磯崎新の「東京造形大」を見る好機! “奇策”で当選したキャンパスを裏まで堪能──「生きるキャンパス展」

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 東京造形大学(東京都八王子市宇津貫町155)で11月17日まで開催中の創立60周年記念企画「生きるキャンパス展 〜ZOKEI 学びの環境とその広がり〜」を見てきた。10月6日から始まっていた企画だが、せっかくなら学園祭(CS祭)も一緒に見ようと思い、10月17日(金)にのぞいてきた。(CS祭は10月19日まで)

東京造形大の入り口。校舎がゲート(写真:宮沢洋)
左奥が展示会場の東京造形大学附属美術館(横山記念マンズー美術館)。この建築の原設計者はなんと白井晟一!

 筆者(宮沢)がこのキャンパスにけっこう詳しいということもあると思うが、想像をはるかに超える面白さだった。なぜ詳しいかというと、今年春に上梓した『画文で巡る! 丹下健三・磯崎新 建築図鑑』(総合資格学院)でこのキャンパスを取り上げたからだ。そう、設計者は磯崎新である。

書籍のイラストルポの一部(イラスト:宮沢洋)

 以下は、展覧会の企画者で、拙著でもお世話になった東京造形大学室内建築専攻領域の酒匂(さこう)克之教授による趣旨文(太字部)。

 東京造形大学は2026年に開学60周年を迎えます。1966年高尾に設立したキャンパスは、1993年に現・宇津貫キャンパスへと全専攻が移転しました。磯崎新が構想した宇津貫のキャンパス計画はコンペを経て竣工し、その後、約30年の間に12号館、10号館(CS PLAZA)、13号館が新設され、キャンパスはこの先も時代と共に変わり続けることになります。

 その変遷の中で、学生や教員は制作活動を行ってきましたが、美術やデザインは人間の内面からだけで生まれるわけではありません。環境から影響を受け、また環境があるからこそ、それらは表現として伝えることができると考えます。仮想空間という環境が拡張された現在でも、生きているかぎり身体をおく環境から影響を受けないわけにはいかないのです。

美術館の入り口

 東京造形大学附属美術館ではこれまで、教育の成果としての作品が多く展示されてきました。それらはこのキャンパス環境が生み出してきたとも言えます。そうであれば、その環境を展示することにも意義があるのではないかと考えました。この宇津貫キャンパスの30年にフォーカスした展示をし、キャンパス環境を知ることから、これから先のキャンパスをどう変化させていけば良いのか、環境活用を考える上での指標にもなるのではないかと考えています。

 また、このキャンパスの環境を積極的に活用している事例も併せて展示することで、学生が思考を広げていければ「生きるキャンパス」を体現できるのではないかと考えます。     

会場風景
ちなみに筆者が書籍で取材したときにはこうだった。白井晟一っぽい!

 企画に協力した東京造形大学グラフィックデザイン専攻領域の渡部千春教授が筆者に送ってくれたお誘いのメールが、ふにゃっと柔らかくてわかりやすいので勝手にコピペさせてもらう(渡部先生、すみません)。

磯崎新設計の現在の校舎ができるまで、コンペの競合山下和正、毛綱毅曠、阪田誠造、高橋靗一案のプレゼン資料や、白井晟一の美術館原案、また、現在のキャンパス(周囲の森林含め)を活用した授業や制作物の紹介など、59年の間にちょっとずつ進化してきたキャンパスのあれやこれやを紹介します。

磯崎新のコンペ案の模型。本展のためにつくったものだそう。素晴らしい!
実際に実現したキャンパスの模型
12号館、10号館、13号館が新設された現在のキャンパスの模型
渡部教授の解説文が面白過ぎる! こういう柔らかい書き方、見習いたい
すごい、指名コンペの5案が全部展示してある
しかも、5案とも提案書が読める。これはお宝…
なんでも知っていると思っていたけれど、、これは知らなかった。旧キャンパス(高尾)の校舎がかっこいいなーと思ったら…
設計したのは浦辺鎮太郎だった! 創立60年というのはこの校舎(1966年)から60年ということ。これは旧キャンパスのスナップ写真

東京造形大学、都心から遠いのが難点ですが、初めての方も、懐かしい、久々の方も、是非この機会にお越しいただければ幸いです。

渡部教授の解説文はくすっと笑わせるものが多いが、展示の最後にきて泣かせる
卒業生である藤森泰司氏(1967~2023年)が食堂用にデザインした椅子とテーブル

私(渡部)のお奨めは、この展覧会に合わせて作ったスタンプラリー(ブック 宮崎勇次郎画、伊藤柏木デザイン事務所デザイン)。

 というお奨めなので、スタンプラリー大好き人間の筆者は、6か所のスタンプを押して商品をゲットしてきた。

 スタンプラリーというイベントがあると、部外者でも変な目で見られずに建築をじっくり見ることができる。会期は11月17日(月)まで、日曜は休み。

 会期中に行けそうもない方、行く前に見どころを知っておきたい方は拙著『丹下健三・磯崎新 建築図鑑』をぜひ。この記事の見出しにある「磯崎が“奇策”で当選した」というのがどういうことなのか、美術館(横山記念マンズー美術館)の原設計者がなぜ白井晟一なのかといった諸々のうんちくが、この本を読むとわかる。(本展を見ても大体わかる)

 そして急ではあるが、東京造形大学では本日10月18日(土)14:00からトークイベントが行われるので、時間のある方はどうぞ。(宮沢洋)

■関連イベント
四美大アラムナイ「美術を楽しむ日」連携トークイベント
「卒業生が語る~あなたとわたしの2つのキャンパス~」
東京造形大学の卒業生であり、また同学で長年教鞭をとられていた小出正志氏・地主広明氏による学生時代と教員時代を、キャンパスを通して振り返るギャラリートーク
日時:2025年10月18日(土)14:00-15:30

CS祭(Creative Spiral Festival)期間中開催!
会場:東京造形大学附属美術館
登壇者:小出正志(東京造形大学名誉教授)・地主広明(東京造形大学名誉教授)
進行:渡部千春(東京造形大学教授)

■展覧会概要
生きるキャンパス展 〜ZOKEI 学びの環境とその広がり〜
The Living Campus: ZOKEI Learning Environment and Its Expansion

東京造形大学創立60周年記念企画
東京造形大学附属美術館
2025年10月6日(月)~11月17日(月)
休館日:日曜・10月21日(火)・11月3日(月・祝) ※ただし10月19日(日)は開館
開館時間:10:00-16:30(入館は16:00まで)
10月18日(土)は18:00まで、11月14日(金)は18:30まで開館

入館無料
展覧会企画:酒匂克之
企画協力: 渡部千春
メインビジュアル:中浪優一
模型・什器制作:東京造形大学デザイン学科室内建築専攻領域
主催:東京造形大学附属美術館
協賛:東京造形大学校友会
公式サイト: https://www.zokei.ac.jp/museum/about/