磯崎新氏の代表作の1つである「水戸芸術館」で「磯崎新:群島としての建築」が11月1日(土)から始まる。前日の10月31日に行われた内覧会に行ってきた。感想をひと言で言うと、「膨大な磯崎の活動を網羅的に取り上げていてびっくり!」である。


内容を紹介する前に、お礼から。会場の「現代美術ギャラリー」は2階にあるが、そこに上がる階段近くのショップに、拙著『画文で巡る! 丹下健三・磯崎新 建築図鑑』(画・文:宮沢洋/2025年3月/総合資格刊)が置いてあった! しかも入り口の一番いいところに!


すっかり気をよくしたところで、展示を巡ろう。
公式サイトでは、本展の主旨をこう説明している(太字部)。
「群島としての建築」と題した本展では、決して単一の領域にとどまらない磯崎の活動を「群島」の様に構成します。「都市」「建築」「建築物」「フラックス・ストラクチャー」「テンタティブ・フォーム」「建築外(美術)」をキーワードに、建築模型、図面、スケッチ、インスタレーション、映像、版画、水彩画などの様々なメディアを通じて、磯崎の軌跡を辿るとともに、自身が設計した水戸芸術館を舞台に、建築の枠を超えた磯崎の活動を俯瞰的に紹介します。







一応、磯崎について本を書いたことのある筆者(宮沢)は、「群島(アーキペラゴ)」というタイトルを見て、「難しい展示かなあ」とちょっと心配していた。が、全然違った。展示を見るうえで「群島」は気にしなくていい。
と言ってしまうと企画者の皆さんに申し訳ないので、公式サイトにある「群島」の説明はこれ(太字部)。
「群島(アーキペラゴ)」という概念はイタリアの哲学者マッシモ・カッチャーリの著書『L’arcipelago』(1997年)に端を発しています。磯崎はこの概念を構想の手がかりとし、自身の思想や実践における重要な空間概念として積極的に用いるようになりました。
ね、なんだかわからないでしょう。だから気にしなくてよい。たぶん、それが企画チームの狙いでもあると思う。
企画チームが誰かというと、本展の会場構成は日埜(ひの)直彦氏(日埜建築設計事務所)。

ゲストキュレーターとしてケン・タダシ・オオシマ、五十嵐太郎、松井茂の3氏が加わって展示がつくられた。旗振り役は、水戸芸術館現代美術センターの井関悠主任学芸員だ。

井関学芸員の磯崎愛は筋金入りで、磯崎没後の磯崎展はこれが2回目となる。1回目は没後に緊急で企画した水戸芸術館に関する小さな展示だった。
それから2年半。10倍以上に拡大した本展の会場は、「都市」「建築」「建築物」「フラックス・ストラクチャー」「テンタティブ・フォーム」「建築外(美術)」をキーワードに構成されている。
筆者が思うに、これはあえて「廃墟」「切断」「大文字の建築」といった磯崎色の濃いキーワードを外している。
磯崎は建築家であり、名キューレーターであった。自身の作品についても“意味付け”が天才的だった。だが、意味付けが深すぎるために、それが理解できない人にはかえって建築の本来の良さに到達しにくい面があった(師の丹下健三にも似た面がある)。筆者が『画文で巡る~』などという能天気な本を書いたのは、その意味付けをいったん外して「建築を建築として楽しんでみよう」というのが狙いだった。
本展には、それに近い中立性を感じた。構成はほぼ時代順で、網羅的に進む。個々の解説文も、普通に読める。これは、たぶん、安藤忠雄展を見る感じで普通の人も見られる。
磯崎のプロジェクトを「普通に読める」ように書くのは結構大変だ。どうしても磯崎の言説に引っ張られ過ぎてしまう。かといって背景に全く触れないと、ばかみたいな説明文になる(自分でもたくさん書いたのでよくわかる)。
この解説文をベースにいつか出るであろう図録が楽しみだ。


こんなに絵がうまかったのか!!
膨大な展示物のなかで個人的な推しを言うと、とにかく磯崎のスケッチ!


こんなに絵がうまい人だったとは知らなかった。光と影の捉え方が超絶。これは「建築家にしてはうまい」というレベルではなく、画家レベル。
水彩も見事。これらを見て、磯崎のシルクスクリーンの版画シリーズは本当に本人ディレクションなのだということがわかった。


磯崎のスケッチを展示しようと提案したのは、五十嵐太郎氏だそう。五十嵐さん、グッジョブ。

五十嵐氏は、本展に合わせてつくった「水戸芸術館建築マップ」も監修・執筆した。デザインはイスナデザイン。

会期は2026年1月25日(日)までの約3か月間。公式サイトを見たら、会期中に毎日、「水戸芸術館見学ツアー」をやっていることがわかった。コースはエントランスホール → ACM劇場 → コンサートホールATM → 現代美術ギャラリー入口 → 会議場 → 塔(シンボルタワー)。参加費は一般600円。えーっ、劇場内も見られるの? 内覧会でもやってほしかった…。
■「磯崎新:群島としての建築」関連企画
水戸芸術館見学ツアー
2025年11月1日(土)~2026年1月25日(日) 平日14:00~/16:00~、土・日・祝日11:00~/14:00~/16:00~(約45分予定)
https://www.arttowermito.or.jp/gallery/lineup/article_5411.html

行く人はこのツアーも参加すべし。本展は今のところ他都市に巡回する予定はないそうなので、磯崎建築が好きな人はもちろん、「よくわからない」という人も、この機に行ってみて損はない。(宮沢洋)
■磯崎新:群島としての建築
会場:水戸芸術館 現代美術ギャラリー
開催日:2025年11月1日(土)~2026年1月25日(日)
開催時間:10:00〜18:00(入場は17:30まで)
休館日:月曜日(ただし11月3日、11月24日、1月12日は開館)、11月4日(火) 、11月25日(火) 、年末年始(2025年12月27日(土)~2026年1月3日(土))、1月13日(火)
チケット情報
区分 当日 団体(20名以上)
一般 900円 700円
高校生以下・70歳以上 無料
身体障害者手帳/療育手帳/精神障害者保健福祉手帳/指定難病特定医療費受給者証をお持ちの方 無料
【主催】
公益財団法人水戸市芸術振興財団
【協賛】
一般社団法人茨城県建築士会、一般社団法人茨城県建築士事務所協会、柴建築設計事務所、横須賀満夫建築設計事務所、アビック、暁飯島工業、パル綜合設計、国際警備保障、三上建築事務所、根本建築設計事務所、清水建設、andHAND建築設計事務所、田村工務店、あけぼの印刷社、YELL建築設計事務所
【後援】
株式会社アンドエスティHD
【協力】
磯崎新アトリエ、MISA SHIN GALLERY、大分市美術館、アートプラザ、公益財団法人西日本シティ財団、公益財団法人山口きらめき財団、秋吉台国際芸術村、高知県立美術館 石元泰博フォトセンター、The Estate of Jiro Takamatsu、Yumiko Chiba Associates、TANGE建築都市設計、日本図書輸送株式会社、アンドエスティ・ロジスティクス、伊東豊雄建築設計事務所、金箱構造設計事務所、くまもとアートポリス事務局、慶應義塾大学アート・センター、AAarchitects、MORF建築設計事務所、葵建設工業、加藤木工、サントリーホールディングス株式会社、NTTインターコミュニケーション・センター [ICC]
【ゲストキュレーター】
ケン・タダシ・オオシマ、五十嵐太郎、松井茂
【会場設計】
日埜建築設計事務所
【企画】
井関悠(水戸芸術館現代美術センター主任学芸員)
https://www.arttowermito.or.jp/gallery/lineup/article_5359.html

