【槇総合計画事務所60年展 会期延⻑のお知らせ】 槇総合計画事務所60年展「Vernacular Humanism/⼈と社会と建築と」は、2026年3⽉10⽇の開幕以来、多くの⽅々にご来場いただき、建築関係者に限らず幅広い来場者の皆さまからご好評をいただいております。こうした反響を受け、本展は会期を延⻑し、2026年5⽉30⽇(⼟)まで開催することとなりました。 また、会期延⻑にあわせて、展⽰内容の⼀部更新を⾏います。会場では、⼀部模型の⼊れ替えに加え、これまでご紹介していなかったアンビルト作品の模型を新たに追加し、槇総合計画事務所の思考と実践を、より多⾯的にご覧いただける構成へと展開します。 さらに本展は、東京建築祭との連携も予定しており、建築を都市の中でひらかれた⽂化として体験していただく機会をさらに広げていきます。

(ここまで2026年4月4日追記)
回顧展を越えた“社会への発信”
第一線で活躍した建築家が他界した後、故人が率いてきたその設計組織はどうなるのか。具体例は挙げにくいが、その人が有名であればあるほど、組織の継承・発展は難しいように見える。だが、この展覧会を見て、「ああ、槇事務所(正しくは槇総合計画事務所)は大丈夫だ」と、勝手な安心感を抱いた。

槇総合計画事務所は3月10日から4月5日(日)→5⽉30⽇(⼟)まで、事務所の創立60周年を記念した展覧会 「Vernacular Humanism/人と社会と建築と」 を「BLUE FRONT SHIBAURA TOWER S」(東京都港区芝浦1-1-1)で開催している。
槇総合計画事務所は、1928年生まれの槇文彦氏が、東京大学工学部建築学科、ハーバード大学大学院、SOMなどを経て1965年に設立した。2021年から亀本ゲーリー氏(1961年生まれ)が代表を務めている。槇氏は2024年6月6日に亡くなり、もうすぐ2年がたつ。
展覧会の会場は、生前に槇氏が設計に関わった「BLUE FRONT SHIBAURA TOWER S」だ。2025年9月1日に開業した。

展覧会を見て驚いたことが2つある。1つ目は、会場が「部屋」として仕切られたスペースではなく、3階のエレベーターホールに面したオフィスロビー・ラウンジであること。


事務所創設以来の145作品を約70mにわたって時系列に一直線に並べている。それを、エレベーターに乗り降りする人が見ていく。もちろん、展覧会を知っていて訪れた建築関係者とおぼしき人もいるが、展示を見ている人の多くは、どう見ても“一般の人”だ。
槇事務所が展覧会をやるとなれば、ギャラリーや美術館がどこでも会場を貸してくれそうに思う。が、あえて巨大オフィスビルの細長いロビー空間で、一般の人に見せることを選んだわけだ。おそらく、仕切られた部屋でやる方が準備(展示の下地やら照明やら)も簡単なはず。この空間の今後の使い方提案を含めての展示なのだろう。

驚いたことの2つ目は、展示されている145作品にほぼテキストの説明がないこと。縦長の説明ビジュアルには原則、写真2点と図面1点。図面は平面だったり断面だったりアクソメだったり、とにかく1点。

模型はあったりなかったりだが、どれも大きめの模型でわかりやすい。

これも明らかに“一般の人”を意識している。それぞれの説明文は、過去に書いたものがいくらでもあると思うが、文章がないので絵巻物のようになんとなく次へ次へと見てしまう。「とにかく60年の流れを全部見てほしい」という意図なのだろう。
展覧会タイトルは「Vernacular Humanism/人と社会と建築と」だ。「人・社会・建築」というフレーズは槇氏が生前よく口にしていたように思うが、この展覧会からは、「築き上げた実績に安住せず、さらに活動を社会に開いていこう」という意気込みが感じられた。

以下は事務所のサイトに載っていた公式の説明文である(太字部)。
槇総合計画事務所は2025年4月に創立60周年を迎えました。私たちは、1960年代から今日まで、都市と建築の関係に向き合いながら、国内外で145のプロジェクトに携わってきました。本展はその歩みを手がかりに、建築という行為を通して私たちが社会に何を届けてきたのか、そしてこれから何を担いうるのかを改めて問い直すものです。
タイトル「Vernacular Humanism」は、創設者の槇文彦が長年重ねてきた建築思想に由来します。建築を単なる造形としてではなく、人間の身体・ふるまい・感情に寄り添い、人々が暮らし、集い、関係を築くための空間を生み出す営みとして捉える姿勢を、60年の実践を通して示します。
展示は、模型・パネル・映像などで構成し、これまでの実践から見出してきた社会における建築のあり方や、環境や人との対話といった視点から紹介します。会場となる〈BLUE FRONT SHIBAURA TOWER S〉は、弊所が設計を担当し2025年に竣工した最新作であり、これまでの思想と技術を凝縮した建築です。その空間で60年の軌跡をたどることは、過去の回顧にとどまらず、現在から次の時代へと視座をひらく試みでもあります。
やはり、「これから何を担いうるのかを改めて問い直す」と、未来を見ている。単なる回顧展ではない。


ところで、全くの私見ではあるが、この「恵比寿東公園トイレ」↓は槇氏の晩年の傑作であると筆者は思う。この小さな建築に、槇氏が都市との関係において試みてきたことのほとんどが集約されているように思える。



この建築については、筆者(宮沢)が4月下旬に上梓する予定の書籍『画文で巡る! 最強TOKYO建築図鑑』で画文のリポートを掲載する予定である。そちらもお楽しみに。(宮沢洋)
■展覧会情報
槇総合計画事務所 創立60周年展覧会 「Vernacular Humanism/人と社会と建築と」
2026年3月10日(火)〜4月5日(日)→5⽉30⽇(⼟)まで延長
BLUE FRONT SHIBAURA TOWER S 3階オフィスロビー・ラウンジ
主催:槇総合計画事務所 冠協賛:野村不動産
特別協賛:清水建設/竹中工務店/小松ウオール工業/LIXIL
協賛:安藤大理石/大林組/鹿島建設/三晃金属工業/大成建設/大和リース/戸田建設/YKK
協力:朝倉不動産/タキヤ/ナカサアンドパートナーズ
開場時間:10:00~19:00 ※最終日は15:00まで 入場料:無料

