2022年の日本建築学会賞を受賞した宮崎浩氏(プランツアソシエイツ代表)の新作「川場BASE」(群馬県川場村)を見てきた。村の新庁舎を核とする複合施設で、2023年11月に開庁した。すでに『新建築』2024年1月号に掲載されている。実物を見た知人も激推ししていたのだが、「雪がなくなったら見に行こう」と思っているうちに7月になってしまった。それでも建築の神はほほえみ、梅雨の谷間の好天を満喫できた。
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旧庁舎から約400m離れた場所での建て替えだ。鉄骨造+木造、地上2階建てで、複数の建物がブリッジで結ばれている。延べ面積4463㎡。総工費37億4276万円(税込み)。以下は川場村の広報誌「広報かわば」2023年12月号からの引用(太字部)。
役場新庁舎が完成 愛称は「Kawaba BASE」
令和4年(2022年)4月に着工した役場新庁舎を含む拠点施設は、これからの川場村の中心になるという意味を込めて「Kawaba BASE」と名付けられ令和5年11月6日(月)に開庁しました。
「Kawaba BASE」は役場新庁舎を中心に、むらの学習館、交流ホール、エネルギーセンター、防災倉庫が連絡ブリッジによって繋がっています。
構造材、外壁や床材などに川場産木材を積極的に利用しており、庁舎待合ロビーの吹抜け上部には、杉の製材による架構が大胆に展開している構造となっています。(中略)
11月6日(月)、新庁舎前のソト広場にて役場新庁舎開庁式が行われました。式典では、村議会議員や職員の他、設計を担当した㈱プランツアソシエイツの宮崎社長も出席されました。
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すっきりとよくまとまっている紹介文だ。まるで宮崎氏の建築のよう。余計なことは書かずに見て感じるべし、と宮崎氏に言われそうだが、写真を見ながら蛇足の補足。
まず、分散型の配置がいい。
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そして、宮崎氏といえばディテール。
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見ていると、農村部の建築にも大きな可能性がありそうだと、すがすがしい気持ちになってくる。
気になるぞ「川場村」…
この建築に限ったことではないが、いかに建築家の能力が優れていたとしても、発注者のマインドが定まっていなければ魅力的な建築は生まれない。
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人口約3000人の川場村でなぜこんな施設が建てられるのか。何がしかの補助があったとしても、そもそも税収が安定していなければこんなものは建てられない。筆者は川場村を訪れたのは初めてで、頭に浮かぶのは「川場スキー場」くらいしかない。
調べてみてわかったのだが、川場村は全国の村の中でも注目の村だった。川場村は「田園理想郷」という理念を掲げている。理想郷ってさすがにどうよ…、と思ったが、単なるお題目でないようなのだ。
「産業振興では、北にそびえる日本百名山の『武尊山』などから流れ出す清流を生かした農産物のブランド化を推進し、清涼な水から育てられた川場村産こしひかり『雪ほたか』は米・食味コンクールにおいて金賞を連続受賞、観光では道の駅『川場田園プラザ』が全国モデル道の駅に選ばれるなど高い評価を受けており、『農業+観光』の村として躍進を続けております。 さらに、村の総面積の86%を占める森林に着目した木材コンビナート事業や新エネルギー活用の取組みなど、環境に配慮した村づくりを推進しています」(公式サイトの外山京太郎村長挨拶より)
「農業+観光」でうまく回っているようなのだ。そういえば…と思い出したのが、村長の挨拶文にある「川場田園プラザ」だ。県道64号にある「道の駅」で、確か宮崎浩氏が設計した「川場ルーフ」(2017年)があったはず。場所は「川場BASE」から車で数分。
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行ってみると、「川場ルーフ」はもちろん宮崎氏らしいすっきりデザインで美しいのだが、それにも増して道の駅全体のにぎわいに驚いた。平日の午前中なのに。川場ルーフ以外の空間も面白いし、何より食べ物が魅力的だ。ほとんどが地産地消なので、食べることで心のデトックスにもなる。
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この川場田園プラザや川場村については、検索するといろいろな分析記事が出てくるので、興味のある人は探して読んでみてほしい。そして、東京都心から車で2時間ちょっとの場所なので、梅雨が明けたらぜひ「川場BASE」と「川場田園プラザ」を訪れてみてほしい。(宮沢洋)