前回は「内/外」と題して、僕にとっての建築の原点は建築の内部と外部のつながりにあり、その内外のつながりの妙味の中に「建築の誕生」の手掛かりがあるとの想いを述べさせていただいた。
今回は「建築の誕生」へと近づくための「道具」として、「デジタル/アナログ」について考えてみたいと思う。一般的には対立の構図として置かれそうなこの両者であるが、僕がたどり着いた「建築の誕生」への術は、「デジタルも、アナログも」というどん欲なものだ。
■生成系AI
昨年の後半からコロナによる規制が緩和され、講演会などで話をする機会も増えてきた。僕は、その度に飽きもせず「2023年はAI統合元年になる!」と繰り返し唱えてきた。その理由は、今、世間を騒がせている言語生成系AI の「ChatGPT」や、画像生成系AIの「Stable Diffusion」などを、2022年末、登場と同時に自分で実際に使ってみて「これは使える!」と確信したからである。しかし、どういうわけか、「建築の誕生」に最も近い立場にいる建築家の中には、デジタルを生理的に嫌うテクノフォーブが多い。「デジタルか? アナログ?」というテクノフォビアにさいなまれた方々をこの道に誘い込むため(笑)、ここでその使い勝手を簡単に再現してみたいと思う。
ChatGPTに「建築分野において、炭酸ガスの排出を、建設時にも実際の運用時にも、効率的に抑制するための具体的な手法を教えて。」と日本語で入力してみると(ChatGPTは本来は英語で使うのが標準だが、AIにより多言語を理解する能力も備えている)、すぐに次のような回答が返ってきた。(太字部)
「建築分野において炭酸ガス(二酸化炭素)の排出を抑制するためには、以下の具体的な手法を考慮することが重要です。
1.エネルギー効率の向上: 建物の断熱性能を向上させることで、冷暖房のエネルギー使用量を削減できます。断熱材の改良や高性能窓の導入などが効果的です。また、エネルギー効率の高い設備や照明の採用も重要です。
2.再生可能エネルギーの利用: 建物に太陽光パネルや風力発電装置を設置し・・・(中略)・・・効率的な運転を維持します。
これらの手法は、建築物のライフサイクル全体で炭酸ガス排出を削減するための方法です。建築家、設計者、施工者、運用管理者など、建築に関与するすべての関係者が協力して取り組むことが重要です。また、地域の規制や認証制度に基づいた指針や基準に従うことも推奨されます。」
このように、優等生的な回答がごく自然な日本語で「生成」された。悔しいが、「自分の頭ではまだかたちになっていなかった」もやもやしたものが整理整頓され、うまい具合にまとられているような気がした。不明点やもっと知りたいことがあれば、会話を続けることで次々と答えてくれる。いかがだろうか? すぐにでも仕事に使えそうではないか。
次は、よりデザインワークにより影響が大きそうな画像生成系AIを試してみた。画像生成系AIの一つ「Stable Diffusion」に、僕好みの建築や都市デザインを連想させる英単語8語ほどをカンマで区切りながら入力してみると、数十秒から数秒で次のような画像が生成された。パラメータを調整しながら、1時間ほどで約100枚の画像が「生成」できた。その中から「自分の頭ではまだかたちになっていなかった新しい方向を示唆」しており、実務のヒントになりそうなものを感覚的に選んだ。次の画像がそれだ。
(画像:いずれも山梨知彦がStable Diffusionを使って生成)
(さらに…)