プリツカー賞・山本理顕氏の実作を愛でつつ“王道の建築展”で50年の活動を振り返る@横須賀美術館

Pocket

 山本理顕氏といえば、2024年に建築界のノーベル賞ともいわれるプリツカー賞を受賞。SNSやメディア上での一貫した大阪・関西万博批判により、一般の人でも知る人が多い建築家だと思う。けれども都心に見やすい実作が少なくて、「山本建築を見たことがある!」という人はごく少数なのではないか。そんな人は、7月19日から横須賀美術館で始まった「山本理顕展 コミュニティーと建築」をぜひ見に行ってほしい。会場の横須賀美術館は、2006年に竣工した山本氏の代表作の1つで、日本の美術館建築のトップ10に入る魅力的な美術館だ(筆者の宮沢独断)。

展示風景。手前は「No.186 名古屋造形大学 2022」の模型。右のモノクロ写真も。自ら設計した美術館でこんなふうに自作を展示できるのは、、建築家の夢の1つなのでは。建築家にしかできないことで、うらやましい…(会場写真:宮沢洋)
所在地は神奈川県横須賀市鴨居4-1。東京湾の真ん前。京浜急行線を利用の場合、「馬堀海岸」駅 1番乗り場から京急バス「観音崎」行(須24、馬24)「ラビスタ横須賀観音崎テラス・横須賀美術館前」(約10分)下車、徒歩約2分。JR横須賀線を利用の場合、「横須賀」駅 3番乗り場から京急バス 「観音崎」行(須24)「ラビスタ横須賀観音崎テラス・横須賀美術館前」(約35分)下車、徒歩約2分。都心から公共交通機関で行くなら、2時間弱見ておいた方がいい

 今回の展覧会は、会場写真撮影可という太っ腹な展示だったので、建築空間も含めて紹介する。まずは、公式サイトから引用。

建築家・山本理顕(1945-)の50年にわたる設計活動 を、およそ60点の模型や図面、スケッチ、ドローイングを通して紹介します。山本理顕は、建築におけるパブリックとプライベートの境界を「閾(しきい)」と呼び、地域社会とのつながりを生む空間として重要視しています。こうした思想を体現した建築は、そこに住む人々だけでなく、周辺のコミュニティー全体を豊かにできるものとして世界的な評価をあつめ、2024年には、建築界で最も栄誉あるプリツカー賞を受賞しました。代表作のひとつである横須賀美術館を会場として行われる本展は、山本理顕の設計思想を総合的に紹介する、過去最大規模の展覧会となります。

展示は、手掛けたプロジェクト順でわかりやすい。No.01 三平邸 1975, 横浜市。山本氏の第1作。原広司氏と共に世界中を巡った「集落調査」から戻って、最初に手掛けたファッションデザイナーのアトリエ。知らなかった…

 最近、建築展が増えてきたことによって、見せ方の多様化が進んでいる。それはいいことだとは思うのだが、中には「言いたいことがなんだかわからない」状態に陥っているものも見受けられる。そこへいくと、本展の見せ方は明快。プロジェクトごと、時系列順だ。模型と図面、解説文が中心、写真の展示はごく一部。写真では伝わりにくい本質を伝えようというのも建築展の王道といえる。

No.19 ロトンダ 1987 横浜市。年季の入った模型がかっこいい!
実現しなかったプロジェクトも展示していて、これはNo.35 横浜港国際客船ターミナル国際建築設計競技 1994.。このコンペ、取材した。foaの案に負けて2位だったことを思い出した
そうそう、こうやって巨大なガラスの覆いがスライド移動する案だった
模型と説明パネルが繰り返される整然とした展示。このグリッド感は山本氏の建築の特徴でもある
大味になりそうな空間を、この異常なまでに繊細な展示台が引き締める。展示台はアルミメーカーであるSUSの押し出し材モジュールで製作した。展示台は、会期後販売する予定とのこと。建築展でそんな社会との関わり方があったか!
山本氏が持論としている「地域社会圏モデル」の展示はゆったり
「地域社会圏モデル」を動画で見るコーナー
一番大きい模型はこれだった。No.187 ザ・サークル チューリッヒ国際空港 2022
展示の最後に近くなって、ようやく写真展示が現れる
ここからは建築散策。展示室にこんなに自然光が入る美術館は珍しい
丸穴からレストラン越しに見える海
館内から屋上に出るらせん階段から“天井裏”を見る。展示室の外側がまるっとガラスで包まれている構成がわかる
屋上に上ると海がバーンと広がる
ガラスボックスと海
本展で展示されているこの美術館の模型。No.95 横須賀美術館 2007
別棟の谷内六郎館。展示室から海!
谷内六郎館から臨む海。よくこんなものが実現できたなあ

 山本展の入館料は一般2000円(谷内六郎館も見られる)。平日の午前中に見にいったら、行列もなくゆったり見ることができた(何しろ都心の建築展はどこも混んでいる)。お盆休みはもうちょっと混むのだろうとは思うが、都心の建築展ほどではなかろう。会期は11月3日までなので、暑さがひと段落してから観音崎の観光を兼ねて見に行っても。美術館のサイトにあった「横須賀美術館おたのしみマップ」が面白かったので、リンクを張っておく(こちら)。これ、描きたかったなあ。(宮沢洋)

■展覧会概要
「山本理顕展 コミュニティーと建築」
会期:2025年7月19日(土)~11月3日(月・祝) 
開館時間:10:00~18:00
無料観覧日:11月3日(文化の日)
休館日:9月1日(月)、10月6日(月)
観覧料(税込)

一般2,000(1,600)円、大学生・65歳以上1,000(800)円、高校生500(400)円、中学生以下無料
*( )内は20名以上の団体料金
*高校生のうち、市内在住または在学の方は無料。
*身体障害者手帳・療育手帳・精神障害者保健福祉手帳をお持ちの方と付添の方1名様は無料。

*「横須賀美術館パスポート」「よこすか満喫きっぷ」の対象外となります。
*谷内六郎館も観覧できます。
*1階で開催している企画展の観覧には、別途料金が必要となります。

会場:地階展示室および展示ギャラリー
主催:横須賀美術館、一般社団法人地域社会圏研究所
特別協力:株式会社山本理顕設計工場
協賛:ベネズエラ・ボリバル共和国、チューリッヒ空港、SUS株式会社、公益財団法人大林財団、鹿島建設株式会社、清水建設株式会社、大成建設株式会社、株式会社竹中工務店、東京ガスエンジニアリングソリューションズ株式会社、株式会社オカムラ、戸田建設株式会社横浜支店

後援:在日スイス大使館、在日スイス商工会議所、神奈川県、一般社団法人神奈川経済同友会、独立行政法人都市再生機構