パリ日本文化会館で「丹下健三と隈研吾」展が5月2日開幕、代々木競技場の世界遺産登録に向け世界にアピール

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 うーん、これほど円安でなければ見に行きたかった…。5月2日、フランス・JFパリ日本文化会館で、「KENZÔ TANGE – KENGO KUMA Architectes des Jeux de Tokyo」(邦訳「丹下健三と隈研吾 東京大会の建築家たち」)が始まった。この展覧会は、2024年のオリンピックの開催を直前に控えたパリで、2度の東京オリンピック(1964年と2021年)を象徴する競技場を設計した建築家、丹下健三と隈研吾の足跡をたどるもの。キュレーターは建築史家の豊川斎赫氏(千葉大学准教授)が務める。国際交流基金 (JF)と国立代々木競技場世界遺産登録推進協議会の共催で、会期は2024年5月2日(木)から6月29日(土)まで。

「丹下健三と隈研吾 東京大会の建築家たち」展示風景 2024年 撮影:瀧本幹也 提供:国際交流基金、G.Y.S.C.

 開幕に先立ち、4月30日(火)、JFパリ日本文化会館の大ホールで隈研吾氏が登壇するオープニング記念シンポジウムが開催された。モデレーターを務めた建築史家の山名善之氏(東京理科大学教授)からお借りした写真でその雰囲気をお伝えする。

隈研吾氏(写真提供:山名善之氏、以下の講演写真も同じ)
宮本洋一氏(清水建設会長)
丹下憲孝氏(丹下都市建築設計会長)
長谷川香氏(東京藝術大学准教授)
山名善之氏(東京理科大学教授)

 ちなみに隈氏は、代々木競技場の世界遺産登録を目指して2020年11月に設立された一般社団法人国立代々木競技場世界遺産登録推進協議会の代表理事を務めている。山名氏もその設立シンポジウムに参加していた。(下記の記事を参照)。

 そして、キュレーターの豊川斎赫(さいかく)氏(千葉大学准教授)はこんな人↓だ。

丹下健三が設計した「広島子供の家」(1953年)について説明する豊川氏。コロナ禍の2021年7月に撮影(写真:宮沢洋)

 豊川氏は丹下健三研究の第一人者で、ずっと丹下の隣にいたのではないか(1973年生まれなのに…)と思うほど丹下に詳しい(下記の記事を参照)。

 おそらくこの面々を見ると、代々木競技場の世界遺産登録を一歩前に進めたいという意図もあるのだろう。なので、今からパリに行く決断をする人は少ないと思いつつ、応援の意味でこの記事を書いている。

競技場と対比して住宅も展示、浮かび上がる共通点と差異

 今回の展覧会については、残念ながら会場を見ていないので、プレスリリースの説明文と広報用写真でお伝えする。(ここまで宮沢洋)

「丹下健三と隈研吾 東京大会の建築家たち」会場建物入口 2024年 撮影:瀧本幹也 提供:国際交流基金、G.Y.S.C.

「KENZÔ TANGE – KENGO KUMA Architectes des Jeux de Tokyo」(邦訳「丹下健三と隈研吾 東京大会の建築家たち」)

 丹下健三が設計し、二度のオリンピックの舞台であり、そのレガシーを代表する建築となった国立代々木競技場。

 そして隈研吾が設計し、2021年オリンピックのメイン会場(陸上競技や開会式・閉会式)として新たなレガシーとなるであろう国立競技場。

「丹下健三と隈研吾 東京大会の建築家たち」展示風景 2024年 撮影:瀧本幹也 提供:国際交流基金、G.Y.S.C.

 どちらもオリンピック施設である点では共通するものの、キュレーターの豊川は全く異なる時代背景で建設された二つの競技場を比較対照することの難しさを認めます。しかしながら、巧みに織り込まれたキーワードを通して、本展来場者が代々木競技場の現代性を再認識すると同時に、国立競技場に秘められた魅力を発見することができるよう構成しています。

「丹下健三と隈研吾 東京大会の建築家たち」展示風景 2024年 撮影:瀧本幹也 提供:国際交流基金、G.Y.S.C.

 また、本展は、競技場と最も対極にあるとも言える住宅にもフォーカスを当てています。意匠・構造・設備の高度な統合が必要とされ、巨大な公共建築である競技場と対比して、施主の個性や設計者の感性が反映されやすい住宅を通して、二人の建築家の共通点と差異を明らかにしているのも本展の見どころの一つです。

 さらに、丹下と隈がフランスから受けた影響やフランスでの活動を振り返ることも試みます。丹下がル・コルビュジエやシャルロット・ぺリアンらから受けた影響、また隈がフランスで手掛ける多様なプロジェクトを俯瞰することで、この試みは、本展の来場者が二人をより身近に意識するきっかけとなるのみならず、戦後日本建築の黎明期から現代までのプロセスを辿ることに繋がるでしょう。

 本展には、数多くの建築模型とともに、日本を代表する写真家らが撮影した写真が展示されており、これによって来場者は二人の建築家の軌跡を手に取るように感じることができます。本展が、フランスのみならずパリを訪れる世界中の人々にとって、オリンピックが遺すレガシー、ひいては建築が未来に遺すメッセージについて考える契機となることを期待します。

■展覧会概要
会期:2024年5月2日(木)~6月29日(土)
会場:JFパリ日本文化会館(101 bis Quai Jacques Chirac, 75015 Paris, フランス)
キュレーター:豊川 斎赫(千葉大学准教授)

主催:独立行政法人 国際交流基金(JF)、JFパリ日本文化会館
共催:一般社団法人 国立代々木競技場世界遺産登録推進協議会(G.Y.S.C.)
協賛:株式会社大林組、清水建設株式会社、大成建設株式会社、三井不動産株式会社、株式会社イトーキ、LVMHウォッチ・ジュエリージャパン株式会社 ショーメ、LVMH モエヘネシー・ルイヴィトン・ジャパン株式会社、鹿島建設株式会社、クリスチャン ディオール合同会社、一般財団法人日本建築センター、小松マテーレ株式会社、株式会社佐藤秀、住友林業株式会社、大光電機株式会社、大日本印刷株式会社、太陽工業株式会社、大和ハウス工業株式会社、大和リース株式会社、株式会社竹中工務店、 株式会社丹青社、東急グループ、東急建設株式会社、 戸田建設株式会社、株式会社乃村工藝社、野村不動産株式会社、株式会社長谷工コーポレーション、前田建設工業株式会社

助成:公益財団法人大林財団
特別協力:内田道子、丹下都市建築設計
協力:隈研吾建築都市設計事務所、高知県立美術館 石元泰博フォトセンター、瀧本幹也写真事務所、
TOPPAN株式会社、独立行政法人日本スポーツ振興センター、日本デザインセンター、パリ日本文化会館支援協会
後援:在フランス日本国大使館