納涼・サンティアゴ・カラトラバ特集⑤:リノベとは思えない華やかさ、「アテネオリンピック・スポーツコンプレックス」はカラトラバの頂点?

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 どれを見てもリゾート感がハンパないサンティアゴ・カラトラバの建築。筆者が撮ったカラトラバの建築の写真で、ひとときのヒンヤリ感を感じていただこうというこのシリーズ。2年ぶりの新記事の投入である。

 2025年6月下旬にギリシャ・アテネの「アテネオリンピック・スポーツコンプレックス」に行ってきた。約20年前の2004年、アテネ五輪のメイン施設である「アテネ・オリンピックスタジアム」など、複数の施設をカラトラバが設計した。

 サンティアゴ・カラトラバはスペインを代表する建築家で、構造エンジニアでもある。1951年生まれで今年74歳。安藤忠雄の10歳下で、隈研吾の3歳上。意外に若い。それでも、「現代のガウディ」と称されるほど世界で引っ張りダコだ。

 

最寄り駅を出るとこんな風景。平日ということもあり、ほとんど人がいない

 アテネ地下鉄のIrini駅を降りると、目の前に「アテネオリンピック・スポーツコンプレックス」が広がり、その中心に「アテネ・オリンピックスタジアム」はある。おおっ、かっこいい。

 1982年に建設された既存競技場に、カラトラバの改修設計で屋根を架け、2004年アテネオリンピックのメイン競技場として使用した。収容人数は7万5000人。

 よく見ると、この屋根は既存のスタジアムと構造が分離している。

 画文家なので、イラストで解説すると…。

既存のスタジアムの上に2枚の屋根をくちびるのような形で浮かせ、それぞれの上に巨大な鉄骨アーチを架ける(イラスト:宮沢洋、以下も)
アーチ橋と同じように、アーチにワイヤを架け渡して屋根を吊る
鉄骨アーチの足下はこんなにごつい
では、スタジアムの外に立つこのツノのようなものは何なのだろう?
ぐるっと周囲を回ってみると、中心から放射状に広がるワイヤを外側から引っ張っていた。ワイヤが細いので、おそらく映像機材を設置するためか、屋根の揺れを抑えるためのものだろう

「自転車競技場」も吊り屋根

 エリア内にもう1つ、兄弟のような小ぶりの吊り屋根ドームがあって、それがこの「オリンピック自転車競技場」。誰が見ても同じ設計者。

 これは予備知識なしで見たので新築なのかと思った。帰国してから調べたら、1991年に建設された施設にカラトラバが屋根を架けたのだという。これもすごいな。

 両施設とも2004年完成なので、カラトラバは完成時53歳。設計開始時は40代か…。日本なら若手と言われる年齢だ。

 どれも言われなければリノベーションとは思えない華やかさ。スペイン・バレンシアの「芸術科学都市」(こちらの記事)と並行して設計が進んだと考えられるが、個人的にはこちらの方がやり過ぎ感がなくて好感が持てる。今まで見たカラトラバの建築の中で、暫定1位だ(あくまで個人の感想)。

 ただ、新築でつくられた“おもてなし部分”は、やっぱりやり過ぎ感が否めない…。

帽子のつばのような敷地入り口のゲート
敷地の北側を円弧状につなぐ長いフォーラム。雨除けにも日よけにもならないものをこの規模で…

 白塗りのスチールのアーチが300mくらい連続する。これは似たようなものがバレンシアの「芸術科学都市」にもあった。

 利用者の多い芸術科学都市ではきれいな状態だったが、こちらは仕上げのはがれや錆が目出つ。

 以前にも書いたが、筆者はカラトラバの大ファンというわけではない。気づいてみると、彼の代表的な建築をけっこう見ているのだ。それくらい各国の主要都市にあるということだろう。

 実は今回、アテネに行く前にヴェネチアに行ったのだが、カラトラバの橋を知らずに渡っていた、ということに帰国してから気づいた。「変わった橋だな」とは思ったものの、調べたら1枚も写真を撮っていなかった。不覚…(どんな橋か見たい方はこちら)。

 さて、次の海外出張では、どんなカラトラバ建築をリポートできるだろうか。第6回を気長にお待ちください。(宮沢洋)

 これまでの4回はこちら↓。