「追悼展」と聞くと、悲し気な顔で行かなければならない感じがするが、本日開幕したこの追悼展は全くその必要はない。入り口からこんなお茶目な似顔絵が出迎える。
2021年5月3日に96歳で亡くなった内田祥哉氏(東京大学名誉教授)を描いたものだ。似顔絵は私が描いた。推定60歳ころの写真を見て描いた。
年表の右側には、晩年の写真を見て描いた似顔絵もある。追悼展だが、入り口でクスッと笑っていただければ幸いである。
3月14日から建築会館ギャラリー(東京都港区芝5-26-20)で、内田祥哉追悼展が始まった。内田氏の教え子たちを中心とする内田祥哉追悼展実行委員会と日本建築学会建築博物館委員会の主催。会期は3月22日までと、短い。
教え子たちに浸透する 「楽しく伝える」 姿勢
開幕日の朝には、本展の中心的役割を果たした深尾精一氏(首都大学東京名誉教授、下の写真の左)と福岡の建築家、古森弘一氏(右)が来ていた。
冒頭の似顔絵は、この2人から依頼されて描いた。「年表に使いたい」ということだったので、描いているときにはこういう↓紙に刷るものなのかと思っていた。
それが、こんな等身大に拡大されて使われるとは……。
内田氏の偉業の数々もさることながら、会場からビンビンと伝わってくるのは、「楽しく伝える」という姿勢。自分で描いておいてなんだが、大先生の追悼展に似顔絵を使うと言ったら、普通は反対する人がいてぽしゃりそうなものだ。内田氏の教え子たちは「それ、先生もきっと喜ぶ!」とまとまる人たちなのだろう。
ガラス窓に張られた「内田先生のことば」も面白い。教え子などによる内田語録が、丸めがねの中に書かれている。普通に書くと辛気臭くなりそうだが、これはおしゃれ!
驚愕の極小平面図
内田氏自身も表現の楽しさを重視していたことが分かる。
武蔵高等学校時代の生物のノートが展示されていた。表紙のレタリングが凝りまくり。当時から「表現する」ことが好きだったことが分かる。
自邸の図面も驚いた。
何が驚いたって? それはその小ささ。サイズを分かりやすくするために、サインペンと並べて撮ってみた。
これは明らかに、「こんなに細い線(カラスグチ?)で、こんなに小さく図面が描けます!」ということを話のとっかかりにしたくて描いている。単なる情報としての図面ではなく、コミュニケーションツールなのだ。
ほかにも初披露の国会図書館コンペ応募案があったり、今っぽいVRコーナーがあったりと、かなり見応えありなので、ぜひ足を運んでみてほしい。(宮沢洋)
■内田祥哉追悼展
開催期間:2022年3月14日(月)~22日(火)、9時~19時30分
会場:建築会館ギャラリー(東京都港区芝5-26-20)
入館料:無料
主催:内田祥哉追悼展実行委員会・日本建築学会建築博物館委員会