香川県さぬき市が同市の国立公園「大串自然公園」内に建設していた「時の納屋」が6月30日(日)にオープンする。設計を担当したのは、2016年に「竹林寺納骨堂」で日本建築学会賞(作品)を受賞した堀部安嗣氏。「時の納屋」は、意外にも堀部氏にとって“初の公共建築”だという。


筆者(宮沢)の知る限り、「時の納屋」はまだ建築系メディアには載っていない。オープンもまだ2週間後なので一般メディアにもそれほど情報が出ていないだろう。なぜそんな最新情報をつかんでいるかというと、Office Bungaのメンバーである長井美暁が『堀部安嗣作品集Ⅱ』(平凡社、2024年2月刊)の編集を担当していたからだ。現在は2024年内に刊行予定の『Ⅲ』に取り組んでいる。そんなこともあり、筆者も建設中から堀部氏のこの新作に注目していた。
別の用事に絡めて、開業の準備に追われる「時の納屋」を見学させてもらった。



機能としては、大串自然公園の休憩場所を兼ねた飲食施設(客席約30席)である。木造、地下1階・地上1階建て、延べ面積198m2。施工は菅組。着工時の朝日新聞の報道によると、「周辺整備も含む総事業費は約2億9千万円で、うち国の交付金約9千万円、前澤友作氏らからの企業版ふるさと納税約2500万円を充てる」とのこと。
建築の印象は、「堀部さんらしい!!」 どこがどう「らしい」のかは写真から読み取っていただきたい。






ランドスケープの設計には、「アクロス福岡」などで知られる田瀬理夫氏が協力している。


建築やランドスケープがいかに素晴らしくても、飲食施設は肝心の飲食が良くなければ、リピーターは来ない。つまり、寂れる。6月末に開業する飲食施設(こちらも名前は「時の納屋」)は運営するのは、さぬき市SA公社だ。さぬき市と民間企業が出資する第三セクターの法人で、近くの「さぬきワイナリー」や野外音楽広場「テアトロン」なども運営する。

「時の納屋」の所長となった満濃孝氏は、さぬき市からの出向職員。自分の菓子づくりの趣味を生かすためと、反対の声もあったこのプロジェクトを後世に意味のあるものにするために、自ら手を挙げて出向したという。満濃氏が実にアツい人で、すっかりファンになってしまった。筆者と同世代だが、こんなインスタグラムのページ→をつくれるってすごいセンス…。



時の納屋の近くには、野外音楽広場「テアトロン」がある↓。 香川の建築家、山本忠司(1923年~1998年)の設計で1991年に完成した。こちらも併せて見ることを忘れずに。(宮沢洋)
