空前の建築展ラッシュ総まくり、「2つの展覧会を見比べる」この夏だけの鑑賞法のススメ

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 今年の夏は、日本の歴史上、最も建築展が多い夏だ。間違いない。個々の展覧会はすでに当サイトでリポートしているので、この記事では「2つの展覧会を対比的に見る」というぜいたくな鑑賞法を提案したい。なんとなく見るよりも、2つを見比べることで自ずと思考が深まる。

この夏、見ることができる展覧会の告知用ビジュアルを並べてみた。こんなコラージュができるって、「建築を社会に開く」がモットーの筆者(宮沢)としてはかなり感慨深い

 まずはこの2つから。

①国立近現代建築資料館「日本の万国博覧会」vs.②ギャラリー・間「新しい建築の当事者たち」

 どちらも無料で見ることができる展覧会である。片や国立の資料館、片や民間の老舗ギャラリー。たまたまだと思うが、前者は日本の過去の博覧会、後者は現在開催中の大阪・関西万博がテーマだ。国立近現代建築資料館からTOTOギャラリー・間へは千代田線で1本、20分ほどで移動できる。両施設をハシゴすれば、「1970大阪万博」→「1975沖縄海洋博」→「1985つくば科学博」→「1990国際花と緑の博覧会」→「2005愛・地球博」→「2025大阪・関西万博」という完璧な流れを体験できる。

「日本の万国博覧会 1970-2005 第2部『EXPO’75以降 ひと・自然・環境へ』」@文化庁国立近現代建築資料館(7/24~10/19)

「新しい建築の当事者たち」@TOTOギャラリー・間(7/24~10/19)

③森美術館「藤本壮介の建築」vs.④横須賀美術館「山本理顕展」

 7月2日に六本木ヒルズの森美術館で始まった藤本壮介展は、模型の多さ(計約1200)と見せ方の多様さですでに大きな話題を呼んでいる。これと見比べたいのは、7月19日に横須賀美術館で始まった山本理顕展だ。両会場の移動に2時間ほどかかるので、2日に分けて見たいが、急げば1日で見られないことはない。

 藤本壮介氏と山本理顕氏といえば、大阪・関西万博開幕前の論争が記憶に新しい。山本展では万博がらみの展示はないが、展示をじっくり見ていくと、論争は起こるべくして起こったのだなということがわかる。筆者が思うに、それは「人間をどういう存在として捉えているか」の違いではないか。でも結局、「人間は変わる」「建築で人間を変えていく」こと前提としていて、似ている部分もかなりあるように感じた。

藤本壮介の建築:原初・未来・森@森美術館(7/2~11/9)

「山本理顕展 コミュニティーと建築」@横須賀美術館(7/19〜11/3)

⑤⑥渋谷ストリーム&紀尾井清堂「建築家・内藤廣」vs.⑦金沢建築館「谷口吉生の建築」

 同じように“奇をてらわない”建築をつくる谷口吉生氏と内藤廣氏だが、プロセスをほとんど語らない谷口氏と、微妙な話まで含めて語り尽くす内藤氏とで、展覧会の見せ方は対照的。でも、谷口氏にも心の中に葛藤はあるだろうし、内藤氏にも「言えない葛藤」はたくさんあるはず。ともに、手描きのメモがそれを読み解く扉になる。

「建築家・内藤廣 赤鬼と青鬼の場外乱闘 in 渋谷」@渋谷ストリーム ホール(7/25~8/27)

「建築家・内藤廣~なんでも手帳と思考のスケッチ in 紀尾井清堂」@紀尾井清堂(7/1~9/30)

「谷口吉生の建築―静けさと豊かさの創造―」@谷口吉郎・吉生記念金沢建築館(7/6~2026/1/18)

凱旋展や海外、今後開催予定の建築展も参考まで

 筆者はまだ行くことができていないが、丹下健三が育った愛媛県今治市の3会場で、丹下の功績を伝える展覧会が8月2日から始まった(詳細はこちら)。そのうちの1つは今治市玉川近代美術館で9月28日まで行われる「丹下健三と隈研吾 東京大会1964/2020の建築家 パリから今治へ―凱旋帰国展」で、これは凱旋する前のパリの展示の様子を当サイトで紹介したので参考まで。

 日本ではないが、イタリア・ヴェネチアでは「ヴェネチア・ビエンナーレ国際建築展2025」が11月23日まで開催中。

 そして日本ではこの後、10月4日から11月30日まで開催される「ひろしま国際建築祭」の一環として、尾道市立美術館で「ナイン・ヴィジョンズ:日本から世界へ 跳躍する9人の建築家」(詳細はこちら)が、ふくやま美術館で「後山山荘(旧・藹然荘(あいぜんそう))の100年とその次へ|福山が生んだ建築家・藤井厚二」(詳細はこちら)が行われる。藤井厚二展の監修・会場構成は福山出身の建築家、前田圭介氏(UID)。筆者もイラストでこの展覧会で参加する。

 また、11月1日から年明けにかけて、水戸芸術館で「磯崎新展(仮称)」(詳細はこちら)も開催予定。忘れないようカレンダーに書き込んでおきたい。(宮沢洋)