1年遅れのヴェネチア国際建築展、「異例」の日本館はこうなった!

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 コロナ禍のため1年延期となっていた「第17回ヴェネチア・ビエンナーレ国際建築展」が5月22日から始まる。会期は11月21日までの半年間。国際交流基金は、5月20日~21日に行われる現地での関係者・報道関係者向け内覧会に合わせて、20日17時~18時(日本時間)に日本館に関するオンライン記者発表会を開催した。日本館(設計:吉阪隆正)の内部を資材置き場とし、屋外にインスタレーションをつくる「異例」の展示の様子がリポートされた。

日本館内部には、日本から移送された木造中古住宅(高見澤邸)の資材が、その増改築の変遷と居住者の歴史などと共に展示されている(撮影:国際交流基金、撮影日:2021.5.19)
Image drawing (garden) (c) DDAA + villageⓇ

 全体の総合テーマは「How will we live together?(どうやって一緒に生きていくのか?)」。日本館のテーマは「ふるまいの連鎖:エレメントの軌跡」。日本館のキュレーターは建築家の門脇耕三氏(明治大学准教授・アソシエイツパートナー)。

門脇耕三氏 (c) SHINTO TAKESHI

 ヴェネチア・ビエンナーレ国際建築展はイタリア・ベネチアで、美術展と交互に2年に1度開催される。日本館の展示は毎回キュレーターが代わる。参加する建築家などのチーム構成は選考段階で、キュレーター候補者自身が決めて提示する。

日本からリモートで職人を指示

 キュレーターの選考は2019年に4者指名の提案方式で実施され、門脇氏は、山梨知彦氏、馬場正尊氏、豊田啓介氏を破って選ばれた。日本の中古木造住宅を解体して会場に送り、別の形で再構築するもの。選出された段階では日本の職人を連れていってつくることをイメージしていたが、コロナ禍のため、イタリアの職人を日本からリモートで指示して作業を進めることになった。

Packaged wooden materials(c) Jan Vranovský
Axonometric drawing of the concept(c) DDAA + villageⓇ

 参加建築家・デザイナーなどは下記。
長坂 常(スキーマ建築計画代表)
岩瀬 諒子(京都大学助教・岩瀬諒子設計事務所代表)
木内俊克(木内建築計画事務所代表)
砂山太一(京都市立芸術大学准教授・sunayama studio代表)
元木大輔(DDAA代表)
長嶋りかこ(village®代表)
リサーチャー:青柳 憲昌(立命館大学准教授)、樋渡 彩(近畿大学講師)
エディター:飯尾次郎(スペルプラーツ代表)
アドバイザー:太田佳代子(CCA「c/o Tokyo」キュレーター)

Image drawing (piloti)(c) DDAA + villageⓇ
Image drawing (interior) (c) DDAA + villageⓇ

 日本館のコンセプトはこちら

現地の様子は…

 国際交流基金が主催した記者発表会では、現地と東京とを中継でつなぎ、キュレーターの門脇耕三氏や参加建築家らが日本から展示風景を紹介した。

 この日、公開された屋外展示の写真は下記の2点。

日本庭園。日本館エントランスに至る通路の途中には、元木大輔(もとぎ・だいすけ)氏が、木造中古住宅(高見澤邸)の屋根の構造をそのまま使い、その上に柔らかな素材を貼った来館者のための休憩所を制作した(撮影:国際交流基金、撮影日:2021.5.19)
再構築された木造住宅のエレメント(詳細)。日本館のエントランス部分には、なんども増改築を重ねていたことが特徴であった今回の木造中古住宅(高見澤邸)の外壁を、そこでの生活の痕跡とともに、3D技術やデジタルコラージュなどを用いて再構築した(撮影:国際交流基金、撮影日:2021.5.19)

 今回の国際建築展の審査員長は、SANAAの妹島和世氏が務める。日本人の審査員長就任は初めて。(宮沢洋)