素材と光を操るバングラデシュの注目建築家、マリーナ・タバサム展@ギャラリー・間が開幕

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 TOTOギャラリー・間で11月21日から「マリーナ・タバサム・アーキテクツ展:People Place Poiesis(ピープル プレイス ポイエーシス)」が始まった。マリーナ・タバサム氏はバングラデシュのダッカを拠点に活動する建築家だ。11月20日に行われた内覧会では、来日したタバサム氏本人が会場を案内した。

マリーナ・タバサム(Marina Tabassum)氏。バングラデシュ出身の建築家・教育者。2005年、ダッカに自身の建築設計事務所「マリーナ・タバサム・アーキテクツ(Marina Tabassum Architects)」を設立。 現在オランダ・デルフト工科大学で教授を務めるほか、イェール大学建築学部、ハーバード大学デザイン大学院、ベンガル・インスティテュートなどで教鞭を執る。ドイツ・ミュンヘン工科大学より名誉博士号を授与。アガ・カーン建築賞に加え、ジャミール賞、アメリカ芸術文学アカデミーによるアーノルド・ブルンナー記念賞、フランス建築アカデミーの金賞、イギリスのソーン建築賞など、受賞歴多数。建築と地域の公平性を支援する団体「F.A.C.E(Foundation for Architecture and Community Equity)」およびフェアトレード団体「Prokritee」代表。2017年から2022年まで、アガ・カーン建築賞の運営委員を歴任。英国王立芸術協会(RSA)フェロー(写真:宮沢洋、以下も)

 何か決まり事があるのかはわからないが、TOTOギャラリー・間(以下、ギャラ間)では、数年に1度、海外の建築家にスポットを当てた展覧会が行われる。日本の建築家を取り上げるなら回りまわってTOTOの製品のアピールになると思われるが、海外の建築家を取り上げても直接のメリットはたぶんない。完全持ち出しで、これだけの展示を実現するTOTOの心意気にまずは敬意を表したい。

 そして、取り上げる建築家が実にいいところを突いている。決して“有名だから”という理由でチョイスされてはないない。過去10年を遡ると、こんな人選だ。

フィールドオフィス・アーキテクツ展 Living in Place
2015年7月10日―9月12日

スミルハン・ラディック展 BESTIARY:寓話集
2016年7月8日―9月10日

RCRアーキテクツ展 夢のジオグラフィー
2019年1月24日―3月24日

アーキテクテン・デ・ヴィルダー・ヴィンク・タユー展 ヴァリエテ/アーキテクチャー/ディザイア
2019年9月13日―11月24日

アンサンブル・スタジオ展 Architecture of The Earth
2021年6月24日―9月26日

 直近の「アンサンブル・スタジオ」は、恥ずかしながら筆者は、名前すら知らなかった。だが、展示を見ると、彼らのメッセージが心にぐさぐさと刺さった。コロナ禍だったので見ていない人は以下のリポートを読んでほしい。

2025年「サーペンタイン・パビリオン」も話題に

 そして、今回のマリーナ・タバサム氏。この人のことは、今年になってから知った。2025年の「サーペンタイン・パビリオン」を設計したのが彼女だとニュースになっていたからだ。当然、その前からギャラ間での展覧会は決まっていたわけで、これ以上ないタイミングの開催となった。

2025年「サーペンタイン・パビリオン」の模型

 以下は、公式サイトの趣旨文だ(太字部)。

マリーナ・タバサム・アーキテクツ(MTA)を率いる建築家マリーナ・タバサム氏は、気候や文化、伝統に根差した建築を手がけるだけでなく、自然災害や貧困等で苦しむ人々への支援に取り組んできました。

例えばダッカ市内に設計した「バイト・ウル・ロゥフ・モスク」(2020年アガ・カーン建築賞受賞)では、地域の土を焼成したレンガと幾何学を用いて、静謐な光をたたえ風が通り抜ける祈りの空間を創出し、爆発的な拡大を続ける過密都市において多様な人々が集う寛容な建築を実現しています。

「バイト・ウル・ロゥフ・モスク」の展示
「アルファダンガ・モスク」(バングラデシュ ファリドプル、2022年)の展示

また、国全体の約7%が河川に覆われ、洪水で国土の約1/3が水没することもあるバングラデシュにおいて、住む場所を失った人のためにMTAが考案した可動式の住宅「クディ・バリ」(現地語で「小さな家」の意味)は、地域の人々の手により短期間で組み立て・解体することができ、洪水発生時のシェルターとしても機能します。

MTAが立ち上げた財団F.A.C.E(The Foundation for Architecture and Community Equity)は、国内各地でクディ・バリを提供するだけでなく、ユニットを組み合わせることで、ロヒンギャの難民キャンプにおけるコミュニティセンターなど幅広い用途の建物に応用しています。こうした活動と作品が評価され、マリーナ・タバサム氏は2024年にTIME誌の「世界で最も影響力のある100人」に選出、2025年の「サーペンタイン・ギャラリー・パビリオン」の設計者に選ばれるなど、MTAの活動にいま世界から注目が集まっています。

本展では、「人々」「土地」、そして創作や詩作を意味する「ポイエーシス」をテーマに、彼女たちの作品と活動を、模型や映像、インスタレーション等で紹介します

中庭はMTAオリジナルの「クディ・バリ」をバングラデシュから輸送し立ち上げるとともに、京都の里山で実践を行う建築家の森田一弥氏と京都府立大学森田研究室協力のもと、日本の素材と技術で翻案した「日本版クディ・バリ」を新たに制作し、展示します。

森田一弥氏および京都府立大学森田研究室と協力した中庭の展示(下も)

マリーナ・タバサム・アーキテクツが、バングラデシュという土地で人々とともにつむぎあげてきた建築の物語を、ぜひご覧ください。

 youtubeで本人が語る姿が見られる。
https://www.youtube.com/watch?v=EFy4vafIBeg

 会期は2026年2月15日まで。

 展示を見て、タバサム氏の話を聞いていたら、バングラデシュにすごく行ってみたくなった。バングラデシュと聞いて、建築好きの頭に浮かぶのはルイス・カーンの「国会議事堂」(没後の1982年竣工)だろう。それだけでも見に行きたいと思っていたのだが、タバサム氏の建築がこんなにあると知ってしまうと、行きたい国最上位に急浮上だ。この展示を見て同じことを思った人、一緒に行きましょう。(宮沢洋)

■展覧会情報
展覧会名(日):マリーナ・タバサム・アーキテクツ展:People Place Poiesis(ピープル プレイス ポイエーシス)
展覧会名(英):Marina Tabassum Architects: People Place Poiesis

会期:2025年11月21日(金)~2026年2月15日(日)
開館時間:11:00~18:00
休館日:月曜・祝日・年末年始休暇[2025年12月29日(月)-2026年1月7日(水)]
ただし、2025年11月23日(日・祝)は開館
入場料:無料

会場:TOTOギャラリー・間 〒107-0062 東京都港区南青山1-24-3 TOTO乃木坂ビル3F(東京メトロ千代田線乃木坂駅3番出口徒歩1分)
主催:TOTOギャラリー・間
企画:TOTOギャラリー・間運営委員会
特別顧問=安藤忠雄、委員=貝島桃代/平田晃久/セン・クアン/田根 剛協力京都府立大学 森田一弥研究室後援:一般社団法人 東京建築士会

一般社団法人 東京都建築士事務所協会
公益社団法人 日本建築家協会関東甲信越支部
一般社団法人 日本建築学会関東支部
公益社団法人 日本建築士会連合会
公式サイト:https://info.jp.toto.com/gallerma/ex251121/index.htm