藤森式解説02:バウハウスにこだわり続けた清家清、バウハウスに揺れる丹下健三──「 モダニズム建築とは何か」スピンオフインタビュー

藤森照信先生と私(宮沢洋)の共著『画文でわかる モダニズム建築とは何か』が彰国社から5月10日に発刊になった。この本は、藤森先生の著作『人類と建築の歴史』の一部を宮沢がイラスト化したもので、巻末に藤森先生へのインタビューを収録している。実はそのインタビュー、盛り上がり過ぎて全体の半分しか載せることができなかった。あまりにもったいないので、残り半分を本サイトで3回に分けて掲載することにした。今回は2回目。(書籍の詳細は彰国社サイトを)

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越境連載「建築シネドラ探訪」20:三谷幸喜が見抜いた「妥協」という建築家の本質、映画「みんなのいえ」の教え

 前回、一切の「妥協」を許さない建築家の映画「摩天楼」について書いたので、それとは真逆の方向の映画を取り上げてみたい。NHK大河ドラマで話題の三谷幸喜が自ら脚本を書き、監督したコメディ映画「みんなのいえ」(2001年公開)だ。

(イラスト:宮沢洋)

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坂倉準三・伊賀市旧庁舎再生事業の交渉権者決定、「MARU。architecture」の参画でさらに期待

 市の発表から約1週間遅れになってしまったが、これはBUNGA NETとして書くべきニュースだと思い、遅ればせながら取り上げる。三重県伊賀市は5月17日、公募型プロポーザルを実施していた「伊賀市にぎわい忍者回廊整備(忍者体験施設等整備)」の優先交渉権者を伊賀マネジメントグループに決めたことを発表した。

改修後の旧上野市庁舎(伊賀市旧庁舎)外観イメージ(伊賀市の発表資料より。「画像は、事業者から提出された企画提案書に掲載された画像の一部であり、今後整備される各施設の実際の姿を示すものではありません」とのこと。以下のイメージ図も同)
忍者体験施設内観イメージ
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藤森式解説01:バウハウス越えを宣言した丹下健三「ミケランジェロ頌」の意味──「モダニズム建築とは何か」スピンオフインタビュー

藤森照信先生と私(宮沢洋)の共著『画文でわかる モダニズム建築とは何か』が彰国社から5月10日に発刊になった。この本は、藤森先生の著作『人類と建築の歴史』の一部を宮沢がイラスト化したもので、巻末に「補講2」として、藤森先生へのインタビュー「『神は死んだ』からの『原点ゼロ』を収録している。

実はそのインタビュー、盛り上がり過ぎて全体の半分しか載せることができなかった。あまりにもったいないので、残り半分を本サイトで3回に分けて掲載することにした。許可をいただいた藤森先生と彰国社に感謝。(書籍の詳細は彰国社サイトを)

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越境連載「イラスト名建築ぶらり旅」08:変わらず変わり続ける銀座のアイコン──三愛ドリームセンター

 東京・銀座のイメージといえば、多くの人が思い浮かべるのは「銀座4丁目交差点」ではないか。銀座通りと晴海通りが交差する場所だ。そして、この交差点の“顔”として頭に刷り込まれているのが「和光本館」と「三愛ドリームセンター」だろう。この2つの建物、デザインは全く違うのに、銀座に人々を迎え入れる“ゲート”のように見えてしまうのは私だけだろうか。

(イラスト:宮沢洋)


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越境連載「建築シネドラ探訪」19:ゲーリー・クーパーが天才建築家を演じる「摩天楼」はフランク・ロイド・ライトも距離を置いた問題作

 今回は連載初のモノクロ映画である(よってイラストもモノクロ調にした)。アメリカで1949年に制作された映画『摩天楼』だ。「建築家を主人公にした本格映画」の先駆けとされ、映画通の建築好きの会話の中でしばしば話題に上る映画だ。主演は名優、ゲーリー・クーパー。恥ずかしながら、私は見たことがなかった。見て、あ然とした。想像していた内容と全く違っていたのだ。

(イラスト:宮沢洋)

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学会賞受賞「グラスハウス」が大胆改修、オープン直後のサプライズ見学記──津山ルポ後編

 津山巡りの後編である。訪れたのはここだ。

(写真:宮沢洋、以下も)

 分かるだろうか。横河健氏の設計で1998年に完成した「グラスハウス」である。1999年度の日本建築学会賞作品賞を受賞した建築だ。前回の記事(大改修後の「津山文化センター」を見学、“日本的RC四天王”が導いたサプライズ)とは別の意味で、大きなサプライズだった。

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大改修後の「津山文化センター」を見学、“日本的RC四天王”が導いたサプライズ

 自分は割と約束を守る方の人間だと思う。約束を守るとこんないいことがある。

(写真:宮沢洋)

 背景の建物は、岡山県津山市の「津山文化センター」。中央の俳優のような男性は、文筆家で写真家で建築家でもある稲葉なおと氏だ。この写真がどうやって撮られたかについてはおいおい説明したい。

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加速するミュージアム・ダイバーシティを十和田市現代美術館&八戸市美術館で体感──「青森5館」全制覇・後編

 「青森5館(AOMORI GOKAN)」巡りの後編である。前回は5館のうち、
・弘前れんが倉庫美術館
・青森県立美術館
・青森公立大学 国際芸術センター青森

を巡った。今回(青森3日目)は残り2館を巡る。
・十和田市現代美術館
・八戸市美術館

 まずは、十和田市の「十和田市現代美術館」へ。これは有名過ぎて今さら恥ずかしいのだが、実物を見たのは初めてだ。

屋外彫刻はチェ・ジョンファの「フラワー・ホース」(写真:宮沢洋、以下も)
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「青森5館」全制覇! まずは田根剛/弘前れんが倉庫、青木淳/青森県美、安藤忠雄/国際芸術センターへ

 「青森5館(AOMORI GOKAN)」を全部言えるだろうか。私が勝手につくった造語ではない。2020年7月に設立された「青森アートミュージアム5館連携協議会」の取り組みだ。コロナ禍がずっと続いていて、まだ大きな連携イベントは行われていないようだが、5館の企画展の内容などが一度に見られるサイト(こちら)があって、これは便利だ。

 で、5館とは何を指すのか。建築好きならばスラスラ答えてほしい。公式サイトの並び順にいうと、こうなる。

・弘前れんが倉庫美術館
・青森公立大学 国際芸術センター青森
・青森県立美術館
・十和田市現代美術館
・八戸市美術館

 ゴールデンウイーク中に青森で仕事があったので、レンタカーを借りて5館を全部回ってみた。2泊3日のアート漬け&建築漬けの旅。その雰囲気を写真で紹介する(それぞれを詳しく論ずると大変なレポートになってしまうので、あくまで雰囲気レベルでご容赦を)。

5館巡りの1つめはここ(写真:宮沢洋、以下も)
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フジモリ先生との共著『モダニズム建築とは何か』、自信を持ってお薦めする理由は「疾走感」と「強い軸」

 藤森照信先生と私(宮沢洋)の共著『画文でわかる モダニズム建築とは何か』が彰国社から発刊される。大手書店には今週末あたりから並びはじめ、アマゾンではGW終盤から発送が始まるという。

アマゾンはこちら

『画文でわかる モダニズム建築とは何か』
文:藤森照信・画:宮沢洋。彰国社、2022年5月10日、A5判、128ページ、特色2色刷、1900円+税
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たぶん日本初! 約2時間のFM特番で「建築」を熱く語る、玄理×川原秀仁YPMC会長×西沢立衛、4月29日18:00~@J-WAVE

 「続編を楽しみにしています!」と本人には言っていたのだが、すごい形での続編となった。4月29日(祝)18:00~19:55放送のJ-WAVE(81.3FM)特別プログラムで、あの人が再び登場する。

右は女優で番組ナビゲーターの玄理(ヒョンリ)さん。左の人、誰だか分かりますか?

 以下、公式サイトの告知より。

J-WAVE SPECIAL
LANDSCAPE WONDER~ARCHITECT JOURNEY~
2022年4月29日(祝)18:00~19:55

 世界の建築にフォーカスするスペシャル・プログラム「LANDSCAPE WONDER」。今回は“ARCHITECT JOURNEY”と題し、旅をしてまでも見たい日本にある有名建築家の建築物について特集します。中でもル・コルビジェと彼が基本設計を手掛けた国立西洋美術館について注目。コメンテーターには“施設参謀“川原秀仁さんが登場。 

 宣伝臭くなるからか社名は書いていないが、「“施設参謀”川原秀仁さん」は、山下PMCの川原秀仁会長だ。

 昨年、半年間にわたり「LANDSCAPE WONDER」(本来は日曜午前の番組)にレギュラー出演した川原会長(当時は社長)のトークがうますぎる、と当サイトの「建築の愛し方」で独占インタビューした。かつてDJをやっていた過去などはそちらをご覧いただきたい。

建築の愛し方10:「J-WAVE」の建築面白解説者は“元DJ”の山下PMC社長、放送は残る2回!──川原秀仁氏

 そして、今回の特番の内容も面白そう。以下は、山下PMCのサイトより。

 さらに、プリツカー賞も受賞した建築家・西沢立衛氏をゲストで登場。「旅をしてまでも見てみたい建築」をテーマに語り合います。音楽通である川原が、番組のテーマに沿い、ゴールデンウィークのはじめにふさわしい選曲をいたしますので、あわせてお楽しみください。

 おお、世界の西沢氏も参戦……。何の話するんだろう。オスカー・ニーマイヤーの話をしてほしいな。

 川原会長は、トークよりもむしろ、2時間の選曲を自分でできるのがうれしくて仕方がないらしい。マニアックな曲、かけるんだろうな。選曲のうんちくも聞きどころ。

 私はFMラジオ好きで、ほとんど1日中FMを聞いているが、過去に「2時間建築の話だけをする」といった企画を知らない。おそらく日本で初めてなのではないか。FMを聞きなれない人も、話の種にこれは聞かねば。 J-WAVEの周波数は「81.3」です! (宮沢洋)

■番組概要
放送局:J-WAVE(81.3FM)
番組名:J-WAVE SPECIAL LANDSCAPE WONDER ~ARCHITECT JOURNEY~
放送日時:2022年4月29日(金・祝)18:00~19:55
ナビゲーター:玄理
コメンテーター:川原秀仁(施設参謀)
ゲスト:西沢立衛(建築家)
番組HP:https://www.j-wave.co.jp/holiday/20220429_sp/

※radikoなら1都6県、radikoプレミアム(有料)なら日本全国どこでも視聴可能。https://www.j-wave.co.jp/radiobar/

「東京海上ビル」見学会で知った“王冠”の意味、「勝手にリノベ対決」はNOIZ案に軍配

 4月24日、「東京海上ビルディングを愛し、その存続を願う会」が主催する講演会と見学会が開催された。ここでいう東京海上ビルディングは、前川國男の設計で1974年に完成した現・東京海上日動ビル本館のことだ。同社はレンゾ・ピアノ氏らの設計で、ビルを建て替えることを発表している。

エントランスホールの柱をめでる前川建築設計事務所の橋本功所長。柱のはつり仕上げは、彫刻家の流政之が指示したものという(写真:宮沢洋、以下も)
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予想通り「長野県立美術館」が学会賞・建築大賞をW受賞、そのすごさは周辺の劇的変化

 やはり、の結果だった。日本建築学会は4月19日、2022年の日本建築学会賞の各賞を発表した。「作品」部門の受賞は以下の3件(以下 敬称略、学会発表順)だった。

「旧富岡製糸場西置繭所」
齋賀英二郎(公益財団法人文化財建造物保存技術協会事業部保存管理計画担当技術主任)
斎藤英俊(京都女子大学名誉教授)
木村勉(長岡造形大学名誉教授)

「太田市美術館・図書館」
平田晃久(京都大学教授/平田晃久建築設計事務所)

「長野県立美術館」
宮崎浩(プランツアソシエイツ代表)

 何が「やはり」かというと、「長野県立美術館」が作品賞に選ばれたことだ。

(写真:宮沢洋、以下も)
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越境連載「イラスト名建築ぶらり旅」07:2度の大胆再生で気分はハリー・ポッター──茨城県立図書館

 入り口を入ると、まるでホグワーツ魔法魔術学校(ハリー・ポッターが通う学校)のような中世ヨーロッパ風の空間が出迎える。いきなりですが問題。この「茨城県立図書館」は、「図書館」になる前、何の建物だったでしょう? チッチッチッチッ……。

(イラスト:宮沢洋)

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越境連載@東芝エレベータ02:「チャーリーとチョコレート工場」─名作映画・ドラマの隠れた「主役たち」

 ウィリー・ウォンカがつくるチョコレートは世界中の子供たちに大人気だ。しかし、その工場に入った者は誰もおらず、製造法は秘密のベールに包まれていた。ところが、商品に同封された黄金のチケットを引き当てた5人に、工場見学が許される。ウォンカが案内するチョコレート工場の内部とは、果たしてどんなところだったのか、というストーリー。天才で変人の工場長ウォンカをジョニー・デップが演じている。(文:磯達雄)

(イラスト:宮沢洋)

 続きはこちら。(東芝エレベータのサイト「よくわかるエレベーターと建物のこと」に飛びます)

大阪の新生・藤田美術館が開館、隣接する公園との見事な一体感は今後のヒント

 2017年から大規模な改修工事を実施していた藤田美術館(大阪市都島区網島町)が、4月1日にリニューアルオープンした。

(写真:宮沢洋)

 同館は、実業家の藤田傳三郎(1841~1912年)とその息子たち(平太郎、徳次郎)によって築かれたコレクションを中心として、1954年に開館した。国宝9件、重要文化財53件を含む約2000件のコレクションを所蔵しており、特に、瑠璃色に輝く「曜変天目(ようへんてんもく)茶碗」は、国宝指定された3碗の1つとして知られる。

国宝「曜変天目茶碗」は一番奥の部屋で見られる。さほど焼き物に詳しくない私(宮沢)でも、これはとんでもない茶碗だと分かる


 リニューアル前は「蔵の美術館」として知られていた。明治~大正期に建てられた藤田家の邸宅の蔵を改装し、展示室として再利用してきた。藤田家の邸宅は1945年の大阪大空襲で焼失したが、蔵と中の美術品は延焼を免れた。そんな逸話が残る蔵だった。(かつての蔵の展示室を見たい人は、他紙ですがこちらを)

 しかし、老朽化が激しく、大掛かりな耐震改修なども検討されたものの、今後を見据えて全面的に建て替えた。設計・施工は大成建設が担当した。設計の中心になったのは、大成建設関西支店の平井浩之設計部長だが、設計過程では館長の藤田清氏が、“統括建築家”と言ってもいいほどに、さまざまなアイデアを出した。もちろん、全部その通りになった訳ではなく、それに対する大成側の提案もあって、例えば建物の外観は当初提案とは全く異なる白い大庇とガラス開口の箱になった。古い蔵の記憶を引き継ぐため、象徴的な部材を残して随所に使っているが、単に古いものを踏襲するという守りの建築ではない。

 …と、なぜプロセスをそんなに詳しく私が知っているかというと、1年ほど前に、縁あって藤田館長と対談させてもらったからだ。(そのときの記事は、館のサイトのこちら

 ちょうど開館日の4月1日に大阪で仕事があったので、初日に行ってみた。展示物が置かれてから館内を見るのは私も初めて。エントランスホールの大らかさや、展示室内の「異物の少なさ」など、藤田館長のこだわりが改めて伝わってきた。

 展示は常に3テーマで構成。1カ月ごとに1テーマずつを変更し、3カ月後に訪れれば常に全てが新しい展示になるようにするという。開館記念の4月は、国宝「曜変天目茶碗」と、同館が12巻全てを所有する国宝「玄奘三蔵絵」第1巻(鎌倉時代)が展示されている。

清々しい「イグジットホール」?

 そして、これは藤田館長には言いづらいことなのだが、実際に開館した美術館を見て最も心を動かされたのは、“展示を見終わった後”の動線だった。

 展示室を出ると、エントランスとは逆側(北側)のホワイエのような空間に出る。展示室を見た後に、こういうふわっとした空間があるのは珍しい。「エントランスホール」という言葉と対比するならば「イグジットホール」か。展示室内が暗いので、明るい光に包まれたこの空間に出ると、深呼吸したくなる清々しさ。西側のガラス開口からは多宝塔(高野山から移築したもの)が見えて、庭に吸い込まれるよう。今回、実際の展示を見て、この空間の価値がわかった。

 帰路に着くには、そこから半屋外の縁側のような空間を南に戻る。そこから見える庭があまりに気持ちよくて、庭も歩いてみたいなと思っていたら、その考えを察するように庭の方に向かう小道が分かれていた。そちらに歩くと、館の出口を出ることなく、広い庭園内を散策できるのだ。

いつの間にか隣の公園!

 「美術館の庭なら当たり前じゃないか」と思われるかもしれない。だがこれは、いつの間にか隣の公共公園に入っているのである。大阪市指定名勝「藤田邸跡公園」だ。名前から想像がつくように、もともとは藤田傳三郎の本邸に作庭された庭園だが、真下を通るJR東西線・大阪城北詰駅の整備をきっかけに、2004年から大阪市の公園となった。

 今回のリニューアル以前には、公園と美術館の敷地境界には、塀が立っており、お互いチラリとは見えても行き来はできなかった。今回、大阪市と協議して、塀を取り払った。今では敷地境界がどこなのか全く分からない。見事な連続感だ。

 対談でこの美術館を訪れたときには、建築の話に終始してしまい、公園側に行ってみなかった。不覚…。この公園、さすが藤田傳三郎の庭園だけに素晴らしい。藤田傳三郎は藤田観光のルーツをつくった人でもある。公園の正門があまりにも重厚な門であるがゆえに、新参者はかえって敷居が高く感じてしまう。

公園入り口の門

 今後は私のように、美術館に来て公園の存在を知り、中に初めて入る人は多いに違いない。逆に、公園に来て、ふらっと美術館に立ち寄る人もいるはずだ。エントランスホールの喫茶は、入館料を払わなくても利用できる。一休みにうってつけだ。

エントランスホールには“あみじま茶屋”と名付けた喫茶カウンターを設置。抹茶と地元和菓子店指導によるだんごのセットを500円で提供。美術館の入場料は1000円、19歳以下無料と、なんか安すぎません?

 まさに「Win-Win」。たかが塀、されど塀、である。

公園は桜が満開!

 近年、Park PFIなど、公園を官民で共同開発する例が増えている。それもいいとは思うのだが、公園の隣地で民間が公園を活用する事例も、もっとあっていいのではないか。この美術館を見て、そう思った。古美術ファン、建築ファンはもちろん、公園に関わる人にも見てほしい美術館である。(宮沢洋)

藤田美術館
所在地:大阪市都島区網島町10番32号
入館料:大人1000円、19歳以下無料

発売前に重版決定、話題の写真集『津山 美しい建築の街』は書き下ろしの歴史編も圧巻

 発売前に重版(増刷)決定──。私(宮沢)もたくさんの本をつくってきたが、そんな経験はない。うらやましい。本日4月1日に山陽新聞社から発売となる、稲葉なおと氏の新刊『津山 美しい建築の街』の話である。

4月1日に発売となる『津山 美しい建築の街』の津山文化センターのページ。著者の稲葉なおと氏の了解を得て宮沢が撮影 (以下の写真も)
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越境連載「クイズ名建築のつくり方」05:梅田スカイビル、リフトアップ時の妙案は?

 2つの超高層ビルをつなぐ空中庭園展望台のリフトアップ工事で、 施工者が考えて実施した アイデアはどれ?

(1)リフトアップ当日まで 実施日を知らせず、街の人々を驚かせる
(2)リフトアップを数カ月間かけてジワジワ行い、話題性を長引かせる
(3)リフトアップをあらかじめメディアに告知し、全国的な話題にする

 答えはこちら。(しんこうWebに飛びます)

吉阪隆正展@MOTが開幕、イラスト会場図を手に「ひげから地球へ」

公立美術館では初の大規模展となる建築家・吉阪隆正の展覧会「吉阪隆正展 ひげから地球へ、パノラみる」が3月19日から東京都現代美術館(MOT、東京都江東区)で始まった。この展覧会では、宮沢が描いたイラスト会場マップが無料で配布されている。宮沢はまだ行くことができていないので、助っ人大学院生、大塚光太郎君(東京大学生産技術研究所)に会場リポートをお願いした。(ここまで宮沢洋)

(写真:宮沢洋)
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「(エンジニアリング)」に注目! 静岡県立中央図書館はC+A・アイダアトリエ・日建設計(エンジニアリング)が妹島氏に勝利

 静岡県は3月7日、「新県立中央図書館整備事業」の設計者を選定する公募型プロポーザルで「C+A・アイダアトリエ・日建設計(エンジニアリング)設計企業体」を最も優れた技術提案書に特定したことを県のホームページで公表した。次順位は妹島和世建築設計事務所の提案書だった。

県がホームページに掲載した「最も優れた技術提案書の概要(事務局による抜粋)」より

 県の発表はこちら

 静岡県は、2段階方式の公募型プロポーザルを昨年秋に公示し、昨年12月の1次審査で6者を選定。今年2月19日に6者の公開プレゼンテーションと2次審査(非公開)を行い、その結果を3月7日に公表した(以下、引用)。

◆特定結果

(1)最も優れた技術提案書を提出した者

・C+A・アイダアトリエ・日建設計(エンジニアリング)設計企業体 

(2)次順位の技術提案書を提出した者

・株式会社妹島和世建築設計事務所 

(3)その他の提案書を提出した者

・有限会社マル・アーキテクチャ

・株式会社平田晃久建築設計事務所

・遠藤克彦建築研究所・RIA設計共同体

・石本・畝森・針谷設計共同体

◆今後のスケジュール(予定)

令和4年3月   最も優れた技術提案書を提出した者と契約について協議

令和4年3月末~ 設計業務委託契約の締結

基本・実施設計 令和4年3月から令和5年9月

※提案内容がそのまま設計案になるものではありません。

◆審査員

審査委員長 長谷川 逸子 長谷川逸子・建築計画工房(株) 代表取締役

副委員長 北山 恒  横浜国立大学 名誉教授

千葉 学 東京大学大学院工学系研究科 教授

貝島 桃代 スイス連邦工科大学チューリッヒ校 教授

古瀬 敏 静岡文化芸術大学 名誉教授

岡本 真 アカデミック・リソース・ガイド(株) 代表取締役

是住 久美子 田原市図書館 館長

難波 喬司 静岡県副知事

県がホームページに掲載した「最も優れた技術提案書の概要(事務局による抜粋)」より

 3月7日に、審査委員長の長谷川逸子氏の審査講評も公表された。

 6作品はそれぞれ新しい考えを導入し優れた作品でした。 二次審査の後に審査委員で議論を繰り返した結果、22番を選びました。 最も優れた技術提案で総合的に優れている点や取組体制等を評価しました。 「静岡県の公共建築はできる限り県産材を使う」という県の方針があります が、図書館としての構造耐火や経済性から公募資料で強要しなかったにもかかわらず「天竜杉のハイブリッド木質構造の採用」に努力したいと記してあるこ とをはじめ、静岡の気候にあった外読書空間と内部との一体化や、静岡県を代 表する植物(旧東海道、三保)の松林等、この場からの歴史や地域性を捉え快 適さと関わるランドスケープデザインの導入など、静岡県の図書館をつくると いう意志が全体に貫かれていました。また審査時、発表者の明確に話す姿勢か ら、これから設計してゆくのに大切な“コラボレーションのためのコミュニケ ーション”も重要ということを合わせ考え、22番を一番に決定しました。(2022年2月21日 審査委員長 長谷川逸子)

設計JVの組み方と「(エンジニアリング)」に注目!

 と、この結果自体はいろいろなメディアが報じると思う。このBUNGA NETが注目したいのは、最優秀チームの設計JVの組み方だ。赤松佳珠子氏を中心とするC+Aと会田友朗氏率いるアイダアトリエのアトリエ系2組、そして、日本最大の設計事務所、日建設計のチームである。県の正式発表にある「日建設計(エンジニアリング)」という書き方に注目してほしい。これは「日建設計はエンジニアリング面のみで参加します」という意味だろう。

 それでも普通なら「C+A・アイダアトリエ・日建設計設計企業体」だ。なぜ、わざわざ「C+A・アイダアトリエ・日建設計(エンジニアリング)設計企業体」と書くのか。

 筆者は、昨年11月、『誰も知らない日建設計』という書籍を出した。住友財閥の営繕部門を起源として約120年の歴史を持つ日建設計が、初のデザイン戦略「日建デザインゴールズ」をまとめるまでのプロセスを描いたものだ。その取材の過程を踏まえ、筆者の書いてよい範囲でその意味を推測すると、この「(エンジニアリング)」という表現は、「これから日建設計はエンジニアリングだけでも仕事をとっていきますよ!」という対外的な宣言であると思われる。

 初版の「日建デザインゴールズ」には、計52のゴールズがあって、その中の1つにこういうものがある。

日建グループを開放系の組織に変え、プロジェクト単位で外部の人材を 積極的に取り入れたり、外部の人と仕事をすることで刺激を受け、 日建を内部から揺さぶる仕組みを デザインする(『誰も知らない日建設計』から引用)

 これ、まさに今回のJVの組み方ではないか。このゴールズの文言が実際に機能し始めたのだ。これまで、諸事情により日建設計がエンジニアリング面だけを担当することはあったものの、積極的にエンジニアリングだけを引き受けたことを明示することはまずなかった。そう、アトリエ建築家もこれからは、日建設計のエンジニアリング部門と組めるのである(多分)。

 うーん、いろいろ書きたいのだけれど、後はゴールズの文面から想像するか、日建設計と直接仕事の交渉をしてみてください。とにかくこれは、日建設計120年の歴史の中でも、結構大きな転換点であると日建設計ウオッチャーの筆者は思うのである。果たして「(エンジニアリング)」はこれからどうなっていくのか。もちろん、この図書館がどんな建築になるのかも注目だ。(宮沢洋)

越境連載「建築シネドラ探訪」18:向井理の真面目さは吉か裏目か?「10の秘密」は確認検査員が主役のざわざわドラマ

 「確認検査員」という“裏方”の仕事に脚光が当たるのは、建築関係者として喜ぶべきことなのかもしれない。でも、見ている最中、ずっと心がざわざわしてしまうドラマだ。今回取り上げるのは、2020年にカンテレ・フジテレビ系で放送された連続サスペンスドラマ、「10の秘密」だ。主演の向井理(おさむ)が、大手建設会社の“偽装”を知ってしまった確認検査員を演じる。

(イラスト:宮沢洋)

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映画「ドライブ・マイ・カー」が証明した谷口吉生氏「広島市中工場」のすごさ──建築シネドラ探訪番外編

 遅ればせながら、映画「ドライブ・マイ・カー」を見てきた。この映画、いろいろな人から「宮沢さんは当然見てますよね?」と感想を求められるので、「いやまだ…」と答えるのが辛くなった。なぜ私が見ていると思われるかというと、ロケ地の1つに「広島市環境局中工場」(2004年完成)が使われているから。そう、私の大好きな建築家、谷口吉生氏の設計による名建築だ。

(イラスト:宮沢洋、以下同)

 なるほど、物語として面白い。上映時間が2時間59分もあって、途中で飽きるのではないかと思ったが、全くそんなことはなかった。序盤のふわっとしたエピソードの意味が、それぞれ徐々に解明されていき、見終わると全体が腑に落ちる。実によくできている。

 村上春樹による同名の短編小説を、1978年生まれの濱口竜介監督が、自ら脚本を書いて映画化した。カンヌ国際映画祭で日本映画としては史上初となる脚本賞を受賞。アカデミー賞では作品賞、監督賞、脚色賞、国際長編映画賞にノミネートされた。あのスティーブン・スピルバーグ監督の「ウエスト・サイド・ストーリー」などと競う。発表は3月27日だ。

みさきが過去を語る重要なシーンで中工場が登場

 若干のネタバレを含むので、これから映画を見ようと思っている人は、後半の写真の辺りから読んでほしい。

 主人公は妻を亡くした俳優・演出家の家福悠介(かふくゆうすけ、演じるのは西島秀俊)。家福が、広島県の演劇祭に招かれ、専属ドライバーとなる寡黙な女性、渡利みさき(わたりみさき、演じるのは三浦透子)との交流の中で、過去を乗り越えていくという話だ。

 「広島市環境局中工場」(以下、中工場)が登場するのは中盤から終盤に向かう辺り。寡黙な渡利みさきが、自分の過去を初めて語る重要なシーンだ。

 演劇の稽古場でトラブルがあった家福は、運転手のみさきに「どこでもいいから車を走らせてくれないか」と言う。みさきは家福を中工場に連れていく。見学路である「エコリアム」を案内しながら、みさきは、「原爆ドームと平和記念公園を結ぶ平和の軸線を遮らないように設計されたそうです」と説明する(セリフは記憶で書いているので正確ではないかも。以下同)。

 みさきは5年前、18歳のときに地すべりで母を亡くした。母の呪縛から解かれたみさきは、免許を取ったばかりの車を運転して、あてもなく広島までやってきた。そして、この清掃局でドライバーとして働き始めた。そんな過去を語る。

 その間、5分間くらいだろうか、建物の外観や、美術館のような見学路、南側の階段状の広場などがたっぷりと映る。

 
 映画を見終わった後、これは村上春樹の原作にも描かれているのだろうか、と気になって、文庫(文春文庫の「女のいない男たち」に収録)を買って読んでみた。想像はしていたが、原作にはなかった。

 中工場のエピソードは濱口竜介監督の創作だ。産経新聞には、こんな裏話が載っていた。

 話題の「ドライブ・マイ・カー」の原作の舞台は東京で、主なロケ地としても、当初は韓国・釜山で決まっていたという。だが、新型コロナウイルス下で海外ロケが行えず、映画の設定となっている国際演劇祭の開催地に適した都市を探していたそうだ。(中略)

 特に濱口監督がほれ込んだ場所の一つが、河口の埋め立て地に建てられた美術館のような趣があるゴミ処理施設「広島市環境局中工場」だ。(中略)「建物内部の中央をガラス張りにし、平和都市の『軸線』を遮らずに海へと抜けるようにして浄化させていると説明したら、台本に書かれていてすごくびっくりしました。映画に出てくる女性ドライバーさんの大切な場所にもなっています」と西崎さん(撮影を支援した広島フィルム・コミッションの西崎智子さん)。
引用元の記事:カンヌ脚本賞の濱口作品も ロケ地・広島の磁力

なぜこのシーンで「中工場」なのか?

 前述したように、この映画はさまざまなエピソードが、後になって「伏線」として回収されていく。だが、この中工場については、ここを取り上げた理由が明確には説明されない。これだけ緻密な脚本を書く人が、「絵になるから」というだけで重要シーンに使うことはないだろう。なので、勝手にその意味を考えてみた。

 このシーンのカギは、みさきが工場内のクレーンやごみの山を見ながら言う「花びらみたいでしょう」というセリフなのではないか。そして、海に向かって伸びる見学路の先に見える光がもう1つのポイント。その空間は、長いトンネルのようでもある。

 みさきにとって、これまでの人生は「散っていくだけ」のものだった。来る日も来る日も散っていく作業を繰り返すごみ処理工場。しかし、心の底ではいつか光が訪れると願っている。光は遠くに確かにある。そんな思いをこのシーンに重ねたくて、ここをロケ地に選んだのではないか。

“美術館の名手”にごみ処理施設を発注した英断

 …と、そんなことは私の妄想に過ぎないので、せっかく中工場に興味を持ってくれた人のために、実際の写真を見ながら建築がらみのうんちくを1つ。

 この清掃工場がなぜ、谷口吉生氏の設計で実現したのか、である。通常、こういう施設は、過去に同種の実績がないと設計者選定の土俵に上がることはない。“美術館の名手”として世界に知られる谷口氏だが、ごみ処理施設の実績はなかった。

(“美術館の名手”についてはこちらの記事参考→谷口吉生氏設計の金沢建築館で「谷口美術館11」展、シャンとした会場に漂う「場の空気」

(写真:宮沢洋、以下も)

 この施設は広島市の「P&C(ピースアンドクリエイト)」事業の1つで、設計が特命(名指し)で谷口吉生氏に発注されたのだ。広島市が1995年から約2年間実施した事業で、正式名は「ひろしま2045:平和と創造のまち」事業という。以下、広島市の資料から引用。

 「ひろしま2045:平和と創造のまち」(以下、「P&C」という。)は被爆 50 周年を記念し、2045年のひろしまに向けて優れたデザインの社会資本を整備していこうとするものです。P&Cの目的は、広島の都市景観形成において重要と認められる本市の建設事業について、計画段階から建築、土木、ランドスケープ等のデザイン力に優れたデザイナーを選定・起用し、特徴ある自然環境を生かしながら、人々に潤いと安らぎを与え都市の風格を高めるような個性ある美しい都市景観の創造を推進していくことにより、広島のアイデンティティの形成を図ろうとするものです。

 P&Cは平成7年(1995 年)4月から開始し、平成9年(1997年)7月までに11事業13施設対象事業に指定し、平成20年度(2008年度)の安佐南区総合福祉センターの完成により、9事業10施設(以下参照)が完了しました。

① 安佐南区総合福祉センター/村上徹(デザイナー名、以下同)/2008年5月(完成年月、以下同)
② 基町高等学校/原広司/2000年3月
③ 矢野南小学校/富田玲子/1998年3月
⑤ 東千田公園/山本紀久/1999年3月
⑥猿猴川アートプロムナード/佐々木葉二/2007年8月
段原リバーフロント地区建築誘導/錦織亮雄/2007年3月
⑦ 中工場/谷口吉生/2004年2月
⑧ 西消防署/山本理顕/2000年3月
⑨ 市民てづくりの里/三田育雄/2001年3月
⑩ 宇品内港埋立地区高層複合住宅整備等/藤本昌也/2001年3月

 90年代には、公共建築の設計発注を、競争入札や設計競技ではなく、「特命」で行おうという機運が高まった時期があった。熊本県の「くまもとアートポリス」がその先駆けで、岡山県の「クリエイティブTOWN岡山(CTO)」や広島市の「P&C」などがそれに続いた。熊本アートポリスは当初、建築家の磯崎新氏が、CTOは岡田新一がそれぞれコミッショナーを務め、設計者選定の中心になった。広島市の「P&C」では、特定の1人の建築家ではなく、地元の学識経験者や都市整備局長、関係局長が設計候補者を検討した。

 そんな仕組みがなかったら、中工場のような建築が実現することはなかったし、この映画「ドライブ・マイ・カー」も全く違ったものになっていたかもしれない。

 「P&C」のことは覚えていたが、今回調べて、正式名称が 「ひろしま2045」であったということを思い出した。原爆投下から100年後の財産をつくるという意味だ。原爆ドームから平和公園を経て海に抜ける“平和の軸線”は、この映画によって世界に知られる共通財産となったと言ってよいだろう。映画内では名前が出ることはないが、中工場の設計者である谷口吉生氏と、同氏を設計者に推薦した誰かに、改めて敬意を表したい。(宮沢洋)

越境連載「イラスト名建築ぶらり旅」06:伝統と革新の京都を目と舌で味わう──THE HIRAMATSU京都

 え、ここがホテル? 約束の時間にメモの場所に行くと、案内役の西澤崇雄さん(日建設計エンジニアリング部門 サスティナブルデザイングループ ヘリテージビジネスラボ)が建物の前で待っていた。西澤さんがいなければ、呉服屋か美術商かと思って通り過ぎたかもしれない。

 訪れたのは2020年3月に開業した「THE HIRAMATSU京都」。続きはこちら

(イラスト:宮沢洋)

速報:審査白熱!宮崎浩氏の長野県立美術館が「日本建築大賞」に

 2月25日の午後4時半ごろ、2021年度の「JIA日本建築大賞」が宮崎浩氏(プランツアソシエイツ)の設計による長野県立美術館に決まった。

右側が長野県立美術館。既存の東山魁夷館(左)とブリッジでつないだ(写真:特記以外は宮沢洋)

 審査の様子がオンライン中継されていたので知っている人は知っていると思うが、報道としてはたぶん、一番の速報だと思う。中継を見て書いているわけではない(だったらもっと早く上げている)。筆者(宮沢)が審査員の1人だったのだ。審査員は下記の5人。

・佐藤 尚巳(建築家、審査委員長)
・松岡 拓公雄(建築家)
・原田 真宏(建築家)
・田原 幸夫(建築家/建築保存再生学)
・宮沢 洋(編集者)

 書類選考を経て、下記の6件を対象に現地審査を実施。コロナ禍であることを踏まえ、事前投票で3件に絞って最終の公開プレゼンと公開審査を実施した。

・MIYASHITA PARK/設計:竹中工務店 日建設計(プロジェクトアーキテクト)
・三組坂flat/設計:伊藤博之建築設計事務所
・山王のオフィス/設計:studiovelocity
・長野県立美術館/設計:プランツアソシエイツ
 →最終選考
・新富士のホスピス/設計:山崎健太郎デザインワークショップ→最終選考
・熊本城特別見学通路/設計:日本設計→最終選考

 ここでは最終選考に残った3件の写真を掲載する。

長野県立美術館/設計:プランツアソシエイツ

 まず、大賞の「長野県立美術館/設計:プランツアソシエイツ」。これは建設中から本サイトでも紹介しているので、そちらの記事も見てほしい。

現場ルポ:新生「信濃美術館」は独自の高断熱サッシで善光寺を存分に見せる

新生・長野県立美術館で「宮崎浩展」開幕、渾身の「つなぎ方」を展示とリアルで実感

 設計者選定のプロポーザルについては下記の記事が詳しい。

プロポの在り方を問いただす 信濃美術館設計プロポーザルでプランツがSANAAを抑える(日経クロステック2017.06.21)

熊本城特別見学通路/設計:日本設計

 続いて、「熊本城特別見学通路/設計:日本設計」。

新富士のホスピス/設計:山崎健太郎デザインワークショップ

 最後に「新富士のホスピス/設計:山崎健太郎デザインワークショップ」。

プレゼン資料より(写真:黒住直臣)
プレゼン資料より(写真:黒住直臣)
プレゼン資料より(写真:黒住直臣)
プレゼン資料より
プレゼン資料より(写真:黒住直臣)
プレゼン資料より(写真:黒住直臣)
プレゼン資料より(写真:黒住直臣)

 
 ということで、公式な審査講評はそのうち公表されると思うので、そちらをお楽しみに。

過去10年の大賞受賞作は?

 ちなみに、審査員を引き受けるにあたり過去10年の大賞受賞作を調べてみたので、ご参考まで。

■2011年度(審査委員:石堂 威・斎藤 公男・三宅 理一)
<日本建築大賞>
ホキ美術館
設計者:山梨 知彦 、中本 太郎、鈴木 隆、矢野 雅規、向野 聡彦 (いずれも日建設計)
建築主:株式会社 ホキ美術館
施工者:株式会社 大林組

■2012年度(審査委員:斎藤 公男・三宅 理一・大森 晃彦)
<日本建築大賞>
竹の会所
設計者:陶器 浩一(滋賀県立大学)
建築主:滋賀県立大学陶器浩一研究室
施工者:滋賀県立大学陶器浩一研究室+たけとも+髙橋工業

■2013年度(審査委員:三宅 理一・大森 晃彦・長谷川 逸子)
<日本建築大賞>
実践学園中学・高等学校 自由学習館
設計者:古谷 誠章(早稲田大学)、八木 佐千子(有限会社ナスカ)
建築主:学校法人実践学園
施工者:大成建設株式会社

■2014年度(審査委員:大森 晃彦・深尾 精一・槇 文彦・長谷川 逸子・西沢 立衛)
<JIA日本建築大賞>
山鹿市立山鹿小学校
設計者:工藤 和美、堀場 弘(いずれもシーラカンスK&H株式会社)
建築主:山鹿市
施工者:光進・相互建設工事共同企業体

■2015年度(審査委員:長谷川逸子(審査委員長)・深尾精一・磯達雄・西沢立衛・富永譲)
<JIA日本建築大賞>
大分県立美術館
設計者:坂 茂、平賀 信孝、菅井 啓太(いずれも株式会社坂茂建築設計)
建築主:大分県知事 広瀬勝貞
施工者:鹿島建設・梅林建設建設共同企業体

■2016年度(審査委員:深尾精一(審査委員長)・磯達雄・西沢立衛・富永譲・相田武文)
<JIA日本建築大賞>
ROKI Global Innovation Center -ROGIC –
設計者:小堀 哲夫(株式会社 小堀哲夫建築設計事務所)
建築主:株式会社ROKI 代表取締役社長 島田 貴也
施工者:大成建設株式会社

■2017年度(審査委員:富永譲(審査委員長)、磯達雄、後藤治、相田武文、淺石優)
<JIA日本建築大賞>
道の駅ましこ
設計者:原田 麻魚、原田 真宏(いずれもMOUNT FUJI ARCHITECTS STUDIO)
建築主:益子町長 大塚朋之
施工者:株式会社 熊谷組首都圏支店

■2018年度(審査委員:相田武文(審査委員長)、淺石優、木下庸子、後藤治、橋本純)
<JIA日本建築大賞>
NICCA INNOVATION CENTER
設計者:小堀哲夫(株式会社 小堀哲夫建築設計事務所)
建築主:日華化学株式会社 代表取締役社長 江守康昌
施工者:清水建設株式会社 北陸支店

■2019年度(審査委員:淺石優(審査委員長)、木下庸子、ヨコミゾマコト、後藤治、橋本純)
<JIA日本建築大賞>
古澤邸
設計者:古澤 大輔(リライトD/日本大学理工学部建築学科)
建築主:古澤 大輔
施工者:株式会社TH-1

■2020年度(審査委員:木下庸子、佐藤尚巳、手塚貴晴、田原幸夫、橋本純)
<JIA日本建築大賞>
京都市美術館(通称:京都市京セラ美術館)
設計者:青木 淳(AS)、西澤 徹夫(株式会社西澤徹夫建築事務所)、森本 貞一(株式会社松村組大阪本店)、久保 岳(株式会社昭和設計)
建築主:京都市
施工者:株式会社松村組大阪本店

越境連載「建築シネドラ探訪」17:石原裕次郎が”未来のコルビュジエ”演じた映画「風速40米」、公開年は東京タワー完成の年

 作家で元・東京都知事の石原慎太郎が亡くなった。享年89歳。このニュースの中で、20代前半の石原慎太郎と弟の石原裕次郎(1934~1987年、享年53歳)が並ぶ写真を見て、裕次郎のあまりのキラキラぶりにこの映画を思い出し、見てみたくなった。1958年に公開された「風速40米(メートル)」だ。

(イラスト:宮沢洋)

 続きはこちら

日曜コラム洋々亭39:旧香川県立体育館の保存問題とともに注目してほしい坂倉準三・伊賀市旧庁舎の行方

 香川県は旧香川県立体育館(設計:丹下健三、1964年)の利活用について、民間事業者から提案を募るサウンディング型市場調査の結果を1月17日に公表した。

旧香川県立体育館。閉館前の2014年9月に撮影。以下同(写真:宮沢洋)
今回の記事で知ってほしいのはこちらの建物。分かりますか?

 1カ月も前の話をなぜ今書くか、というと、古巣の日経クロステックのこの記事を読んだからだ。

岐路に立つ旧香川県立体育館、利活用に向けた調査結果を県が発表(2022年2月16日公開)

 すでにいくつかの報道で県の発表自体は知っていた(県の発表はこちら)。発表内容は下記だ。

・提案書を提出したのは9事業者、10提案。
・10の提案のうち9提案は、耐震改修を行い、利活用を行うもの。1提案は、耐震改修は行わず、建物の外観を都市のモニュメントとして保存する提案。
・耐震改修を行い、利活用を行うとした9提案のうち、2提案は、初期投資やその回収計画について具体的な提案があったが、その内容は、県が財政負担を行うことを想定したものだった。4提案は、資金の回収計画等に関して、数字を示しての具体的な記載はなかった。2提案は、耐震改修を県が行うことを前提とする提案だった。
・県は今回の調査の提案について、その実現可能性について精査を行い、旧県立体育館のあり方について検討を進めていく。

 公式の資料には、この結果を県がどう受け止めているかという記述はない。先の日経クロステックの記事は、県教育委員会保健体育課の「非常に厳しい結果と受け止めている」「県が財政負担をすることを想定しているものや、具体的な数字が示されていない提案が多かった」というコメントを掲載している。

 そうなのか……。私は前職時代の2014年、この体育館が3度にわたる入札不調の末、改修を断念して閉館する経緯を取材した(こちらの記事など)。なので、9者から提案があったということを前向きにとらえていた。そんなに関心を持つ企業があるのか、と。でも、県は「財政負担なしで、自費で耐震改修して活用する事業者」が現れると考えていたのか。それとも、県民への手前、厳しめにコメントせざるを得ないのか。

椅子は剣持勇のデザイン

10年前の入札予定価格は何だったのか?

 この記事で知ったことがもう1つ。県はサウンディング型市場調査を実施する際に、改修工事を試算し、工事費が約18億円に上る可能性を認識していたという。この金額にもびっくり。不落札となった2012年の入札の予定価格は、1回目が約5億7900万円、2回目が約5億9000万円、3回目が約8億1400万円だった。3回目と比較しても2倍以上に上がっている。10年でそこまで建設費は上がっていない。当時の予定価格は“予算ありき”の根拠のない数字だったのでは?と疑いたくなる。

 県は新県立体育館が竣工する24年度までに旧県立体育館の対応を決める考えという。新体育館はSANAAの設計だ。

 

TOTOギャラリー間のSANAA展で展示されている新香川県立体育館の模型(大小のアリーナのつなぎ部分)。右はSANAAの西沢立衛氏。会期は3月20日まで。展覧会のリポートはこちら

保存案件で急増するサウンディング調査

 ところで、「サウンディング型市場調査」という言葉を初めて聞く人も多いかもしれない。

 サウンディング型市場調査は、地方自治体がまちづくり事業や公共施設の有効活用・転用などを行いたい場合、そのアイデアや意見を広く民間事業者に求めるために直接対話し、条件整備をすること。これにより、民間事業者側は自らのノウハウと創意工夫を事業に反映でき、参入しやすい環境(公募条件)を生むことができる。「サウンディング」の語源は、地盤調査の「サウンディング(Sounding)」らしい。

 このサウンディング型市場調査、ここ4~5年で急激に増えた。財政がひっ迫する地方自治体でPFI事業が増え、その“地ならし”のために増えているといわれる。岐路に立つ建築物の保存活用について実施される調査も多い。

 試しに、「サウンディング型市場調査」「保存活用」で検索してみると、ざくざく出てくる。例えば……
・「旧第一銀行横浜支店」の新たな活用に向けてサウンディング型市場調査(横浜市、2021年3月)
雲仙市みずほすこやかランドの民間活用に係るサウンディング型市場調査(雲仙市、2021年5月)
・赤レンガの銀行に関するサウンディング型市場調査(高岡市、2021年7月)
・千歳館利活用に係るサウンディング型市場調査(山形市、2021年11月)

といった具合だ。

坂倉準三の伊賀市旧庁舎(旧上野市庁舎)が「忍者回廊」に

 こうしたサウンディング型市場調査がハッピーな利活用に結びついた例を、残念ながら私はまだ知らない。そんな中で注目しているのが、三重県伊賀市の旧市庁舎だ。旧「上野市庁舎」と言った方がピンと来るだろうか。坂倉準三の設計で1964年に完成した建築だ。

新庁舎への移転前の2015年11月に撮影(以下、同)。伊賀市庁舎は2019年1月、日建設計が設計した新庁舎に移転した(写真:宮沢洋)
かつてはこの庁舎の周辺に、坂倉準三の設計で同時期に建てられた伊賀市北庁舎(旧三重県上野庁舎)や公民館があったが、ともに2012年度に解体されている。模型写真の右上が北庁舎、右下が公民館

 この建物についてはもう10年以上、保存か解体かという議論が続いていた。2020年にサウンディング型市場調査を実施し、その結果を受けて、PFI事業に動き出した。2021年10月からPFI事業の提案公募が始まっている。「伊賀市にぎわい忍者回廊整備(忍者体験施設等整備)に関するPFI事業」という名称だ。

 以下は、伊賀市のサイトからの引用。

 (伊賀市の)中心市街地では依然として高齢化や人口減少が進み、空き家・空店舗が増加するなど、地域活力の衰退が進んでいることから、まち・ひと・しごと創生法の目的及び基本理念に基づいた更なる取組が求められています。

 そこで、東京の「上野恩賜公園と文化施設群」や京都の「南禅寺界隈の近代庭園群」などと同様に『日本の20世紀遺産20選』に選ばれた、「伊賀上野城下町の文化的景観」を構成する坂倉準三による近代建築群や伊賀上野城下町の歴史的な街並みの保全、アフターコロナ時代における観光まちづくりなどの視点も加えつつ、地域に根付く魅力溢れる資源を単体ではなく面として捉え、磨き上げることにより、人と地域が成長し続けることができる空間を創出するべく、上野公園から城下町エリアを結ぶ導線を「にぎわい忍者回廊」と位置づけ、PFI(Private Finance Initiative)手法を用いた公民が一体となった取組を推進します。(ここまで引用)

伊賀市のホームページより

 応募要項を見ると、事業は(1)旧上野市庁舎改修整備事業、(2)忍者体験施設整備事業、(3)まちづくり拠点整備事業(附帯事業)の3つ。そもそも「にぎわい忍者回廊」が何なのかが資料を読んでもさっぱり分からないのだが、上のイメージ図を見ると、旧庁舎は「図書館」あるいは「観光まちづくり拠点」としての利用を想定しているようだ。

 市が事業者に支払う「サービス対価」の予定価格は「38億8500万円(税込み)」と記されている。なるほど、新規施設の整備と旧庁舎の転用をセットでやり繰りするスキームにしたわけか。それなら旧庁舎を単体で事業化するよりも事業者の選択肢は増える。かつては単体で図書館などに転用することを検討していたので、こうした方針への転換には、サウンディング型市場調査の影響があったのかもしれない。

 提案書の締め切りは今年3月22日。5月ごろに契約候補者を決める予定。事業期間は20年間。

 「サウンディング型市場調査をやって良かった」という先例になることを願う。(宮沢洋)

第4次「ガチャ」ブームに乗って「隈研吾シリーズ」登場、全4種を大人買いしてみた!

 わけあって数日前から、自宅の6畳間に閉じこもっている。体は元気なのだが、取材に行くことができない。なので、部屋から一歩も出ずに書けるニュースをひとつ。1月下旬に発売になった「隈研吾 ARCHITECTURE MINIATURE COLLECTION」だ。

自宅の畳の上ですみません。でも、畳の目と比べると、大きさが分かりやすいのでは?(写真:宮沢洋)

 フィギュアメーカーのケンエレファント(石山健三代表、東京都千代田区)が開発・製造するもの。商品は全4種。「浅草文化観光センター」「角川武蔵野ミュージアム」「Sunny Hills」「高輪ゲートウェイ駅」だ。

 いわゆる「ガチャガチャ」(ガチャポンとも)で、ごろっと出てくるカプセル商品だ。1つ500円。自称「隈研吾ウオッチャー」の筆者としては、これは欲しい。しかし、このガチャはどこに置いてあるのか? 筆者はずるをして、発売前にAmazonで「全4種セット」を予約した。それが届いた。

 4つで2980円+配送料500円=合計3480円。実際のガチャなら7回回せるが、それでも4種が揃う保証はないので、まあ、仕方のない金額だろう。

「浅草文化観光センター」
隣接するビルで見えない裏側も
「角川武蔵野ミュージアム」
「Sunny Hills」
「高輪ゲートウェイ駅」

 ミニチュアの出来としては「浅草文化観光センター」が一番いい。期待していた「角川武蔵野ミュージアム」は、ちょっと大味でがっかりした。

 私の知人は、実際のガチャを東京駅近くで見かけて、「高輪ゲートウェイ駅」をゲットしたという。

「丸ビルとKITTEの間、地下スペースの特設会場で見つけました」とのこと(写真:森清)

コロナで「第4次ガチャブーム」って知ってました?

 知らなかったのだが、発売元のケンエレファントという会社は、さまざまなオリジナルミニチュアシリーズをつくっていて、建築好きがほしくなりそうなシリーズもある。例えば、下記。

カリモク60 MINIATURE FURNITURE
カリモクファニチャー オールドカリモクコレクション
関西電力送配電(株)公認 鉄塔ミニチュアコレクション

右側にある「カリモクコレクション」が気になる…(写真:森清)

 これも全く知らなかったのだが、今は「第4次ガチャブーム」らしい。確かに、主要駅にガチャコーナーが必ずある。

ちなみに、
・第1次ブーム:1965年に米国から機械を輸入して始まる(筆者の子どもの頃)
・第2次ブーム:キン肉マン消しゴムやスーパーカー消しゴムなどキャラクターや時代を反映させた商品が人気に
・第3次ブーム:「コップのフチ子」(2012年発売)が大ヒットしたキタンクラブなどによって、大人向けのオリジナル商品が脚光を浴びる
・第4次ブーム:ガチャ専門店が台頭

という流れらしい。

 報道によれば、ガチャ専門店が増えた背景には、新型コロナウイルスの影響を受け、ショッピングモールなどで空きテナントが増加したことや、わずかなスペースで展開できる手軽さがあると考えられるという。

 50年を超える歴史の中で、ついに「建築」に踏み出したガチャ。隈研吾シリーズは、第二弾へと続くのか。つくるなら、出世作の「M2」は外せないでしょう。王道の「馬頭広重美術館」もしかり。「浅草文化観光センター」の出来の良さを見ると、タワー系で「渋谷スクランブルスクエア」もいいかもしれない。外観がほとんどイメージできない「アオーレ長岡」は、逆の意味で見てみたい。

 隈シリーズも見たいけれど、他の建築家もつくってほしい。村野藤吾とか菊竹清訓とか……。建築系の展覧会では必ずつくることにしてほしいなあ。展覧会の企画者の方はケンエレファントのサイトを。(宮沢洋)

「大阪中之島美術館」ついに開館、建築雑誌泣かせのブラックキューブと静謐な巨大洞穴

 大阪中之島美術館(大阪市北区)が2月2日(水)に開館する。1983年に構想が発表されてから約40年。待望の開館記念展「超コレクション展」の内覧会が1月28日に開かれた。話題の建築は一番に見なきゃ、ということで、大阪まで見に行ってきた。

(写真:宮沢洋)

 美術館の発注者は大阪市。設計者は大阪市都市整備局企画部公共建築課と遠藤克彦建築研究所。施工者は錢高組・大鉄工業・藤木工務店JV。PFI法に基づく公共施設等運営事業(コンセッション方式)を日本の美術館として初導入。PFIの事業者には朝日ビルディング(大阪市)が選ばれた。

 と、運営面もいろいろ面白そうなのだが、まず知りたいのは建築についてだろう。

意外に主張しないブラックキューブ

 敷地面積約1万2871m2、延べ面積約2万12m2。鉄骨造、地上5階建て、高さ約36.9m。

 建設中から外観の「ブラックキューブ」が大きな話題になっていた。私自身は今回、初めて見た。

 イメージしていたブラックキューブとはちょっと違っていた。もっと“主張するブラックキューブ”だと思っていたのだ(黒御影石かピカピカのガラス質素材だと思っていた)。だが実際は、意外におとなしい。黒い外壁はプレキャストコンクリートで、表面には骨材らしきものが露出している。それが黒塗りなので、アスファルト舗装を並べたみたいだ。光沢がほとんどない。もし知らずに川沿いを歩いていたら、見過ごすかもしれない。

 内部の売りである「パッサージュ」(遊歩空間)は、イメージとかなり違っていた。パッサージュは1~5階を貫く巨大で複雑な形の吹き抜けだ。勝手に想像していたのは、外観と対照的なにぎやかな空間だった。さんさんと自然光が降り注ぎ、暖かい素材で包まれる……そんなイメージの空間だ。だが実際は、外観にも増してストイック。相当な大空間なのに、使われている素材はほぼアルミスパンドレル一択。自然光も入りはするが限定的。“静謐な巨大洞窟”といった印象だ。

無限に写真が撮れてしまうパッサージュ

 この建築は、建築雑誌のカメラマンや編集者にはなかなか悩ましいと思う。まず、外観写真から始めるか、内観から始めるか。前述の通り、ブラックキューブは意外に強い主張がない。かといって風景に溶け込んでいるわけでもない。この不思議な在り方を写真で伝えるのは難しそうだ。

 内部で始めるとしたら間違いなく「パッサージュ」なのだが、この空間は、写真が無限に撮れる。どこからどう切り取っても絵になる。ちょっと寄ったり引いたりするだけで、違う構図になる。それぞれが絵になるのだが、写真をたくさん並べると、似た印象になる……。

 建築雑誌各誌がほとんど同じアングルの写真で始まるという建築が少なくないが、この美術館はどうやって見せるのか、雑誌によってかなり差が出そうだ。雑誌を見比べるのが楽しみ。伝える側にも、新しい挑戦を求める建築である。依頼された仕事でなくてよかった……。

オープニング展の締めは 倉俣史朗!

 オープニング展「超コレクション展」もすごい。本展では、これまでに同館が収蔵した6000点を超えるコレクションから約400点の代表的な作品を選び、一堂に公開する。新設の施設なのに、そんなに収蔵品があるって、さすが準備期間40年の証し……。展示室の空間を見がてら、一部を見てみよう(撮影禁止の部分が多かったので、一部でご容赦を)。

 建築好きには、この壮大なオープニング展の締めのエリアが、倉俣史朗ゾーンであることがうれしい。名作絵画をたっぷり見た後でも、この「ミス・ブランチ」の「永遠を閉じ込めたような美しさ」は全く負けていなかった。

 オープニング展の会期は、3月21日までの2カ月弱。

 内覧会では設計者の遠藤克彦氏を見つけられなかったので、遠藤氏の想いは建築雑誌で読もう、っと。(宮沢洋)

■展覧会情報
開館記念展「超コレクション展」
会期:2022年2月2日~3月21日*月曜日休館(3/21を除く)
開催時間:10:00 ~17:00(入場は16:30まで)
会場:大阪中之島美術館 4、5階展示室
主催:大阪中之島美術館、NHK⼤阪放送局、NHKエンタープライズ近畿、読売新聞社
協賛:NISSHA
観覧料:一般1500円(日時指定事前予約優先制)
https://nakka-art.jp/exhibition-post/hello-super-collection/