ひと目で隈研吾! 樹形木組みが取り巻く「IGアリーナ」完成で「名城公園駅」が熱い

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 7月27日に琴勝峰の初優勝で幕を閉じた大相撲名古屋場所。その会場としてお披露目されたのが名古屋市北区名城公園内の「IGアリーナ(愛知国際アリーナ)」だ。隈研吾氏が主宰する隈研吾建築都市設計事務所が外観デザインと内装の一部を手掛けた。

南側外観。左方向に名城公園が広がる(写真:特記以外は宮沢洋)

 個人的な話になるが、名古屋に住む大学時代の友人が「名古屋に隈研吾が設計したすごい体育館ができた」と筆者(宮沢)に連絡をくれた。自称“隈研吾ウオッチャー”なので、もちろんプロジェクトのことは知っていたのだが、「地元の人がすごい」と感じるものになったのだなと安堵し、見に行ってきた。この友人は隈氏のことを「すみけんご」と呼ぶくらいの建築の素人だが、ものの見方は厳しい方の人間だ。

 なるほど、外観のインパクトはなかなかのものだった。

東側の大津通から階段かエスレーター(右)を上ると入り口がある

 愛知県は2021年、愛知県新体育館整備・運営等のBT(Build Transfer)+コンセッション事業の公募入札で、応募した3グループの中から前田建設工業とNTTドコモを代表企業とするコンソーシアムを選んだ。この段階から外観デザインと一部の内装デザインを隈研吾建築都市設計事務所が手掛けていた(コンソーシアムの構成員ではない)。前田建設工業と隈氏は「桐朋学園宗次ホール」(2021年)などでも協働した実績がある↓。

 2021年の事業提案時に、「樹形アリーナ」と表現していた屋外の木組みがほぼそのまま実現している。

東から見る。右手前はサブアリーナ

 2024年2月のプレスリリースによると、RC造(一部S造)、地上5階建て、延べ面積6万3000m²。最大収容人数は1万7000人。設計は前田建設工業・隈研吾建築都市設計事務所・大建設計JV。施工は前田建設工業。

 公式サイトに載っている隈氏のインタビューの中で、隈氏はデザインのテーマを“樹形アーチに包まれたアリーナ”とし、こんなことを語っている(太字部)。

「大きなボリュームをどうやってヒューマンな、人間らしい空間にするか、人間にとって親しみがあって優しい空間にするか、そのためにこの樹形アーチを思いつきました。IGアリーナの敷地は、幸いなことに名城公園と隣接していて緑がすぐ自分のもののようにあるので、そこに樹形アーチを取り付けるとIGアリーナが名城公園の杜と一体化する、杜になる、そういう想いを込めてこの樹形アーチを思いつきました。」

南側の名城公園から見る

「昔の相撲小屋は木組みの屋根の下で相撲をとったわけですよね。あれを現代に蘇らせることができるかもしれないっていうので、建築デザインに自信を持って臨むことができました。」

「樹形アーチには大きく三種類の違いがあって、ぐるっと一周した時にそれぞれの環境とうまく調和してほしいと思って違いをつけました。観客を迎え入れるエントランスのところでは、来てくれた方々の高揚感を高めたいという思いで、大きくせり出した樹形アーチにして、大樹を抜けていく杜の感覚を演出しています。」

エントランス周辺
この形、どう“アーチ”なのかか筆者にはよくわからない
サブアリーナにつながる部分
右がサブアリーナ。左方向に名城公園と名古屋城がある
イメージ図では大断面集成材なのかと思っていたが、実際には鉄骨の側面に木の板を張ったものだった
下部は浮いた状態なので、構造的に建物全体を支える役割はないと考えられる。腐って構造に影響を与える心配はなさそうだが、デザインとしては好き嫌いが分かれそう

「名城公園の緑の杜と調和するような建築にしたいと思っていました。形としては樹形を狙っているんだけれども、それがスケール的にどうなるのかを一番気にしていたんです。実際に見てみたらすごくバランスよく収まっていて、杜というものが人間の手でも作れるということが実感できて、非常に安心してます。」

建築家・隈研吾氏インタビュー「IGアリーナが名城公園の杜と一体化する想いを込めて」(2024.08.08)から引用

 事業提案時のイメージ図では、外部の木組みがエントランスホールの天井にも連続していた。本当はそれも自分の目で見たかったのだが、名古屋行きを決めた時点で大相撲名古屋場所は前席完売だった。以下の2点はプレスリリースより。

(株式会社愛知国際アリーナによる2025年7月13日付けのプレスリリースより)
(株式会社愛知国際アリーナによる2025年7月13日付けのプレスリリースより)

 ところで、建物が姿を表す前の2022年に、「バリアフリーに問題あり」とメディアなどで話題になったことを覚えている人も多いだろう。メインエントランスとなる大階段に、スロープもエスカレーターもなかったことから、「障害者団体などから反発が噴出している」という報道だ(エレベーターは当初計画にもあった)。この議論の結果なのであろう、スロープもエスカレーターも目立つ位置に付いていた。

 特にスロープの方は、長い折り返しが相撲の旗を立てるためのスペースとしてうまく使われていた↓。

隣地の建築も見逃すな!

 入り口階に上ると、建築好きは「あ、あれは!」と気づくだろう。道路を挟んで東隣には「名古屋造形大学」がある。

奥に見える白い建物が「名古屋造形大学」

 幾何学的な白い建築は山本理顕設計工場の設計で、2022年に竣工したもの。この校舎は地下鉄名城線「名城公園駅」の真上にある。

名古屋造形大学の前からIGアリーナを見る

 そして、IGアリーナの南東側にある、スターバックスの入る建物もなんだかカッコいい。

 後で調べてみたら、これはマウントフジアーキテクツスタジオが設計した「Tonarino」というPFI事業による施設(2017年竣工)だった。これから名古屋に行く人は、名城公園駅周辺が要チェックだ。(宮沢洋)

■施設概要
「IG アリーナ」
事業主体:愛知県
管理運営:株式会社愛知国際アリーナ
ネーミングライツパートナー:IG グループ
事業形態:BT+コンセッション方式

所在地:愛知県名古屋市北区名城1-4-1名城公園内)
用途:体育館・観覧場
事業期間:設計・建設:2021年6月~2025年3月 ※2025年4月
維持管理・運営:2025年4月~2055年3月(30年)
設計:前田建設工業・隈研吾建築都市設計事務所・大建設計 愛知国際アリーナ設計共同体

施工:前田建設工業
構造:RC造(一部S造)
階数:5階建て
高さ:建物高さ41m、アリーナ内天井30m
建築面積:26,500m²
延床面積:63,000m²
最大収容人数:17,000人(立ち見を含む)/ 15,000人(着席時)
飲食店舗・ワゴン店舗区画:約30区画