面白過ぎる! 期間限定の隅田川→神田川クルーズは「橋」を見上げて大スパン構造を思う旅

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 ゴールデンウイーク、いかがお過ごしだろうか。外には一切出ないという方、今日も仕事だという方。そんなあなたに、気分だけでも都心の旅を楽しんでいただこうと思う。「東京建築祭2025」の連携企画として実施される「タイムリープクルーズ─水辺から見る建築の変遷─」の試乗会がめっぽう面白かったので、その写真ルポである。

日本橋にある「日本橋」をくぐる瞬間!(写真:宮沢洋、以下も)

 隅田川河口近くのウォーターズ竹芝桟橋を出て隅田川を北上し、日本橋川を経由、神田川を少し下って和泉橋防災桟橋(秋葉原)に着く1時間半のコース。イベントの副題は「建築の変遷」だが、筆者としては「橋」をベストアングルで見られることに大興奮。橋というものは、自分が渡っているときには形がよくわからないものだ。それが川船からだと、真正面あるいは間近で見られる。

 そして、建築関係者は同じことを考えると思うのだが、橋は「大スパンの構造」のお手本だ。橋を見ると同じ形式の建築が頭に浮かぶ。勝手に副題をつけるなら、「橋の変遷を通して建築の構造を妄想する旅」だろうか。

 では、前置きはこのくらいにして、1時間半の船旅を写真で。

出発は「ウォーターズ竹芝桟橋」、まずは墨田川を上る

正面の超高層ビルが「ウォーターズ竹芝」(設計:JR東日本建築設計)。今回の東京建築祭では「特別展示」が行われる。詳細はこちら
桟橋で船に乗り込む。定員は44名
最初に通過する橋は「築地大橋」。2015年に完成した新しい橋で、スパン145mをシンプルな鉄骨アーチで飛ばしている
築地大橋をくぐると、あっ、旧築地市場がなくなってる! 奥に見える朝日新聞社では東京建築祭でガイドツアーあり(詳細はこちら。ただし満員御礼)
続いては「勝鬨橋」。1940年竣工で、重要文化財。2つの鉄骨アーチの間に跳ね上げ式の開閉橋がある(現在は開閉せず)。ゴジラファンの間では初代ゴジラが壊した橋としても有名
勝鬨橋のアーチ橋部分をくぐる。リベットが萌える! リベットは東京タワー(1958年)などでも多用されているが、職人の技量に左右されるため現在ではほぼ使われなくなった
勝鬨橋をくぐってしばらく行くと、左手に聖路加タワー(1994年)。設計は日建設計と東急設計コンサルタント。この建築は2棟の超高層の間に「橋」が架かっている。ちなみにこの橋は片側がローラーになっており、床の部分はパンタグラフのように伸び縮みする仕組みになっている
続いて「中央大橋」。1994年に完成した典型的な斜張橋。筆者は斜張橋を見ると、磯崎新の「西日本総合展示場」(1977年)を思い出す。知りたい方はこちら
「永代橋」。隅田川と日本橋川が合流するあたりに架かる。震災復興事業で1926年(大正15年)に建てられたアーチ橋。重要文化財。細かく言うと、この形式を「タイドアーチ橋」と呼ぶ。アーチの端部間をタイ(水平の引っ張り部材)で連結することによって大きな水平反力が生じないようにした形式
柱脚のヒンジがかっこいい! ここががっちり固まっていないのは、地盤が軟弱であることから、水平反力を生じさせないため。引っ張り部材を保護する管も見える。1980年代のハイテック建築を思わせる

日本橋川へ。かわいい!と声が上がったフィーレンディール橋

永代橋をくぐった後は日本橋川に左折。川幅が狭くなる。ここで試乗ツアーの皆さんが一番盛り上がった「豊海(とよみ)橋」。1927年(昭和2年)に震災復興橋として建設されたフィーレンディール橋。かわいい!
「フィーレンディール」は梯子(はしご)を横にした構造で、建築でもしばしば用いられる。最近で言うと、坂茂氏が淡路島で設計した「禅坊靖寧」(2023年)は木造のフィーレンディール構造。知りたい方はこちら
首都高速もくぐる。これは東京五輪時につくられた高架で、ある意味「橋」
あっ、これ(中央)は東京建築祭でおなじみの「日証館」! 今年も特別公開されます。詳細はこちら
野村グループの新ビル、ずいぶん出来てきたなあ。正式名は「日本橋一丁目中地区第一種市街地再開発事業」。設計は日建設計とペリ クラーク ペリ アーキテクツ。2026年3月竣工予定
そして「日本橋」をくぐる!
日本橋って本当に組積造なんだ…。日本橋は1911年(明治44年)に建てられた石造2連アーチ橋。重要文化財。普段は当たり前に通っているが、下から見上げると改めてその価値がわかる
しばらく行くと、左手に「パレスサイドビル」(1966年)。日建設計・林昌二の傑作。東京建築祭で特別展示あり。詳細はこちら
おお、これは日建設計東京オフィスでは! こちらも特別展示あり。詳細はこちら。 それにしてもこのクルーズ、日建設計の人は絶対に体験した方がいいな…

神田川へ。筆者の一押しはお茶の水の「聖橋」

神田川へと右折。ここで少し停まり、新旧の鉄道高架の音の違いを聞くという超レア体験。一堂、大盛り上がり
ノーマン・フォスター設計の「センチュリ―タワー」(1991年竣工)。現在は順天堂大学の施設となっている。このビルは、2層1セットの大スパン架構で、下のフロアは上の「橋桁」から吊る構造となっている。何のためかはわからないけれど、かっこいい。バブル期だから実現した建築
あ、お茶の水駅! 左に見える鉄骨構造物は、駅舎の工事の作業スペースを確保するためのものだそう
筆者のテンションが一番上がったのは、お茶の水の「聖橋」。設計者は京都タワーや日本武道館を設計した山田守と、構造エンジニアの成瀬勝武。震災復興橋の一つとして1927年(昭和2年)に完成した鉄骨コンクリートアーチ橋
皆さんが先の景色に注目するなか、筆者だけ振り返ってまで写真を撮る。大アーチの上に小アーチ。「パラボラ(放物線)型」と呼ばれるこの連続アーチは、山田守が逓信省で設計した東京中央電信局の建築にも見られ、山田デザインを象徴するもの
ゴールの秋葉原が近づく。なぜか川辺の人が手を振ってくれる。連続アーチの建物は東京建築祭で特別展示がある「マーチエキュート神田万世橋(旧万世橋駅)」、詳細はこちら
ゴールの和泉橋防災桟橋。ふうっ、面白かった

 いかがだっただろうか。料金は大人5000円。これは海外だったら軽く1万円を超える充実度だ。

実は和泉橋防災桟橋からウォーターズ竹芝桟橋に戻る川下りコースにも試乗した。上りとは別ルートなので(竹芝の近くのみ重複)、往復で乗っても損はないと思う。(宮沢洋)

【東京建築祭連携企画】タイムリープクルーズ─水辺から見る建築の変遷─
共催:東京建築祭実行委員会、株式会社ジール、一般社団法人竹芝タウンデザイン

後援:千代田区
ガイド JR東日本社員
参加費 大人(中学生以上) 5,000円 / 小人(4歳~小学生以下) 3,500円 / 乳幼児(3歳以下) 無料(要申込)
運営日:5/17(土)~25(日) 期間中毎日6便
運行ダイヤ:
1便:航行Aルート:ウォーターズ竹芝桟橋 発 10:00 →和泉橋防災桟橋 着 11:30
2便:航行Bルート:和泉橋防災桟橋 発 12:00 →ウォーターズ竹芝 着 13:15
3便:航行Aルート:ウォーターズ竹芝桟橋 発 13:30 →和泉橋防災桟橋 着 15:00
4便:航行Bルート:和泉橋防災桟橋 発 16:00 →ウォーターズ竹芝 着 17:15
5便:航行Aルート:ウォーターズ竹芝桟橋 発 17:30 →和泉橋防災桟橋 着 19:00
6便:航行Cルート:日本橋桟橋 発 20:00 →ウォーターズ竹芝 着 21:15 
※6便目のみ日本橋桟橋から出航
定員:各便44名

3ルートの詳細:
・航行Aルート (1便3便5便)
ウォーターズ竹芝桟橋 → 秋葉原 和泉橋防災桟橋  (隅田川、日本橋川経由、神田川下りのルート)

・航行Bルート (2便4便) 
秋葉原 和泉橋防災桟橋 → ウォーターズ竹芝桟橋  (神田川下り、隅田川下り、朝潮運河経由)
・航行Cルート (6便)
日本橋桟橋 → ウォーターズ竹芝桟橋  (日本橋川下り、隅田川下り、朝潮運河経由)
詳細・申し込み:https://www.zeal.ne.jp/plan/timeleap/