「Kミュージアム」の答えは「黒栁徹子ミュージアム」だった! 庶民の木造技術で庶民の娯楽の象徴を包む──内藤廣3連投③

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 長野県軽井沢町に7月5日にオープンした「黒栁徹子ミュージアム」を見てきた。設計は内藤廣氏だ。

(写真:宮沢洋)

 2023年9月~12月に島根県立石見美術館で行われた「建築家・内藤廣/Built とUnbuilt 赤鬼と青鬼の果てしなき戦い」展では、「Ongoing(進行中)」のコーナーで「Kミュージアム」として紹介されていた。この段階で「K」が黒栁さんのことだと気づいた人は相当鋭い。(筆者は内藤氏に教えられるまで、Kさんは草笛光子さんかと思って読んでいた(笑))

 このときの赤鬼と青鬼のやりとりがこの施設の設計意図をわかりやすく伝えていると思うので、それを引用しつつ写真をお見せする。

■Kミュージアム(2022年~、長野県)

渋谷ストリーム・ホールで現在開催中の「建築家・内藤廣 赤鬼と青鬼の場外乱闘 in 渋谷」でも模型などが展示されている。

赤鬼:なんか思ってもいないものいろんなことが降ってくるなー、って感じ。知人からの突然の依頼。

青鬼:彼女とは、某美術館の関係で知り合って、もう25年以上になるね。(中略)

赤鬼:予算を考えると木造、でもさすがにふつうじゃ許されないよね。木造の自由さを目いっぱい引き出すような建物にしたかった。

青鬼:アルゲリッチハウスから真ん中の核を抜いたような屋根。その超複雑な小屋組が中から見える、っていうのはどうかと思った。

アルゲリッチハウスの模型。2023年に島根県立石見美術館で行われた「建築家・内藤廣/Built とUnbuilt 赤鬼と青鬼の果てしなき戦い」展にて。渋谷展でも展示されている

(アルゲリッチハウスについてはこちらの記事を→https://bunganet.tokyo/naitoten02/

赤鬼:動きのある屋根だね。どこから見ても違った姿に見える不思議な形。

青鬼:この場所、少し高いところからの浅間山が絶景なので、屋根の上に物見台をつくりませんか、って提案したら、アーラ面白い、ってことになって、屋根の上に展望テラスを設けることにした。

赤鬼:だいたい、この、アーラ、ってのが聞けると気に入っていることが多いね。某美術館の屋根が後ろの山と重なって見えたときも、アーラ、だった。

青鬼:この展望テラスの形状は、屋根の折り重なりから決めたんだけど、構造的には難易度が高かったので、この部分だけスチールにした。風にあおられるので、木でやったらとてももたない。ここの本体でやろうとしたのは、木の在来工法を使ってどこまで動きのある空間をつくることができるか。

赤鬼:つまり、庶民の中にある木造技術をベースにして、庶民の娯楽であるテレビの最初期からその中心で看板を張り続けてきた人にふさわしい建物をつくる。コンセプトはなかなかいいよね。

青鬼:また自画自賛かい。要するに、少し大きいけれど、この建物は庶民のようであり、集会所のようでもあるってことかな。

赤鬼:できあがって、アーラ、っていってくれることを願っているんだけど。

(ここまで書籍『建築家・内藤廣 BuiltとUnbuilt 赤鬼と青鬼の果てしなき戦い』/グラフィック社/2023年から引用)

 引用文の中の「某美術館」は、黒栁さんが理事を務める「安曇野ちひろ美術館」(1996年)を指している。

 黒柳さんも参加した7月4日の内覧会の後、この施設を取り上げたほぼ全メディアが「玉ねぎヘアをイメージした外観」と報じていた。メディアとの間でそんなやりとりがあったのだと思われる。内藤氏がそんな具象的な例えをするのは珍しいなと思い、内藤事務所に確認すると、内藤氏自身はそんな説明はしていないらしい。さすがは黒栁さんの発信力。建築に勝手に“伝説”が加わっていくのは、庶民に長く愛される条件。メディアの力も借りて、良い一歩を踏み出したようだ。

 さて、建物が出来上がってから内藤氏は、黒柳さんの「アーラ」という言葉を聞くことができたのだろうか?(宮沢洋)

渋谷展で展示されている赤鬼・青鬼の全やりとりはこちら。「Kミュージアム」ではなく、正式名の「黒栁徹子ミュージアム」で展示されている
2階はまだ準備中で物見台には上れない。浅間山、見たい!

■黒栁徹子ミュージアム
住所:長野県北佐久郡軽井沢町長倉574
アクセス:軽井沢駅( JR北陸新幹線、しなの鉄道 )より
・タクシーにて約10分

・西武バス「 風越公園行き」乗車( 約12分)、「黒栁徹子ミュージアム 」バス停下車
開館時間:9:30~17:00(最終入場は、16:30)
休館日:火曜日(祝日の場合開館、翌日が休館)
入館料:一般1,800円 シニア(65歳以上)1,500円 学生(高・大)(学生証提示お願いします)1,500円 小中学生1,000円 障害者手帳所持者1,000円 未就学児童無料
公式サイト:https://kuroyanagitetsuko-museum.com/