日本橋高島屋S.C.本館の高島屋史料館TOKYO4階展示室で「やっぱりゾウが好き――デパートの屋上にゾウがいた!」が3月13日から始まった。会期は8月31日まで。


3月11日の午前中に「OMO7横浜 by 星野リゾート」(記事はこちら)を見た後、ダッシュで日本橋高島屋の内覧会に駆け付けた。どちらも、サブテーマが「村野藤吾」なのである。
まずは公式サイトの公式説明から。
戦後間もない1950〜1954年、日本橋高島屋の屋上には「たかちゃん」という1頭のゾウが暮らしていました。上野動物園に引き取られるまでのわずか4年間――それは短い時間でしたが、敗戦から立ち上がろうとする日本にとって、その存在は決して小さなものではありませんでした。賢くて優しく、芸達者だったたかちゃんは、多くの子どもたちに愛されました。

それにしても、なぜ、デパートの屋上にゾウなのか。本展では、たかちゃんを起点に、ゾウという動物が日本社会でいかなる意味を与えられてきたのかをたどります。
日本に、ゾウはどのように現れたのでしょうか。初めは象牙でした。ついで、ゾウに乗る普賢菩薩像や涅槃図によってゾウの姿が知られるようになります。伊藤若冲や長沢芦雪が描いたゾウはめでたい吉祥図でした。河鍋暁斎は本物のゾウを目にしつつ、楽しい戯画へと転換しました。
江戸時代に将軍吉宗に献上されたゾウが一大ブームを巻き起こしたことで、山王祭に巨大なゾウのつくりものが登場しました。幕末からは、ゾウが見世物やサーカスの、そして動物園の人気者となりました。ところが戦時下で、「猛獣処分」により多くのゾウの命が奪われます。ゾウもまた、戦争とは無縁でありませんでした。
だからこそ、戦後まもなく日本橋高島屋の屋上へやってきたたかちゃんは「平和の使者」として迎えられたのです。まど・みちおさんが歌詞を書いた「ぞうさん」は、当時のゾウ人気から生まれた童謡です。

本展では「ゾウに乗る」「ゾウを洗う」「ゾウを贈る」「ゾウを曳く」「ゾウを操る」「ゾウを食べる」「ゾウが招く」をキーワードに、ゾウと日本人の歴史をひも解きます。時代とともに、ゾウに託したものが変わってきたのです。
デパートの屋上でたかちゃんと撮った写真を一般公募したところ、130名を超える方々から貴重な写真をお寄せいただきました。これらの写真からは、ゾウのたかちゃんが戦後復興期に平和のシンボルであったこと、人々に希望を与える存在であったことをうかがい知ることができます。たかちゃんのお骨も初の里帰りを果たし、等身大のバルーンも登場します。現代版「ゾウのいるデパート」で、「平和の使者」たかちゃんに出会っていただけると幸いです。

ここで「たかちゃん」と呼んでいるのは愛称で、名前は「高子」。高島屋の「高」を取ったものだ(正式にはどちらも旧字の「髙」)。
長々と公式文を引用したのにどこにも村野藤吾は出てこない。いや、だからこそ、このBUNGANETで報じなければならない。
象の展示はもちろん誰もが楽しめるが、建築好きはいったん屋上に上ってこれ↓を見た後に、4階の展示室を見るべし。

村野藤吾が設計した増築部のエレベーターの塔屋だ。象の形なのである。これは村野藤吾ファンの間では有名。もちろん筆者も知っていて、これがこの展覧会でどう描かれるのか興味津々で内覧会に行った。

て国の重要文化財に

期待通りであった。本展でのこの塔屋に関する説明を見て、筆者の「ええっ、そうだったのか」が2つ。これまで何度か日本橋髙島屋について書いたことがあったが、どちらも知らなかった。

1つ目は、かつては「象の鼻」があったこと。ああ、本当だ。現在は切られているが、根元は残っている。

当時の図面がなく、何の機能なのかわからないらしい。何の機能もなかったとしたら、村野は鼻のためだけに塔を建てたことになる。おそるべし村野。

2つ目は、村野が象の塔屋を建てた後に高子の寄贈(上の動物園行き)が決まったということ。塔屋の完成も1954年なので、筆者はこれまで、「村野は象の高子の思い出として、屋上に象の背中を思わせる塔屋を建てた」と書いてきた。これは間違いだったかもしれない。

高子年表をじっくり見ると、塔屋の竣工が4月29日で、寄贈が決まったのが5月7日なのだ。職員が5月に寄贈を聞いて「食事もできない」ほどショックを受けたと書かれているので、村野がそれを先に知っていたとは考えにくい。


村野は単に高子人気にあやかって象の形にしたのかもしれない。だが、もしかしたら村野は、大きくなった高子を見て、早晩どこかに移送されると想像し、「高子の思い出として」この塔屋を設計したのかもしれない。だとしたら恐るべし村野。
最後になるが、この塔屋がらみの展示物は、展示デザイン担当の中山英之建築設計事務所が自ら作成したという。高子愛に加えて村野愛がにじみ出ている。


屋上を見に行く人は、帰りはぜひ階段で。村野の増築部の階段に、高子が階段を下りた足跡マーク。グッジョブ!

ああ、この展覧会、参加したかったなあ。いえ、独り言ですよ海老名さん。
なお、「日本橋高島屋S.C.本館」については、筆者(宮沢)が4月下旬に上梓する予定の『画文で巡る! 最強TOKYO建築図鑑』(仮題)で画文のリポートを掲載する予定である。そちらもお楽しみに。(宮沢洋)
やっぱりゾウが好き――デパートの屋上にゾウがいた!
会期 :2026年3月13日(金)~8月31日(月)
開館時間 :午前10時30分〜午後7時30分
入館料 :無料
場所 :高島屋史料館 TOKYO 4階展示室
(東京都中央区日本橋2-4-1 日本橋高島屋S.C.本館)
休館 :第2⽕曜(祝⽇の場合は開館し、翌⽇休館)、8月19日(水・全館休業)
主催 :高島屋史料館 TOKYO
監修 :木下直之(静岡県立美術館館長、東京大学名誉教授)
グラフィックデザイン :原田祐馬、山副佳祐(UMA/design farm)
施工・設営 :HIGURE 17-15 cas
展示デザイン :中山英之建築設計事務所
公式サイト https://www.takashimaya.co.jp/shiryokan/tokyo/exhibition/

