「国立京都国際会館」から依頼があって、A3判オモテウラのイラストマップを描いた。2026年の年明けから同館の見学ツアーで参加者に配られるほか、入り口脇の受付で無料配布されている。


京都市左京区の宝ヶ池に立つ「国立京都国際会館」(第1期は1966年竣工)は、建築家・大谷幸夫の代表作にして、日本のモダニズムの最高峰ともいえる傑作だ。そんな名建築の解剖図を描けるとは、画文家のほまれ。




生前、一度だけ取材したことがある大谷さんも、きっと雲の上でお喜びであろう。
名建築の運営者たちに見習ってほしい2つの点
…と、自分の宣伝はそのくらいにして本題に入る。見学ツアーのことだ。この施設の見学ツアーは、2つの意味で、他の名建築運営者にも大いに見習ってほしいものである。





「見習うべき点」の1つ目は、この見学ツアーがコロナ禍に、「施設をより多くの人に知ってもらうため」に始まったこと。もちろん「建築文化の発信」という意味がないわけではないが、メインの目的は「施設の㏚」=「経営のため」だ。
コロナ前までは、見学ツアーは行っておらず、学会などに参加する人以外はほぼ見ることができなかった。2020年にコロナ禍に突入し、大きな会合が激減。利活用とPRのため同年10月から「ワーケーション」を始めたことが、見学ツアーへの第一歩だった。
このワーケーション企画については、このBUNGA NETでも記事にした。筆者も同様にコロナ禍でどこにも行けなかったので、写真をもらって記事にした。30年間、日経グループで記事を書いてきたので、こういう経営チックな視点にとても共感する(逆に、ボランティア的な取り組みを描くのは苦手…)。
日曜コラム洋々亭18:大谷幸夫の「国立京都国際会館」でワーケーション始まる、コロナで下がる名建築の敷居(2020年10月11日)
コロナ禍は徐々に収束し、大きな会合も増えだしたが、確実に空きそうな日に建築ツアーをやってファンを増やそうということになったそうだ。
「見習うべき点」の2つ目は、「有料」のツアーを企画したこと。無料で参加できる「特別見学会」のツアーもあるが、参加機会の多い「ICC Kyoto Open Day」(催事に支障がない日に一般の人が入館できる)の見学ツアーは1人2200円(こちら)。このほかに、通常非公開のメインホールなどに入れる「国立京都国際会館の建築謎解きツアー」というものもあって、これは大人5000円、小学生2000円だ(こちら)。有料でもすぐに枠が埋まるらしい。

繰り返しになるが、筆者はボランティア的な取り組みよりも、お金を払う取り組みの方がサービスのクオリティーが高まると考えている(もちろん、そうでない場合もあるが)。そんなことをずっと思っていたので、イラストを依頼されたときにも、「ツアーが有料なのが素晴らしいですね」と褒めた。すると、「宮沢さんの記事がきっかけなんです」と返された。
「えっ、なんのこと?」と思った。聞くと、先ほどのワーケーションの記事の最後をこんなふうに結んでいたのだ。
「コロナで会議施設や宴会施設がガラ空き状態になっている名建築は多いはず。国立京都国際会館のように、一般見学の敷居を下げるところが増えていくことをひそかに期待している。運営担当者の方、建築好きは『有料』だって見に行きますよ。(宮沢洋)」
本当だ、お金が取れる、って書いてる…。なるほど、これが1つの後押しとなって(もちろん本当の原動力は担当者の熱意)、コロナ禍ワーケーションから有料見学ツアーが生まれ、より建築に親しみを持ってもらおうと筆者にイラストが依頼されたというわけか。因果応報、情けは人の為ならず…。
さきほどイラストのオモテ面をお見せしたが、実はウラ面の方がうんちく満載。例えば、このイラストマップが置かれているメインエントランスは、第1期の1966年時点では屋外だった。


これは筆者も今回の取材まで知らず、「えーっ」と思った。ぜひ実物を手に取って詳しく見てほしい。
2026年2月の「Open Day」は2/7(土)、2/14(土)、15(日)の3日間(いずれも10:00-17:00)。見学ツアーは2/14 ①10:30-11:30頃 ②14:00-15:00頃の2回だけで、チケットはどちらも完売している。3月以降の「Open Day」はまだ発表されておらず、「該当月の前月初旬頃にお知らせします。催事の都合上、実施がない月もございます」とのこと。
それでもコロナ前に比べれば、相当見やすくなっているので館のサイトをこまめにチェックしてほしい。(宮沢洋)

