室内に「スカイハウス」再現!菊竹後期の傑作「島根県立美術館」で菊竹清訓展開幕

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 自粛期間でなかったら、開幕初日に駆け付けたのに…。島根県立美術館で1月22日から「菊竹清訓 山陰と建築」が始まった。報道というものは本来、自分の目で見て咀嚼(そしゃく)して書くのが基本だが、こういう状況なので、お借りした写真で会場の雰囲気をお伝えしたい。

こ、この正方形の空間は…(会場写真:山本大輔)

 会場の写真を撮影されたのは山本大輔さん。ご存じだろうか。山本さんは島根県の職員で、山陰のモダニズム建築にめっぽう詳しく、「大建築 友の会」のコアメンバーである。今回の菊竹展にも深く関わっている。

 自分で言うのも何だが、私(宮沢)も菊竹建築についてはけっこう詳しい。そもそも文系出身の私がこれほど建築好きになったのは、安藤忠雄と菊竹清訓の2人の大建築家のおかげなのである。菊竹が2011年12月に亡くなった後には、その喪失感を埋めるため、国内に現存する菊竹建築をほぼ見て回り、一周忌の直前に「菊竹清訓巡礼」という書籍(磯達雄との共著)を発刊した。会社のミッションとは関係なく、1冊ほぼ書き下ろしという、今考えてもすごい衝動でつくり上げた本だ。(紙版は絶版となっているが、電子書籍は今も読める→こちら

宮沢が描いた島根県立美術館の日没。我ながらうまく描けた!

 この本の表紙になっているのが、本展の会場である島根県立美術館(1998年竣工)だ。菊竹後期の傑作である。私はこの建物の遠景(宍道湖越しに見える大屋根、下の写真)は、SANAAに影響を与えたに違いないと思っている。話が脱線し過ぎるので、この話はいずれまた。

(写真:磯達雄)

写真で見る菊竹展@島根県立美術館

 さて、菊竹展である。会期は2021年1月22日(金)~3月22日(月)の2カ月間。コロナ対策のため日時予約制だ

 展示を見ておらず詳しくは書けないので、とにかく山本大輔さんの写真でどうぞ。

会場入り口(会場写真:山本大輔)
導入部(会場写真:山本大輔)
手前の模型は島根県立図書館(1968年)。これも傑作。松江に行くなら実物をぜひ見てほしい。場所は松江城のお堀端(会場写真:山本大輔)
山陰といえば、やっぱり東光園(1964年、米子市)(会場写真:山本大輔)
右は萩市民館(1968年)。これも唯一無二のデザイン。できれば実物を見てほしい!(会場写真:山本大輔)
そして、これはなんと「スカイハウス」(1958年)の居間の再現ではないか! 屋根を構成する4枚のシェル面を膜材で表現しているようだ。やるなあ…(会場写真:山本大輔)
再現したスカイハウスの屋根の下(会場写真:山本大輔)
(会場写真:山本大輔)

 ああ、見たい。

 行かなくても見られるオンラインパネルディスカッションも近日中にアップされる予定。以下、美術館のサイトより。

オンラインパネルディスカッションⅠ・Ⅱは、YouTubeにて近日公開予定です。
配信日が決まりましたらご案内いたします。乞うご期待!

◆オンラインパネルディスカッションⅠ
「菊竹清訓のこころと手の記憶/山陰の建築への挑戦」
現在活躍する菊竹清訓建築設計事務所元所員の建築家たちとともに山陰の
菊竹建築を読みとき、菊竹清訓の人物像とその生き様に迫る。
パネリスト:
遠藤 勝勧(建築家、遠藤勝勧建築設計室)
内藤 廣(建築家、東京大学名誉教授)
長谷川 逸子(建築家、長谷川逸子・建築計画工房)
コーディネーター:
斎藤 信吾(建築家、あかるい建築計画)

◆オンラインパネルディスカッションⅡ
「巨大は細部が宿すか?菊竹清訓の建築を、架構と加工の点から考える」
圧倒的なスケール!その構想力を実現してきた菊竹清訓の技術への視座を、
「架構」と「加工」ふたつのキーワードをもとに3人の建築家と語り尽くす。
パネリスト:
福島 加津也(建築家、東京都市大学教授)
森田 一弥(建築家・左官職人、京都府立大学准教授)
秋吉 浩気(建築家、VUILD CEO)
コーディネーター:
本橋 仁(建築史家、京都国立近代美術館特定研究員)

 どちらも聴きごたえがありそう。美術館のサイトはこちら

 書いていてようやく気付いたのだが、菊竹が亡くなったのは2011年なので、今年は没後10年なのだ。東京でも何かやりましょう!(宮沢洋)