東京・立川の複合文化施設「PLAY!」、MUSEUMに続いてPARKも本日オープン

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 東京・立川北口の新しい複合施設「GREEN SPRINGS(グリーンスプリングス)」内に、絵と言葉をテーマにした美術館「PLAY! MUSEUM(プレイミュージアム)」が6月10日にオープン。もうひとつの核となる親子の遊び場「PLAY! PARK(プレイパーク)」も本日6月19日にオープンした。いずれも手塚建築研究所が内装設計を手掛けている。

(写真:長井美暁、以下も)

渦巻き状の壁で、来場者を夢の世界へ

 GREEN SPRINGSは地元・立川の立飛ホールディングスが開発した新しい街区で、敷地の広さは約3.9万㎡多摩地区最大の2500席規模の多機能ホールや、グエナエル・ニコラ氏がデザインを手掛けた「SORANO HOTEL(ソラノホテル)」、オフィス、商業施設で構成し、ホールを含めて大小9棟の建物が約1万㎡の中央広場を囲んで立つ。新型コロナウイルス感染拡大により、今年4月から順次開業となっていたが、6月19日現在、商業施設の一部店舗を除いてほぼ全てが開業となった。

 場所はJR立川駅から徒歩8分ほど。多摩都市モノレールに沿って北へ向かう、幅40mの自転車・歩行者専用道路「サンサンロード」を歩いて、音響のよい映画館として知られる「シネマシティ」のシネマ・ツーの前を過ぎた先に、GREEN SPRINGSのサウスゲートがある。地上2階が中央広場のあるメインフロアだ。

 中央広場では街路がX字型に交差している。PLAY! は左側の街路を進んで、左手にある。

 PLAY! MUSEUMとPARKの入り口は一緒。中央広場と同じ地上2階にMUSEUM、3階にPARKがある。

 PLAY! MUSEUMは大人から子どもまで楽しめる美術館としてつくられた。年間を通して著名な絵本作家を紹介する常設展と、企画展を同時に開催していく。オープン記念は常設展が『はらぺこあおむし』で知られる絵本作家エリック・カール氏による「エリック・カール 遊ぶための本」(2021年3月28日まで)、企画展はクリエイティブユニットtupera tupera(ツペラ ツペラ)による「顔」がテーマの「tupera tuperaのかおてん.」(2020年12月29日まで)だ。

 MUSEUMの内部は、桟木のような細長い木材を張った壁が大きくカーブし、渦巻き状になっていて、来場者を奥へと導く。内装設計を担当した手塚建築研究所の手塚貴晴氏が「ぐるぐると夢の世界に入っていくように」と説明するように、渦巻きに沿って進むと気付かないうちに展示の中に入り込む仕掛けだ。壁は桟木の他にも木毛セメント板などの下地材、天井はダクトが剥き出し、床には墨出しの跡も残る。手塚氏は「(展示に)参加するというメッセージが来場者に伝わるように、あえてまだ途中、完成していないような雰囲気にした」と話す。

 tupera tuperaは亀山達矢氏と中川敦子氏によるユニットだ。2人にとって「顔」は、ブレイク作となった絵本『かおノート』をはじめ、アイデアとユーモアの源泉だという。渦巻き状の木の壁に並ぶのは新作の「かお10(テン)」で、2m大の顔はそれぞれ、まな板の上で切った野菜や洗濯物などでつくられている。

 上の写真の「床田愉男(ゆかだゆかお)」は参加型の作品で、来場者は周りに置いてあるものを使って黄色の円の中に自由に顔をつくり、天井の鏡でそれを見て楽しめる。しかし、新型コロナ対策のために当面は見るだけの展示になった。

子どもたちが遊ぶための「大きなお皿」

 一方、3階のPLAY! PARKは子どものための屋内広場だ。床がモルタルからコルクタイルに変わるところで靴を脱いで入ると、中央に、縁が迫り上がった直径22mの「大きなお皿」がある。

 手塚貴晴氏は「親子が一緒にいられる場所を考えたとき、動物園が思い浮かんだ。ここで動物を飼うわけにはいかないから、代わりに子どもを檻に入れるというところからアイデアが膨らんだ。円形なら子どもはぐるぐると走り回るだろう。子どもたちが自ら考え、自ら動く。そういう場所をアートの名のもとにつくろうと思った」と話す。

 手塚由比氏も「子どもが決まった遊びをするのではなく、遊び方を自由に発見しながら遊べると良いと思ってこのお皿をつくった」と語る。子どもたちが走り回ることを想定して、24カ月未満の子ども向けに直径7mの「小さなお皿」もつくってある。

見学者たちも思わず童心にかえって、よじ上ったり、寝転んだり。

 内覧会で貴晴氏と由比氏は、「お皿」の中をぐるぐると走ったり、縁に腰掛けたりして、遊び方をデモンストレーションして見せた。「お皿」の外に置いてある発泡スチロール製の椅子も両氏のデザイン。『はらぺこあおむし』の青虫をモチーフにしたわけではないという。「お皿」の中には当初、段ボールや風船でつくった遊具を置く予定だったが、新型コロナ対策で当面は空っぽな状態での利用となる。

 「お皿」の周りは、ファクトリーやライブラリー、シアターなどのスペース。グランドピアノも置いてある。

空間と時間が交差するランドスケープを、緑と水のつながりで表現

 再び2階に戻る。MUSEUMはカフェとショップを併設し、カフェでは展覧会に合わせたメニューも。ショップもオリジナルグッズが豊富で楽しい。

 PLAY!の両施設は親子で楽しめる。外に出て周りを見ると、GREEN SPRINGS自体に親子連れが多いことに気付いた。ホールの横には長さ約120mの、なだらかな階段状のカスケード(人工滝)があり、子どもたちが水遊びしている。カスケードは、かつてこの地にあった飛行場の滑走路をモチーフにしているという。

 また、敷地の西側に広がる昭和記念公園の豊かな自然を引き入れるように、中央広場は緑が多い。ビオトープもある。ランドスケープデザインは、ランドスケープ・プラスの平賀達也氏が手掛けた。

 商業施設の軒天井には、地元の多摩産材を約5000㎡分、使っているという。憩いの場の演出として効いている。

 店舗の中に、福永紙工の名前を掲げたショップ「TAKEOFF-SITE」を発見。トラフ建築設計事務所との協働プロジェクト「空気の器」や、建築家でありインターオフィス代表取締役社長でもある寺田尚樹氏との協働プロジェクト「テラダモケイ」などで知られる会社だ。

 同社は立飛ホールディングスと同様に、ここ立川を拠点としている。ショップの企画・運営は初の試みだ。代表の山田明良氏は「今まで、福永紙工の地域との連携は限られた施設での展開に留まっていました。(中略)改めて地域に目を向け、自社製品のみならず、このエリアで活動している企業、作家をつなぐ役割を担っていこうと思っています」と、店舗運営への意気込みを述べている。(長井美暁)