「山田紗子展」がTOTOギャラリー・間で開幕、「誰にも似ていない」の答えを探る楽しさ

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 東京・乃木坂の「TOTOギャラリー・間(ま)」で建築家・山田紗子氏の個展「山田紗子展 parallel tunes(パラレル・チューンズ)」が2026年4月16日から始まる。前日に行われた内覧会は、筆者(宮沢)にとって1年前からの疑問の“答え合わせ”のような楽しい内容だった。

山田紗子氏はこんな人だった。出世作である自邸「daita2019」(東京、2019年)の展示の前で。本展の会期は7月12日まで(写真:宮沢洋、以下も)
色を使う転機になったという「miyazaki」(東京、2022年)の展示の前で。この展示空間にどんな色の服が映えるか、よくわかっていらっしゃる! 以下はプレスリリースからコピぺしたプロフィル。
山田紗子 (Suzuko Yamada)。1984年東京都生まれ。山田紗子建築設計事務所代表。ランドスケープデザインを学びながら建築に興味を持ち、藤本壮介建築設計事務所に入所。その後、東京藝術大学大学院で建築を学ぶ。大学院在学時に東京都美術館主催「Arts&Life:生きるための家」展で最優秀賞を受賞。独立後「daita2019」「miyazaki」等の住宅や、「outline bar」といったアートインスタレーションで、建築の領域を押し広げるような作品を展開する。近年は「EXPO 2025 大阪・関西万博休憩施設」や「やぶ市民交流広場YBパーク」など、公共空間の設計も手掛けている。主な受賞に、第3回日本建築設計学会賞大賞、第36回吉岡賞、Under 35 Architects exhibition 2020 Gold Medal、第3回小嶋一浩賞など

 山田氏の建築を筆者が初めて目にしたのは、大阪・関西万博の「休憩所3」だった。それを見たのは開幕直前のメディアデイ(4月9日)。ちょうど1年前だ。この日に見た数多くの建築の中で、筆者は「休憩所3」をベスト3に選んだ。その記事がこれだ。

勝手にベスト3、大阪・関西万博で体験すべき“空間”はこれだ!──万博プレビュー14(2025年4月12日公開)

この記事で勝手に選んだベスト3は以下の3件だった。

1)服部大祐+新森雄大|Schenk Hattori+Niimori Jamisonによる「休憩所4」
2)SANAAによる「Better Co-Being(宮田館)
3)山田紗子建築設計事務所による「休憩所3」

これが実際の「休憩所3」(以下の3点も)

 このときの記事では「休憩所3」についてこう書いている(太字部)。

 全くのノーマークだった。(中略)この施設は魅力を具体的に伝えるのがとても難しいのだが、まず、日本では見たことのない空間性だ。直線的な造形、軽やかさ、空間の連なり、色彩。その相互の関係性が不思議なリズムを生み出している。山田氏の設計した住宅は雑誌などで何度か見ていたが、現実の空間を体験するのは初めてで、周囲の期待値が高いことにも納得した。「誰にも似ていない」ってすごいことだと思う。

 こうやって記事を書くと自分の頭の中が整理されて、自分がなぜその建築に惹かれるのかがわかってくる。この「休憩所3」の場合、いい悪いとか、好き嫌いよりも、「誰にも似ていない」ということが大きかった。

 だが、1作だけを見てその先、「何が似ていないのか」「なぜ人と似ていないものが生まれるのか」を深掘りするのは難しい。今回の展示と山田氏の説明によって、1年来の疑問のかなりの部分がわかった気がした。

 まずは、本展の会場の写真をざっと見てほしい。

まずは下のフロアから
屋外は「休憩所3」の展示
上のフロアは壁3面と床を同時に使った映像展示。写真は4つの映像の1つ「nu:kuju」(大分、2025年)。下も

「色」と「直線」と「間」の体験

 そして、ここからが自分にとっての答え合わせである。まず、「何が似ていないのか」。これについては下記の3つが大きいように思う。

1)色──こんなに原色を使う建築家は日本では珍しい。
2)直線による動的な構成──普通ならば曲線でつくるような動的なつながりを、直線を組み合わせて構成している。
3)間(ま)──囲われた空間と外側の空間が等価、もしくは外側の空間が主となっている。

1と2だといつも同じようなものになりかねないが、根底にあるのはきっと3なのだろうと気づくことができたので、今後の展開がさらに楽しみになった。3に気づいたのは、この映像↓を見たからだ。

期間限定のバー「Outline bar」(Tokyo、2023年)の映像展示。下も

 もう1つの「なぜ人と似ていないものが生まれるのか」については、そんな簡単にはわかるはずもないのだが、理由の1つが「色のついたドローイング」を設計過程で重視しているからだ、というのは今回の展示を見れば明らかだ。これは山田氏が描いているのかと思ったら、多くを鈴木心氏(山田紗子建築設計事務所director)が描いているのだという。「絵がうますぎる」と褒めたら本人は謙遜していたが、これはうまい。うまいだけでなく、シーンを想像させる絵だ。ガチャガチャしているのに、細部まで見てしまう。

 展示の1つである「nu:kuju」(大分、2025年)↑は、今年度の日本建築学会賞作品賞の現地審査候補となったが、惜しくも大賞を逃した(学会の発表はこちら)。でも、彼らなら遠からずリベンジすることは間違いない。要注目だ。(宮沢洋)

■展覧会名(日)― 山田紗子展 parallel tunes
展覧会名(英)― Suzuko Yamada: parallel tunes
会期― 2026年4月16日(木)~7月12日(日)
開館時間― 11:00~18:00 入場無料
休館日― 月曜・祝日 5月4日(月)~6日(水)、ただし5月3日(日・祝)は開館
会場― TOTOギャラリー・間

(〒107-0062 東京都港区南青山1-24-3 TOTO乃木坂ビル3F)
東京メトロ千代田線乃木坂駅3番出口徒歩1分 TEL:03-3402-1010
主催― TOTOギャラリー・間
企画― TOTOギャラリー・間運営委員会

(特別顧問=安藤忠雄、委員=貝島桃代/平田晃久/セン・クアン/田根 剛)
後援―(一社)東京建築士会/(一社)東京都建築士事務所協会/(公社)日本建築家協会
関東甲信越支部/(一社)日本建築学会関東支部/(公社)日本建築士会連合会
 

■山田紗子講演会「parallel tunes」
日時―2026年5月29日(金) 18:00開場、19:00開演、20:30終演(予定)
会場―イイノホール(東京都千代田区内幸町2-1-1 飯野ビルディング4F)
定員―500名
参加方法―参加無料/事前申込制
TOTOギャラリー・間ウェブサイト(https://info.jp.toto.com/gallerma