会場構成は田根剛氏、「DESIGN MUSEUM JAPAN展」@国立新美術館は西沢立衛氏や乾久美子氏も出展

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 NHKと国立新美術館が主催する「DESIGN MUSEUM JAPAN展 集めてつなごう 日本のデザイン」が11月30日(水)から国立新美術館(東京・乃木坂)で始まった。会期が12月19日(月)までと短いので、11月30日夜に行われた報道内覧会の様子をさくっと紹介する。

パリを拠点とする 田根剛氏も来日(写真:宮沢洋)

 会場構成は、参加クリエーターの1人でもある建築家の田根剛氏が担当した。計13人の参加クリエーターの中には、建築家の西沢立衛氏と乾久美子氏が含まれる。

 以下、リリースより(太字部)。

 縄文時代より1万年以上ものあいだ、独自の生活文化を育んできた日本。そこには、世界がまだ気づいていない、豊かな物語を持つ〈デザイン〉があります。NHKでは、全国47都道府県にある放送局のネットワークを駆使し、第一線で活躍するクリエーターたちとともに各地の生活文化のリサーチをはじめました。(中略)「これもデザインと呼ぶの?」と疑問を持つものがあるかもしれません。そう、どれも、日本の普通の生活の中にあるものばかりです。

 しかし、クリエーターたちにとっては、触発され、わくわくした気持ちになって次のおもしろい物を組み立てる原動力になるものです。それらをわたしたちは〈デザインの宝物〉と呼び、その背後にある物語とあわせて番組や展覧会で紹介します。番組や展覧会をきっかけに、それぞれが自分の身の回りにある〈デザインの宝物〉を探しはじめるとしたら、毎日は喜びと驚きに満ちたものに変わるのではないでしょうか。

■参加クリエーター
山形 皆川明(デザイナー) 
新潟 西沢立衛 (建築家)
山梨 柴田文江 (プロダクトデザイナー)
静岡 乾久美子 (建築家) 
富山 須藤玲子 (テキスタイルデザイナー)
和歌山 三澤遥 (デザイナー)
岡山 原研哉 (グラフィックデザイナー)
福岡 廣川玉枝 (服飾デザイナー)
鹿児島 森永邦彦 (ファッションデザイナー)
兵庫 辻川幸一郎 (映像作家)
静岡 水口哲也 (エクスペリエンスアーキテクト)
石川 田川欣哉 (デザインエンジニア)
岩手 田根剛 (建築家)

左端が田根剛氏、右から4人目が乾久美子氏。西沢立衛氏は出張のため欠席

 クリエーターたちの各地での〈デザインの宝物〉リサーチは、まずそれぞれの地域で番組として放送。続いて、それぞれの地域で展示(2022年10月~11月)したあと、11月30日(水)に開幕する東京展(国立新美術館)で、昨年度先行実施した5地域(鹿児島、兵庫、静岡、石川、岩手)とあわせ計13地域の分が一堂に会します。また、2023年春~2024年にかけて、海外3地域のジャパン・ハウス(サンパウロ(ブラジル)、ロサンゼルス(アメリカ)、ロンドン(イギリス))での巡回展も予定しています。

 …というNHKの地域番組を兼ねた企画である。

 これは会場構成の田根氏の狙いなのだと思うが、展示がぶつ切りになっていて、出展者ごとの境目がよく分からない。だいぶ見て回ってから気づいたのだが、展示にはルールがある。各人6個の箱をこういう方法↓で使っている。これは、最初に知っておいた方がいい。

 「集めてつなごう」というタイトルどおりに、集まった展示物の隙間を自分自身でつなごう、という意図なのだろう。だが正直に言うと、それぞれの視点がばらばら過ぎて、全体のストーリーをつなぐには見る側に相当のスキルがいる(私には無理!)。それよりは、13人が第一線のクリエイターなので、それぞれの着眼点が実作とどうつながっているかを考える方が面白いと思う。

 それならいろいろ書けそうなのだが、考えがまとまった頃には会期が終わってしまいそうなので、このリポートは公式サイトの説明文でご容赦を。

まずは建築家3氏の展示から…

■西沢立衛 (建築家)
「佐渡・宿根木集落」 〈海の民の合理性〉あふれる町並み (佐渡/新潟県)

西沢立衛。建築家。西沢立衛建築設計事務所代表、横浜国立大学大学院建築都市スクールY-GSA教授。1995年に妹島和世と建築ユニットSANAA設立。環境と一体となる軽やかな建築で世界的に知られ、建築界のノーベル賞であるプリツカー賞受賞。展覧会や家具のデザイン、空間構成など幅広く活動している。代表作に、「済寧市美術館」「十和田市現代美術館」「豊島美術館」、SANAAとしての仕事に「金沢21世紀美術館」「ルーヴル・ランス」などがある。

■乾久美子 (建築家)
「小さな風景」 無名の工夫の集積にデザインを見る (富士宮・伊豆/静岡県)

乾さんご本人です
ブラタモリ風?
知る人ぞ知るけんさぶろう画伯( 乾氏の漫画ネーム)の4コマ漫画も!

乾久美子。乾久美子建築設計事務所代表、横浜国立大学都市イノベーション学府・研究院 建築都市デザインコース(Y-GSA)教授。青木淳建築計画事務所勤務を経て独立。社会における「コモンズ(共有財)」をはぐくむ空間やきっかけづくりを大切にして、「小さな風景からの学び」というリサーチの経験を生かしながら、コモンズの多様な可能性を探っている。代表作に「日比谷花壇日比谷公園店」、「共愛学園前橋国際大学4号館Kyoai Commons」、「七ヶ浜中学校」、「釜石市立唐丹小学校・釜石市立唐丹中学校・釜石市児童館」、「延岡駅周辺整備プロジェクト 延岡市駅前複合施設 エンクロス」「宮島口旅客ターミナル」などがある。

■田根剛 (建築家)
「縄文のムラ」 1万年前の住空間にもデザインがあった (一戸/岩手県)

田根剛。建築家。1979年東京生まれ。ATTA – Atelier Tsuyoshi Tane Architectsを設立、フランス・パリを拠点に活動。場所の記憶から建築をつくる「Archaeology of the Future」をコンセプトを基に、現在ヨーロッパと日本を中心に多数のプロジェクトが進行中。主な作品に『エストニア国立博物館』、『弘前れんが倉庫美術館』、『ザ・アルサーニ・コレクション財団・美術館』、『帝国ホテル新本館(2036年完成予定)』など。フランス文化庁新進建築家賞、フランス国外建築賞グランプリ2021、第67回芸術選奨文部科学大臣新人賞、第67回毎日デザイン賞2021など多数受賞 。著書に『TSUYOSHI TANE Archaeology of the Future』(TOTO出版)など。

さすがデザイン界の大御所の「伝える力」

 建築家ではないけれど、さすがだなと思ったのが、デザイン界の大御所、原研哉氏の展示。見る側に一瞬で伝わるコンセプトの強さと見せ方の分かりやすさはとても勉強になる。

■原研哉 (グラフィックデザイナー)
「プロペラ」 合理性が生む揺るぎないかたち (倉敷/岡山県)

原研哉。日本デザインセンター代表、武蔵野美術大学教授。グラフィックデザインの枠にとらわれず、展覧会のキュレーション、書籍の執筆などを通じてデザインが持つ潜在力、一人ひとりに秘められた才能を「可視化」する活動を行う。世界各地を巡回し、広く影響を与えた「RE-DESIGN:日常の21世紀」展をはじめ、「HAPTIC」「SENSEWARE」「Ex-formation」など既存の価値観を更新するキーワードを展開。無印良品のアートディレクション、松屋銀座、森ビル、蔦屋書店、GINZA SIX、MIKIMOTO、ヤマト運輸のVIデザインなど、活動領域は極めて広い。「JAPAN HOUSE」では総合プロデューサーを務め、日本の可能性を喚起する仕事に注力している。

 繰り返しになるが、会期が11月30日(水)から12月19日までと短いので、興味を持った人は急いで乃木坂へ。(宮沢洋)

■東京展開催概要
展覧会名:「DESIGN MUSEUM JAPAN展 集めてつなごう 日本のデザイン」
会期:2022年11月30日(水)~12月19日(月)
会場:国立新美術館 企画展示室1E (〒106-8558 東京都港区六本木7-22-2)
開館時間:10:00~18:00(金曜日は20:00まで) ※入場は閉館の30分前まで
観覧料:無料
主催:NHK、国立新美術館
協力:一般社団法人Design-DESIGN MUSEUM
問い合わせ:ハローダイヤル 050-5541-8600
公式サイトhttps://www.nact.jp/exhibition_special/2022/dmj/
巡回情報:2023年春~2024年 3地域を巡回
ジャパン・ハウス サンパウロ(ブラジル)、ロサンゼルス(アメリカ)、ロンドン(イギリス)