



交流棟にはほかにも、足湯に入りながら飲食が楽しめ、市のさまざまな見どころが紹介される温泉交流スペースや、山口市の文化のひとつである「もちまき」が行える「もちまきテラス」、貸室として利用できる3つの多目的室が設けられている。温浴棟には温泉街の拠点として、「森の湯」「空の湯」と呼ばれる趣の異なる2つの浴室と、2つの貸切風呂がある(うち1つにはバリアフリーに対応した昇降式の浴槽を備える)。

屋外には、市民や観光客が気軽に立ち寄れるスペースとして、噴水広場や湯田温泉を象徴する「白狐」をモチーフとした大型遊具がシンボルとなり、その傍らには足湯を備えた芝生広場がある。交流棟2階には、インクルーシブ遊具やハーブガーデン、壁面いっぱいにお絵描きができるスペースなどを備えたテラスが広がり、敷地南西角に設けられた大階段により、周囲のまちと連続して回遊できる場所となっている。


2009年にまちづくりガイドラインを策定してから16年余りが経つが、本施設が多くの人々に活用されることにより、「湯田モダン」のスタイルがさらに醸成され、未来へと継承されていくことを願っている。
発注者:山口市
設計・監理:光井純アンドアソシエーツ・大建設計共同企業体
施工:鴻城土建工業・西谷工務店・大和建設特定建設工事共同企業体
延床面積:3,904.69㎡
構造・階数:【交流棟】2F,S/RC造【温浴棟】1F, RC
所在地:山口市湯田温泉5丁目2番15号
説明文の冒頭にあったように、光井氏は湯田温泉で「温泉舎(ゆのや)/2010年竣工」、「狐の足あと/2015年竣工」に続きこれが3件目なのだ。超高層や都会の先端商業施設のイメージの強い光井氏がなぜ湯田という街でそんなに強いかというと、光井氏は山口県の岩国市出身。それだけでなく、岩国に岩国オフィスを開いて本腰を入れて取り組んでいるのだ。そうやって地域と向き合ってこないと、温泉をコミュニティーの媒介にするというアイデアは思いつかないかもしれない。
ちなみに2015年にできた「狐の足あと/2015年竣工」はこれ↓だ。おしゃれな有料足湯施設。これは明らかに観光客向けだ。有料といっても大人200円ではあるが。


宮崎浩氏が設計した「中原中也記念館」(1993年)↓の前にある。

こんこんパークは、この一角から徒歩5分ほどのところにある。大通りから少し離れているので、「地元のため」という方向で割り切ることができたのだろう。温泉棟は午前6時〜午後10時と、営業時間が長いので、湯田温泉に行く人は一風呂浴びてみてはどうだろう。(宮沢洋)


