日曜コラム洋々亭18:大谷幸夫の「国立京都国際会館」でワーケーション始まる、コロナで下がる名建築の敷居

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 最近、にわかに耳にすることが増えた「ワーケーション」。それをまさか築54年のこの名建築で聞くとは…。建築家・大谷幸夫の代表作である「国立京都国際会館」(京都市左京区宝ヶ池、1966年竣工)で、10月6日から「ワーケーションの日」が始まった。

(写真:国立京都国際会館)
(写真:磯達雄)

 「ワーケーション? 何それ?」という人のために説明しておくと、ワーケーションは「ワーク(労働)」と「バケーション(休暇)」を組み合わせた造語。「観光地やリゾート地で休暇を取りながらリモートで働く」ことを意味する。官房長官時代の菅義偉首相が「政府としても普及に取り組んでいきたい」と発言したことでにわかに注目されるようになった。菅政権を象徴する言葉の1つである。

 国立京都国際会館はこれまで、会議や催事利用者以外の市民は、特別な見学会やレストランの利用時にしか入館できなかった。しかし、今年の同館は、コロナの影響で催事利用が減少。一般にも利用を広げるきっかけの1つとして、ワーケーションが企画された。

(写真:国立京都国際会館)

 ワーケーションで開放するのは、ビジネスセンター(6席、上の写真)と、庭園が臨めるラウンジ(30席)。ラウンジといっても、そんじょそこらのラウンジではない。日本のラウンジトップ10に入りそうな上質ラウンジだ。

右手のソファ席がワーケーションで使用できる(写真:磯達雄)
(写真:国立京都国際会館)

 国立京都国際会館は「建築巡礼」でイラストを描いたことがあるので、プランはこんな感じ(↓)。ラウンジは施設のほぼ真ん中にある。図の下方向が庭園だ。

(イラスト:宮沢洋)

 利用時間は午前9時~午後6時まで。予約不要。利用料は無料。PC利用のためのコンセントも利用可能。有料だが複合機もある。ただし、今月1日に開店した「NIWA cafe」(下の写真)でドリンクなどを購入することが条件だ。

(写真:国立京都国際会館)

 条件がドリンク? つまりコーヒー1杯で朝から夕方までずっといられるということ? 京都の人がうらやましい!

 と、地団駄踏んでしまいそうだが、残念ながら毎日ではない。10月でワーケーション利用が可能なのは10月1日(木)、7日(水)、14日(水)、20日(火)の4日間のみ。催事の予定がある日は公開されない。えーっ、たったそれだけ?とも思ってしまうが、これまで外観を見て帰るだけだった高嶺(たかね)の建築。月に数日でも、かなり我々庶民に近づいたと言えるだろう。(「ワーケーションの日」の日程はこちら

(写真:国立京都国際会館)

建築特別見学会もスタート

 ワーケーションは、国立京都国際会館が10月から始めた3つの取り組みの1つ。以下はウェブサイトからの引用だ。

 この度、国立京都国際会館では、催事にご参加ではないお客様に向けた取組みとして、「ICC Kyoto Open Day」を始めます。内容は『建築の日』『NIWA cafe の日』『ワーケーションの日』の3日程です。

 それぞれはこんな内容。

A.『建築の日』(特別見学会)
 経験豊富なガイドの案内で、当館のモダニズム建築と日本庭園を鑑賞頂けます。事前予約が必要となります。
①普段は見ていただけない会場や建設当時の秘話等もご紹介します。
②建物の魅力や見どころを熟知した担当者が、1時間程度で建築物や展示された美術品等のご説明をします。
※定員を15名までとしており、事前予約制で先着順とさせていただいております。

B.『NIWA cafe の日』
 この秋に当館内にオープンする「NIWA cafe」にて、コー ヒーに関する体験プログラムや特別メニューをご用意致します。事前のご予約は不要です。

C.『ワーケーションの日』
館内ロビー・ロビー・ビジネスセンターを、テレワーク・学習など のワーキングスペースとして特別に開放致します。庭園 美と建築美が織りなす空間で、アナザーデスクとしてぜひご活用下さい。

 「建築の日」(特別見学会)も気になる。「経験豊富なガイドの案内」、聞きたい…。見学ルートは「本館内のメインホール、貴賓室、宴会場さくら、Room A、B-1、B-2、C-2、5階会議室など」とのこと。メインホール(下の写真)も見られるのか! これは見なくちゃ!

(写真:磯達雄)

 どうやらそう思った人は多かったようで、10月、11月はすでに満席とのこと。まずは、12月のスケジュールがウェブサイトで発表されるのを待とう。

 いずれも、予約や問い合わせは同館総務・企画部(Tel:075-705-1205、E-mail:com@icckyoto.or.jp)。

 国立京都国際会館がいかにすごい建築かは、私と磯達雄が書籍『昭和モダン建築巡礼 完全版1965~75』にたっぷり書いているのでぜひご覧いただきたたい。

(イラスト:宮沢洋、下も)

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 コロナで会議施設や宴会施設がガラ空き状態になっている名建築は多いはず。国立京都国際会館のように、一般見学の敷居を下げるところが増えていくことをひそかに期待している。運営担当者の方、建築好きは「有料」だって見に行きますよ。(宮沢洋)