万博の裏側を見せる「新しい建築の当事者たち」、ギャラリー・間で若手20組の“熱風”に打たれる

Pocket

 東京・乃木坂の「TOTOギャラリー・間(ま)」で、20組の若手建築家たちによるグループ展「新しい建築の当事者たち」が7月24日(木)から始まる。前日の7月23日に行われた内覧会を見てきた。

内覧会に登壇した主要メンバー(写真:宮沢洋、以下も)

 本展では、「2025年日本国際博覧会(EXPO 2025 大阪・関西万博)」の休憩所他設計業務の公募型プロポーザルで選ばれた20組の建築家たち↓の施設実現への取り組みを紹介する。会期は10月19日(日)まで。

これはほぼ20組勢ぞろいと思われる写真。直接ご挨拶できなかった方、すみません!

出展者(筆頭建築家五十音順):
[GROUP]井上 岳、棗田久美子、齋藤直紀、中井由梨、赤塚 健
[大西麻貴+百田有希 / o+h]大西麻貴、百田有希
[KIRI ARCHITECTS]桐 圭佑
[工藤浩平建築設計事務所]工藤浩平

[KUMA&ELSA]隈 翔平、エルサ・エスコベド
[studio m!kke +Yurica Design and Architecture+Studio on_site]小林広美、竹村優里佳、大野 宏

[小俣裕亮建築設計事務所/new building office]小俣裕亮
[KOMPAS]小室 舞
[t e c o]金野千恵
[斎藤信吾建築設計事務所+Ateliers Mumu Tashiro]斎藤信吾、根本友樹、田代夢々
[axonometric]佐々木 慧

[一般社団法人コロガロウ/佐藤研吾建築設計事務所]佐藤研吾
[PONDEDGE+farm+VOID]鈴木淳平、村部 塁、溝端友輔
[ナノメートルアーキテクチャー]野中あつみ、三谷裕樹
[MIDW+Niimori Jamison]服部大祐、新森雄大
[AHA 浜田晶則建築設計事務所]浜田晶則
[萬代基介建築設計事務所]萬代基介
[三井嶺建築設計事務所]三井 嶺
[山田紗子建築設計事務所]山田紗子
[米澤隆建築設計事務所]米澤 隆

TOTOギャラリー・間。略してギャラ間。本展は篠原一男展に続く40周年記念企画の第2弾

 内容に入る前に、「ギャラ間ってすごい」と改めて思う。まず1つは、本展が3年前から準備を始めていたということ。3年前というと、2022年だ。20組が公募型プロポーザルで選ばれた年である(プロポーザルの評価委員は平田晃久、藤本壮介、吉村靖孝の3氏)。この頃、大阪・関西万博がこんなに話題になると想像していただろうか。世間の関心とは関係なく、その時点で彼らに発表の場を与えると決めていたことがすごい。

 もう1つすごいのは、「プロジェクト別展示」ではなく、とんでもなくまとめが大変そうな「テーマ別スライス展示」にしていること。

 こういうテーマ↓で、それぞれのプロジェクトの断片があちこちに何度も登場するのだ。

1「つくることを主体的に考える」
2「みんなで自分ごとにする」
3「五感を引き上げる」
4「つくった後どうする?」
5「他者を受け入れる、共鳴する」
6「素材を見つめなおす」
7「遊ぶ、楽しむ」

 全員で集まったり、グループ分けしてヒアリングしたりして展示内容を決めていったという。うーむ、会場構成の佐々木慧氏や実行委員の工藤浩平氏、小俣裕亮氏、桐圭佑氏、國清尚之氏の苦労がしのばれる。こんな大変そうな枠組み、私がギャラ間の人間ならやんわりと別の路線に誘導するだろう。

会場構成を説明する佐々木慧氏
左から実行委員の小俣裕亮氏、桐圭佑氏、工藤浩平氏、國清尚之氏。國清氏は万博の20組ではなく、藤本壮介建築設計事務所シニアデザイナーで、実行委員として企画をサポートした

 公式サイトでは、本展の主旨をこう書いている。

「新しい建築の当事者たち」は、「EXPO 2025 大阪・関西万博」の休憩所他設計業務の公募型プロポーザルにて選ばれた20組の建築家たちによるグループ展です。彼らが立てた問いや、複雑な状況に対峙しながらどのように案を実現させてきたのか、会場を埋め尽くす模型や資料、映像を通じて、その奮闘の軌跡を追います。同時に、万博や展示に向けて積み重ねてきたさまざまな対話の中から、彼らの思考の結節点となるキーワードを見出し、新しい建築の当事者像を浮かび上がらせます。本展が万博という枠組みを超え、これからの建築について皆で議論していく場となることを願っています。」

 展示に加え、会期中、ほぼ毎週金曜の夜にプレゼンテーションイベントが開催される。各回のテーマは前述の7つのキーワードだ。(詳細はこちら

上のフロアはプレゼンテーションイベントができるようにゆったり

 こういう場が若手に与えられる日本の建築界って、たぶん世界から見たらうらやましいのではないかと思う。

 何しろ20組分あるので、個々のプロジェクトの詳細は会場に足を運んで自分の目で見て考えてほしい。それぞれが消火しきれない”熱”を発しているような展示だ。筆者は、万博の開幕時に20組の建築をすべて見ているので、特に屋外の実寸展示↓が「答え合わせ」的に面白かった。

 設計を業とする同世代や若手は、屋内のごちゃごちゃした展示(すみません!)にリアルな試行錯誤を読み取って刺激を受けるのではないか。

 ところで、展覧会タイトルの「新しい建築の当事者たち」の「当事者」って、なんだか意図を読み取りづらい言葉だなと思っていたのだが、監修者である平田晃久氏の挨拶文の中にその説明があったので引用する。

監修者の平田晃久氏(右)と、本展ではアドバイザーの立場の藤本壮介氏(左)

「建築家はもはやエリートではない。建築家とは、当事者として状況に巻き込まれ、あるいは異なる立場の多くの当事者たちを巻き込んで、建築を未知の領域にまで押し拡げていく人々のことだ。万博というまたとない機会をいかして、建築の新たな生み出され方を追求する人々のことだ。徹底的な議論が放つ切実な輝きは、あるうねりとして語りかけてくる。」

 なるほど。もはや社会は建築家を先生扱いしてくれないから、「当事者」として自分たちで考えてムーブメントをつくっていけ、ということか。

 似たようなハッパをかけられ、65年前に「メタボリズム」が生まれたように、今回の展覧会が会期中の議論を通してもう少しわかりやすい何かにまとまっていくことを、ベテラン世代としては期待してしまう。後に「あれが始まりだった」と言われるような何かに…。10月まで続く万博は、それを世に問うチャンスかもしれない。(宮沢洋)

■展覧会概要
展覧会名:新しい建築の当事者たち
Emerging Architecture, Own Ways
会期:2025年7月24日(木)~10月19日(日)
開館時間:11:00~18:00
休館日:月曜・祝日・夏期休暇[8月11日(月)~8月18日(月)]
入場料:無料

会場:TOTOギャラリー・間(〒107-0062 東京都港区南青山1-24-3 TOTO乃木坂ビル3F)東京メトロ千代田線乃木坂駅3番出口徒歩1分
主催:TOTOギャラリー・間
企画:TOTOギャラリー・間運営委員会
監修:平田晃久

アドバイザー:藤本壮介
実行委員:工藤浩平、小俣裕亮、桐 圭佑、國清尚之
会場構成:佐々木慧

■プレゼンテーションイベント
「新しい建築の当事者たち」
20組の建築家が設計したプロジェクトを出発点に、多様な意見を組み込みながら、本展が掲げる「新しい建築の当事者」とは何かを、批評的・発展的に検証します。
詳細は→https://jp.toto.com/gallerma/ex250724/event/?event_type=type1

参考まで、筆者(宮沢)が書いた20組の万博施設のルポ(上・中・下)はこちら↓。