たぶんこれが2025年最後の記事である。2025年もいろいろな建築を取材させてもらったが、思い起こすと、やっぱり「大阪・関西万博」の印象が強い。

開幕前に5回行った。開幕後は自慢するほど行けなかったが、それでも2回行った。延べ1週間、1つの場所を取材した経験は過去にない。
年の瀬なので、万博がらみで筆者が気になった最近のニュースを拾ってみた。
◆万博収支、最大370億円の黒字見通し…入場券に加え「ミャクミャク」グッズ売り上げ好調(2025/12/25、読売新聞オンライン)
当初約2207万枚とした入場券の販売枚数は、2225万1054枚で確定したという。目標の2300万枚には届かなかった。それでも公式キャラクター「ミャクミャク」のグッズなど公式ライセンス商品の売り上げが好調。10月末時点で1246億円に上る。収入運営支出は少なくとも1110億円で、黒字は最大で370億円に上る見込みという。
収益イベントとしては、まずまずの成功だったのだろう。建設に税金が投入されているので、民間だったらあり得ない事業(投資分を返すべき)だが、赤字でさらに税金を投入するという事態は避けられてよかった。
「建築」の視点ではどうか。目玉の「大屋根リング」を含め、ほとんどの施設は「3R」や「サーキュラー」をテーマにしており、本当に目標を達成できたのか(できるのか)は、今がまさに正念場だ。ニュースを拾ってみる。

大屋根リングの再利用決定はまだ1割未満(残置を除く)
◆「閉幕後も上ってもらって…」大屋根リング 北東約200メートルを“市営公園”として管理へ(2025年9月16日、日テレNEWS)
大屋根リングを残すかどうか問題は、結局どうなったのかよくわかっていなかったのだが、調べたところ、大阪市が一部を「市営公園」として管理する方向で調整することが決まった、という9月中旬のニュースから進展はないようだ。一人の建築好きとしては「一部でも残ってうれしい」と思う気持ちの半面、もともと恒久設置を前提としていない木造建築をどう残すのか(今から表面に耐食性向上の処理ができるのか、いっそガラスなどで覆うのか…)、今後なかなかに大変だろうなと思う。
「200m残す」ということは、全長約2㎞の10分の1だ。残りの9割はどうなるのか。
◆大屋根リングの木材、27年横浜園芸博の「木造60メートルタワー」に再生へ…鹿島建設「万博の思いを横浜に」(2025/10/30、読売新聞オンライン)
鹿島は10月29日、大屋根リングの木材を、2027年に横浜市で開催される国際園芸博覧会(横浜園芸博)で活用すると発表した。同社が出展する高さ約60mの木造タワー「KAJIMA TREE(仮称)」の部材として再生させる。使用する木材は大屋根リングに使われた木材のうち約3%分に当たるという。

大屋根リング全体の木造の量は約2万7000㎥。「約3%」ということは810㎥前後と考えられる。
詳細の発表は今後ということだが、一度使った木材を縦方向に積み上げるという構造的チャレンジは注目だ。鹿島は大屋根リングの施工には参加しておらず、その意味でも拍手を送りたい。
◆大屋根リングの木材、そのまま能登の復興住宅に活用 坂茂さん設計(2025年10月18日、朝日新聞オンライン)
石川県珠洲市は大屋根リングに使用した木材の一部を無償で譲り受け、坂茂建築設計の坂茂氏らの支援の下で災害公営住宅(復興住宅)の建設資材として活用する。再利用が決まっている木材は、42㎝角の柱や、42㎝×21㎝の梁など約1500本(約1200㎥)。復興公営住宅は1棟あたり9世帯が入る設計で、柱に22本、梁に50本の再利用木材を使う予定だという。
約1200㎥ってけっこうな量だ。鹿島のタワーよりも使用量は多い。こういう話題へのコミットの速さはさすが坂氏。
◆万博の大屋根リング、松山市で再利用へ 来年5月の全国植樹祭式典で(2025年10月23日、朝日新聞オンライン)
◆大屋根リングのCLTパネルは愛媛に「里帰り」(2025.11.06、日経クロステック)
愛媛県は、2026年5月17日に松山市の県総合運動公園をメイン会場に県内で開かれる第76回全国植樹祭の式典で、大屋根リングの木材の一部を再利用する。大屋根リングでは、長さ8.2m×幅2.4m×厚さ9cmのCLTパネル(直交集成板)を約2700枚、屋根材や床材として使用している。そのうちの18枚を譲り受け、天皇、皇后両陛下が歩く道や出演者が登壇するステージの整備でリユースする。愛媛県は25年6月に「ミャク市!」での公募に手を挙げ、CLTパネル18枚を無償で譲り受けることが決まった。
筆者が調べた限りでは、再利用先として公表されているのは、この3件だけだ。足しても1割に満たない。
「ミャク市!」頑張れ!
これらを調べていて気になったのが、「ミャク市!」という言葉。これは何なのか。
ミャク市の正式名称は「万博サーキュラーマーケット ミャク市!」。大阪・関西万博で使用した施設・設備・什器の移築やリユースを、ウェブを介したマッチングで実現するプロジェクトだ。(サイトはこちら)

実は20年前、2005年の愛・地球博でも閉幕間際の9月16日(閉幕は9月25日)に「リユース日本館」というWEBサイトが立ち上がった(そのお知らせはこちら)。「日本館の建築・展示資材のリユースを広く当サイトで公募します」と謳っていたが、どんな募集がありどんな結果だったのか、今調べてもほとんどわからない。
さすがにスタートが遅すぎたのでは…と今回の万博関係者も思ったのか、ミャク市は開幕前年の2024年8月6日に立ち上げを発表。2025年初頭からスタートしている。事務局は博覧会協会の企画局持続可能性部だ。
このサイトはパビリオンの建築物や建材だけでなく、小さな備品も出品対象としており、「ミャクミャクのイラストが入ったマンホールが個人で買える!」と話題になったりもした。
◆トイレ1基1円?万博で注目の品も 閉幕に向けて「ミャク市」に続々(2025年10月1日、朝日新聞オンライン)
仕掛け人である齋藤精一氏(2025年大阪・関西万博EXPO 共創プログラムディレクター)らがミャク市立ち上げの奮闘を振り返る以下の座談会はリアルで面白い。
◆“ボルトから大屋根リングまで”をリユース――ミャク市の仕掛け人3人が描く壮大な循環型経済の未来(大和ハウス工業公式サイト)
この座談会のなかでも、「問題点は山積み…制度や法律の壁」と語られており、やっぱりそうなんだろうな、と思う。
とはいえ、マッチングの結果が思わしくなかったとしても、とにかく「すべてを公表」することを望みたい。現状のサイトでは、募集が行われた記録は見られるものの、結果がほとんどわからない。例えば、愛媛県が大屋根リングのCLTを再利用するという前述の話題も、「ミャク市! 大屋根リングのリユース2025 年7月31日期公募について」という募集記事は見つかるが、愛媛県が手を挙げたという結果は見つけられなかった(正式契約前だからかもしれないが)。
大屋根リングのリユースについていえば、「おそらく今回が最後」と目されている第2回公募が10月17日~11月6日に行われたが(リリースはこちら)、これは募集記事自体がミャク市サイトで見つからない。もちろん、結果も見つからない(予定では2025年12月下旬に有償譲渡及び無償譲渡にかかる契約候補者の決定、となっている)。
閉幕してしまったサイトの面倒を見るスタッフがいないのでは…と心配になる。
聞くところによると、他の施設ではミャク市を通さずに再利用先が決まっていくケースもかなりあるようだ。例えば、最近発表された下記の件はミャク市経由ではないらしい。

◆KUMA LAB・東京大学と産学協働で大阪・関西万博 日本政府館の解体材再利用に取り組む「旅するCLT」発表(2025年12月18日、積水ハウス)
日本館で使ったCLTパネルを、「一度きりの再利用ではなく、建築物等の複数回の解体・再利用を繰り返し、旅をするようにそれらが全国を巡回することを目指す」という発表だ。積水ハウスの寄付によって東京大学総括プロジェクト機構内に設立した「国際建築教育拠点(SEKISUI HOUSE – KUMA LAB)」、東京大学大学院農学生命科学研究科の青木謙治教授、東京大学大学院工学系研究科の権藤智之准教授とともに取り組む。
本サイトですでに報じているが、建築家の永山祐子氏も、ミャク市とは関係なく自力で再利用先を見つけ出した。
「EARTH MART」や「null2」にはこんな動きがある。
◆大阪・関西万博 シグネチャーパビリオン「EARTH MART」茅の贈呈式を行いました。(2025年12月2日、大阪府公式サイト)
◆万博「null²」横浜へ、27年園芸博で展示…違った形で計画「ヌル以上にかっこいいものに」(2025/12/02、読売新聞オンライン)
ミャク市のサイトでは、こうした話題も漏らさず拾って「ニュース」としてアップしてほしいのである。筆者のような個人には到底網羅は無理だし、公平性に欠ける。公式の場で情報をまとめておかないと、成功例も失敗例もフィードバックされず、イベントの度に毎回、「問題点は山積み」という議論が繰り返されることになる。現状を見るに、期待できる場はミャク市しかない。利益が370億円出たなら、1億円くらい使っても、結果の後追いと発信にマンパワーを割くべきだと筆者は思うのである。ミャク市チーム、頑張れ!(宮沢洋)
