隈研吾氏の設計で8月1日にリニューアルオープンした滋賀県甲賀市の道の駅「あいの土山」に行ってきた。1か月遅れになってしまったが、おそらく建築系のメディアでは初の完成リポートだと思う。


場所は甲賀市土山町の国道1号線沿い。甲賀土山ICから約8分。1993年に近畿地方で初めて道の駅として登録された。観光客や大型トラックの休憩所として利用されてきたが、老朽化が進み、隈氏の設計で建て替えられた。
公共交通機関だと、JR草津線 ・貴生川駅でバスに乗り、約30分。なかなかに行きにくいので、レンタカーで行ってきた。


外観が衝撃。先端がとがった巨大な片持ち部が2つ、間近で重なり合う。千葉の田舎で育った筆者はオンブバッタを連想した。オンブバッタを知らない人は、こういう生き物だ(こちら)。(この記事を書くために調べたら、「オンブバッタ」が俗称ではなく、正式名だったということにもびっくり)
周囲が茶畑だからオンブバッタなのか?と思ったのだが、設計主旨は全く違っていた。以下、『日経アーキテクチュア』2025年1月23日号の「プロジェクト予報2025」からの引用。
「3枚の大屋根はお茶の葉が舞う様を、外壁の木ルーバーは歌川広重の絵画「東海道五十三次 土山 春之雨」をイメージしてデザインした」

「お茶の葉が舞う様(さま)」なのか。木ルーバーが歌川広重の描く“”雨の線”だというのは、「馬頭広重美術館」(2000年)のときから言っていることだが、参考まで「土山 春之雨」とはこういう絵↓である。

広重の「土山」が雨の絵であることを知って、「やった!」と思った隈氏の顔が目に浮かぶ。

構造はRC造、一部S造・木造。地上2階。延べ面積は約2207m2。


ルーバーは甲賀産のスギを使っている。けっこう厚くて、いい板だ。支える裏側も相当ごつい。
隈氏らしい洞穴的な通り抜け部分も。

「内装も木をメインにした優しい感じ」とSNSに投稿があったのだが、あろうことか筆者が訪れた火曜日はショップが休みだった! 「道の駅」って休館日があるものなのか…。涙を浮かべながら、ガラス越しに写真を撮った。

7月にホテル部分が先行オープンした「旧上野市庁舎」(坂倉準三による既存建物をマル・アーキテクチャが改修)と車で40分くらいの距離なので、来春そちらの図書館がオープンしたらもう一度見ることにしよう。そのときは、隈氏の道の駅が「火曜休館」であることを忘れないようにしないと。
とはいえ、筆者のようにうっかり休みの日に来てしまっても、駐車場には普通に入れる(トイレも利用できる)のでご安心を。外観がこれだけインパクト大だと、休館だろうが関係なく続々と車が入ってくる。



この施設もきっと外部での木ルーバーの採用に賛否の議論が起こるのだろうと想像する。が、そんなことはわかっていてもやり続ける(というか、さらに攻めていく)隈氏はすごいなと、自称「隈研吾ウオッチャー」である筆者は感心するのである。(宮沢洋)

