東京・西新宿で10月18日(金)から20日(日)まで開催されている「ファンモアタイム新宿(FUN MORE TIME SHINJUKU)」というイベントを覗いてきた。中心となっているのは東京都だ。都は西新宿地区で道路・公園・街区が一体となったひと中心のまちづくりに取り組むとともに、スマートサービスの実装などを進めている。そのエッセンスを体験してもらうため、道路や公開空地など(具体的には都民広場、4号街路、11号街路下、新宿中央公園ファンモアタイムひろば)を活用して開催するイベントが「ファンモアタイム新宿」だ。新宿駅から4号街路(中央通り)の歩道を歩いていくと、一番最初に目につくのがこの小さな仮設建築。
大成建設が開発した「モバイルインフィル」だ。「ファンモアタイム新宿」の総合受付として使われている。
「モバイルインフィル」について大成建設のプレスリリース(2024年10月17日付け)ではこう説明している(太字部)
大成建設株式会社(社長:相川善郎)は、まちなかに人々が集い、休憩や様々な活動が行える移動式の滞在型空間「モバイルインフィル」の開発に着手しました。モバイルインフィルは、都市部のオープンスペースや道路空間を有効活用して、利用者のニーズに即応する「居場所」をいつどこにでも任意に設けることが可能です。このため、居心地の良い歩きたくなる空間を追求した新たな街づくりのモデルであるウォーカブルシティ実現への貢献が期待されます。
(中略)そこで当社は、いつどこにでも人々の「居場所」を提供することが可能な移動式の滞在型空間「モバイルインフィル」の開発に着手しました。モバイルインフィルは通常の建物と同じように、場所、利用者、使い方に合致した機能・性能を備えてデザインされ、訪れる人が快適にいきいきと暮らし、その街ならではの魅力を楽しめる居場所になります。また、複数のモバイルインフィルを組み合わせて、まとまった空間を創出することで、都市部に集う人々の多様な活動や非常時の防災活動の拠点としても活用でき、ウォーカブルシティのみならずレジリエントな社会の実現にも貢献します。
ざっくり言うと、車でけん引できる“高品質の屋台”、あるいは“簡単設置の東屋”だ。
木部は3センチ角のヒノキ製材を4本束ねることで、強度をもたせつつ、軽量化を図った。
これが全部スチール製だったら「ふーん」くらいで通り過ぎそうだが、木は人の目を引く。小さくても人目を引く、人を引き寄せるというのは仮設建築にとって重要だ。
今回のイベントに出ているのは「初号機+(プラス)」。2023年9月に横浜・山下公園でデビューした「初号機」の庇部分を改良し、設置を容易にした。初号機との比較はこちら↓。
今回の「初号機+」では、分割式だった庇をはね上げ式にした↓。
初号機から開発の中心になっている大成建設設計本部設計品質部建築技術室の野島僚⼦氏は、「少しでも設置の時間を短くできるように改良した。初号機はプロの職人の力を借りて2時間程度かかったが、今回は素人2人で30分で設置できた」と語る。
なるほど。今後「ミウラ折り」みたいな方法で、庇が一気にバッと広がるようにできたら面白そう。
まちのにぎわい創出だけでなく、災害時の拠点としての活用も想定している。まだ歩み出したばかりのプロジェクトだが、今後の進化を見るために「初号機+」の姿を記憶に刷り込んでおきたい。数年後には、「あれがこう進化したのか!」と驚く場面が来るかもしれない。
芝が敷かれた都庁の「都民広場」にびっくり
ところで、「ファンモアタイム新宿」のメイン会場となっている東京都庁の「都民広場」はイベント中、こんなふうに仮設の芝生広場となっている。これも驚いた。芝は人工のようだがそれでも気持ちいい。緑の力ってすごい。
さらに驚いたのは、どうやら都は本気で「恒設」の芝生広場にすることを検討しているようだ↓。そうだったのか!
筆者もかねてから、この都民広場は芝生にしてはどうか、と思っていた。ただ、反対する人もいるだろうし、いきなり芝生化したら、予期しない問題が起こるのかもしれない。期間限定で人々の反応を見てみるのは悪くない。
「モバイルインフィル」もしかり。実際の災害に出動する前に、技術のブラッシュアップを進めることができる。「〇〇博」的な大規模イベントよりも、こういう中規模イベントをどう生かすかの方が真の“都市力向上”には重要なのかもしれない。(宮沢洋)