「建築文化フェロー」が集結した「文化庁建築文化サミット」が初開催、自走する仕組みづくりへの一歩

Pocket

 3月6日、東京・乃木坂の国立新美術館の講堂で「文化庁 建築文化サミット ~まちづくり×ビジネス×デザインのシナジー~」が開催された。筆者(宮沢)はメディア兼関係者という立場でこのトークイベントを見てきた。

このトークイベントの特徴ともいえる「建築文化×ビジネス」のセッションの様子(写真:宮沢洋、以下も)

 初開催となるこのイベント。「建築文化サミット」とは何ぞや。そして、見出しにある「建築文化フェロー」という言葉もおそらく初耳だろう。PRTIMESのリリースにはこう説明されていた(太字部)。

 文化庁では、国や地域が有する貴重な文化資源を活かし、官民連携による新たな価値創造と持続可能な活用の推進に取り組んでいます。令和5年3月に閣議決定された「文化芸術推進基本計画(第2期)」では、建築文化(※)の振興が価値創造や社会・経済の活性化を支える重要な施策として新たに位置づけられました。

 こうした方針のもと、文化庁では近現代建築に特に着目し、その保存・活用を通じて建築文化を振興するため、制度検討や普及啓発を進めています。近年では、市民に親しまれてきた建造物や景観を現代のニーズに合わせて継承・改修し、文化と経済の好循環を生み出す取り組みが各地で広がっています。こうした方針のもと、文化庁では近現代建築に特に着目し、その保存・活用を通じて建築文化を振興するため、制度検討や普及啓発を進めています。近年では、市民に親しまれてきた建造物や景観を現代のニーズに合わせて継承・改修し、文化と経済の好循環を生み出す取り組みが各地で広がっています。

司会はクリス智子さん
160人の一般聴講枠(無料)は1日で予約が埋まったそう

 本サミットでは、そうした取り組みの最前線で活躍する実践者を招き、事例紹介、専門的な論点提示、参加者との全体討議を通じて、歴史的価値と現代的価値をいかに結びつけ、次世代へ引き継ぐのかを多角的に議論します。建築文化振興のこれからを展望するとともに、都市・地域づくりの新たな可能性を探ります。

建築文化とは、建物やまち並みを単なる不動産ではなく「地域の文化資産」として捉え、手を入れつつ使い続けることにより、地域の魅力を高め、経済と暮らしの活力につなげる取組です。

 長々と引用しておいて何だが、重要なのは最後の「※」部分で、「建物やまち並みを(中略)手を入れつつ使い続ける」という下りだ。その先端的な取り組みを「まちづくり×ビジネス×デザイン」の3つの視点で語り合った。

 イベントは16:00~19:20、休憩を挟んだ正味3時間。登壇したのはなんと13人。「サミット」と名乗るほどなので、各分野の第一線で活躍する面々だ。なぜ、第1回からこんな豪華なラインナップで実現できたかというと、全員が2025年度に新設された「建築文化フェロー」のメンバーだからだ。

 そして、筆者も登壇はしていないが、「建築文化フェロー」の1人である。

 建築文化フェローは約30人いて、どうやら文化庁のサイトでは名前が公表されていない。少なくとも今回登壇した13人は公表して問題ないと思うので、こんな面々である。

講演テーマ1「まちづくり」のプレゼンターを務めた時岡壮太氏(デキタ代表取締役)

コメンテーターを務めた豊田雅子氏(NPO法人尾道空き家再生プロジェクト代表理事)

コメンテーターを務めた中嶋徹(竹中工務店設計本部伝統・レガシー建築グループ)

講演テーマ2「ビジネス」のプレゼンターを務めた福田和則氏(エンジョイワークス代表取締役)

コメンテーターを務めた金野幸雄氏(一般社団法人創造遺産機構理事)

コメンテーターを務めた水上幸子氏(リノベリング取締役)

講演テーマ3「デザイン」のプレゼンターを務めた神本豊秋氏(再生建築研究所代表取締役)

コメンテーターを務めた藤村龍至氏(東京藝術大学准教授・RFA主宰)

コメンテーターを務めた吉原勝己氏(スペースRデザイン代表取締役)

パネルディスカッションのパネリストを務めた加藤耕一氏(東京大学大学院工学系研究科建築学専攻教授)

パネリストを務めた後藤治氏(工学院大学総合研究所教授)

パネリストを務めた馬場正尊氏(オープン・エー代表取締役)

パネリストを務めた廣安ゆきみ氏(READYFOR文化部門長)

 「サミット」といっても、何か宣言を採択するわけではなかった(だからリポートとしては書きにくい)のだが、それぞれの立場からの情報共有や問題提起は非常に刺激的だった。

 このイベントは本サイトで2023年にリポートした文化庁の検討会「建築文化に関する検討会議」の流れを汲んでいる。

文化庁「建築文化に関する検討会議」第3回の集合写真。詳細は下記の記事を(2027年5月25日)

 この会議の座長を務めた後藤治・工学院大学理事長が、この日(サミット)のパネルディスカッションでも「建築文化振興法の制定を目指したい」という話をした。

このイベントの黒幕は後藤治氏?(中央)

 前述のとおり、筆者も「建築文化フェロー」の1人である。昨年7月に文化庁の長官名で拝命した。もちろん長官(作曲家の都倉俊一氏)と面識はなく、この制度を所管する国立近現代建築資料館から声を掛けられた。無給なので特定のミッションがあるわけではない。文化庁が目指しているらしい建築文化振興法について詳しい説明を受けているわけでもない。が、普段の仕事自体が“建築文化の振興”なので、足かせが何もないならやってもよかろうと引き受けた。

 新法のことはさておき、筆者はこう考えている。

 話題になっている国立博物館・美術館の“数値目標問題”(こんな話)を見てもわかるように、税金で文化を支える仕組みは崖っぷちに立たされている。特に、維持費用が巨額な建築に関しては、その価値を評価・発信し、経済的に持続する仕組みのきっかけや選択肢を増やすことがこれからの文化行政の役割である。建築文化を守るための債務を次世代に押しつけてはならない。「持続的なもののみ文化的である」(←カギカッコ内は先の記事からの引用)

 その前提は共有できそうなトークイベントだった。なので、これを機に自分のプロフィルに「建築文化フェロー」を加えることにした↓。「建築文化フェロー」としても、頑張ります!(宮沢洋)

…とは書いたものの、任期は3月末までなので、来年度以降もそうであるという保証はありません!