速報:SANAA展@ギャラリー・間が開幕、妹島・西沢両氏から直接聞いた“鑑賞の心得”

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 東京・乃木坂のTOTOギャラリー・間(東京都港区)で、明日、10月22日(金)から妹島和世+西沢立衛/SANAAの展覧会「環境と建築」が始まる。コロナ禍で1年半待ちとなっていた待望の展覧会だ。展示物は基本的に進行中のプロジェクトに関するもので、見たことのないものばかり。本日、妹島和世・西沢立衛両氏の案内で行われた内覧会(なんて贅沢!)を速報する。

(写真:宮沢洋)

 といっても、SANAAの進行中プロジェクトがすごいことは誰が想像しても明らか。「そもそも行くつもりだから余計なことを書くな」と言われそうなので、ここでは同展を見る際の“心得”というべき2つの点についてだけ書く。

鑑賞の心得1:展示物同士がつくる地形を味わえ!

 1つ目は会場構成。会場に足を踏み入れたときの第一印象は「展示が低っ!」だった。

入り口のある3階(下のフロア)の展示(写真:宮沢洋)

 この理由を2人に聞くと、西沢氏は「今回は地形と建築との関係性を見せたかったので、下のフロア(ギャラリー・間は会場が2層構成)では模型を俯瞰して見せるようにした。模型の内部を見せたいものほど高くなっている」と語り、妹島氏はそれに補足して、「それぞれの高さの変化が全体として地形のように感じられることを意識した」と語る。

3階の展示

 一番低いものは床に直置きだ。防護柵はない。ギャラリー・間を見に来る客層を信じているからこそできる画期的な展示。

 確かに全体を見渡すと、展示物が床から隆起していくようにも見える。TOTOギャラリー・間の筏久美子代表に聞いたところでは、妹島氏は昨日(10月20日)、自ら展示物を微妙に動かして位置を調整し続けていたという。この空間自体が妹島氏監修の建築空間なのだ。

挨拶する筏久美子代表 。模型の低さが分かる

 ということで、会場では個々の展示に見入るだけでなく、全体の地形感をじっくり味わってほしい。

鑑賞の心得2:屋外展示のステンレスの板は…

 これは私と同じ勘違いをする人が多そうなので、先に言っておく。ギャラリー・間の特色でもある屋外展示スペースに、今回は「Puyuan Design and Event Center」(中国、設計:妹島和世建築設計事務所)の巨大な模型が置かれている。これも低い。そして、透明な繭のようなものの周りに、血管が広がるようにステンレスの板が伸びている。

4階のブリッジから見下ろす

 私はこれを見て、ステンレスが「庇」なのだと思った。「ああ、イビラプエラ公園(@サンパウロ、設計:オスカー・ニーマイヤー)みたいなのをつくるんだな」と思ったのだが、全く違っていた。

 妹島氏の説明を聞いてびっくり。「この部分は川です。この透明な部分が建物」。

「ここは川」と説明する妹島氏

 え、川に浮かぶガラスの繭? 妹島氏によると川の中洲のような部分を、まるまる透明な被膜で覆うのだという。長さ100m超。アンビリーバブル。

 上のフロアには、その被膜の構造模型が置かれている。これもすごいのだが、ネタバレになるので会場でじっくり見てほしい。

4階(上のフロア)では各プロジェクトのディテールを展示している
「Puyuan Design and Event Center」 の架構模型
4階の展示

 会期は明日10月22日(金)~2022年3月20日(日)まで。コロナ禍で開幕が1年半延びたが、待った甲斐のある展覧会だ。今は事前予約制なのでご注意を。公式情報もろもろは下記に。(宮沢洋)

■展覧会コンセプト:環境と建築
私たちは、「環境と建築」ということを常に考え続けてきました。
建築をつくることで境界をつくり出すのではなく、私たちの行為と環境が繋がったものとなるような場所をつくっていきたいと思っています。
本展覧会では「環境と建築」をテーマとして、日本、中国、ヨーロッパなど各地で近年取り組んでいるプロジェクトを中心に、住宅、大学、美術館、劇場などを、模型や図面の展示によってご紹介します。
SANAA・妹島和世建築設計事務所・西沢立衛建築設計事務所の3つの事務所それぞれの活動が、お互いに影響を及ぼしながら、それぞれのプロジェクトで「環境と建築」をどのように考え、実現しようとしてきたのか。また、事務所を始めたばかりの頃から現在に至る過程で、「環境と建築」の捉え方や実現方法がどのように変わってきているのか。
私たち自身も、展覧会を通して新たな発見をできればと思っています。 妹島和世+西沢立衛

■展覧会詳細
展覧会名(日):妹島和世+西沢立衛/SANAA展 「環境と建築」
展覧会名(英):KAZUYO SEJIMA + RYUE NISHIZAWA / SANAA: Architecture & Environment
会期:2021年10月22日(金)~2022年3月20日(日)
開館時間:11:00~18:00
休館日:月曜・祝日・年末年始休暇[2021年12月27日(月)~2022年1月6日(木)]
※状況により、会期や内容等を変更する場合がございます。
ご来館の際には、TOTOギャラリー・間ウェブサイト(https://jp.toto.com/gallerma)にて最新情報をご確認ください。
入場料:無料、事前予約制*
*新型コロナウイルス感染症拡大を受け、お客様および当社従業員の健康と安全を第一に配慮し、TOTOギャラリー・間内での混雑と濃厚接触の回避を目的とした防止策を実施します。
会場:TOTOギャラリー・間(〒107-0062 東京都港区南青山1-24-3 TOTO乃木坂ビル3F)
東京メトロ千代田線乃木坂駅3番出口徒歩1分
主催:TOTOギャラリー・間
企画:TOTOギャラリー・間運営委員会
(特別顧問=安藤忠雄、委員=千葉 学/塚本由晴/セン・クアン/田根 剛)
後援:(一社)東京建築士会/(一社)東京都建築士事務所協会/(公社)日本建築家協会関東甲信越支部(一社)日本建築学会関東支部
TOTOギャラリー・間ウェブサイト(事前予約もこちら):https://jp.toto.com/gallerma

■関連書籍
『KAZUYO SEJIMA RYUE NISHIZAWA SANAA』
1987-2005 VOL.1/2005-2015 VOL.2/2014-2021 VOL.3
発行年月:2021年12月10日(予定)
定価:2万4200円(3巻セット)
発行:TOTO出版(TOTO株式会社)