芸術選奨新人賞を永山祐子氏が万博パビリオンで受賞、松隈洋氏が毎日出版文化賞に続き文部科学大臣賞

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 文化庁は3月2日、芸術の各分野で優れた業績をあげた人を顕彰する第76回芸術選奨の受賞者を発表した。同新人賞に建築家の永山祐子氏、文部科学大臣賞に建築史家の松隈洋氏を選んだ。

永山祐子氏。受賞対象の1つとなったパナソニックグループパビリオン「ノモの国」の内覧会(2025年2月14日)にて。永山祐子建築設計の他、大林組や構造計画研究所、アラップが設計に参加して実現(写真:宮沢洋、以下も)

 このニュース、まだあまり話題になっていないようだ。世の中に拡散されているのは、文部科学大臣賞に「国宝」の李相日監督やタレントの清水ミチコさんが選ばれたことか、新人賞に俳優の広瀬すずさん、脚本家・お笑い芸人のバカリズムさんが選ばれたという情報だ。筆者もそんなニュースを見て、「ほかに誰が選ばれているんだろう」と元の発表(こちら)を見て、永山祐子氏と松隈洋氏の受賞に気づいた。これは、建築界としてもっと騒がねば、とこの記事を書いている。

 まずは永山祐子氏から。公式発表の講評などを引用する(太字部)。

美術B 新人賞
永山祐子 建築家 大阪・関西万博における二つのパビリオンほかの成果

贈賞理由:
令和7年、永山祐子氏は、大阪・関西万博のウーマンズ パビリオンとパナソニックグループパビリオンを手掛け、初の単著と作品集を刊行した。注目すべきは、ウーマンズ パビリオンでは、様々な規制をクリアし、氏がデザインアーキテクトを務めたドバイ万博日本館の組子(くみこ)ファサードのリユースを実現したこと。連続した万博で同じ部材が転用されるのは史上初だろう。しかも二つのパビリオンのファサードは、2027年国際園芸博覧会の異なる出展施設で再利用することも、万博の会期中に決定した。先駆的な循環型プロセスの試みとして高く評価できる。

パナソニックグループパビリオン「ノモの国」。詳細はこちらの記事
「ウーマンズ パビリオン in collaboration with Cartier」。下の写真も。詳細はこちらの記事

 個人的なことを言うと、永山氏は筆者(宮沢)が近年、「建築を社会に開く新たな建築家」として最も注目している1人だ。その創作姿勢と発信力について昨年秋にこんな記事を書いた。

 その後、年末には日経ウーマンの「ウーマン・オブ・ザ・イヤー2026」(こちら)も受賞しており、それも書こうかと思ったのだが、永山氏の活動を性別と結びつけて語るのはBUNGANETとは違うかなと思い、書かなかった。

 芸術選奨新人賞は、完全に仕事勝負の賞だ。それを建築ムラの外から評価された。このサイトでこそ大いに称えるべきだろう。

 ちなみに永山氏が受賞した「美術B」というのは「建築・デザイン・写真・映像・メディアアート・その他の新傾向の作家等」が対象。「美術A」は「絵画(版画含む)・彫刻(インスタレーション含む)・工芸・書等の作家等」が対象だ。芸術選奨新人賞は1968年に創設された賞で、筆者が調べた限りでは、建築家としては2015年の齊藤正氏(「HANCHIKU HOUSE」)、2017年の田根剛氏(「エストニア国立博物館」)に続いて3人目だった。

 そして、松隈洋氏。

松隈洋氏

評論 文部科学大臣賞
松隈洋 建築史家・神奈川大学教授「未完の建築 前川國男論・戦後編」の成果

贈賞理由:
本書は20世紀の日本を代表する建築家・前川國男(まえかわくにお)に関する非常に充実したモノグラフである。松隈洋氏は前川の戦前の仕事を論じた前著「建築の前夜 前川國男論」の問題意識を継承し、本書で前川の戦後の重要な仕事を余すことなく論じた。多くの作品を実見し、膨大な記録を参照して書かれた本書の根底には、晩年の前川に師事した氏ならではの深い理解と共感があり、また同時に前川國男という一人の人間が生きた時代の詳細な記録ともなっている。

 松隈氏については、同じ著書「未完の建築 前川國男論・戦後編」で毎日出版文化賞を受賞したことを昨年末に書いたばかり。

 上記の記事で書いたのと全く同じ感想になるので、引用する。

 「本に与えられる賞は数多くあるが、建築限定ではない賞に建築分野の本が選ばれたという記憶が筆者(宮沢)にはない。建築について書いた本でもこういう賞の対象になるのだという事実は、筆者もそうだし、若い建築史家やライターの大きな励みになるだろう。」

受賞対象になった「未完の建築 前川國男論・戦後編」は600ページを超える大作

 大臣賞は新人賞よりも歴史が古く、1951年スタート。建築家は過去に10人くらい受賞しているが、建築評論はおそらく初ではないかと思われる(人数が多いので見落としもあるかも)。前にいたとしても大変な偉業である。

 贈呈式は3月17日に都内ホテルで行われるとのこと。新人賞には80万円、大臣賞には120万円の賞金が贈られる。永山さん、松隈さん、おめでとうございます!(宮沢洋)