豪雨浸水から9カ月、「ホキ美術館」が機械室を地上に移し8月1日再開

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 昨年10月の豪雨で浸水し、長期休館していた「ホキ美術館」(千葉市・土気)が8月1日に再オープンした。ホキ美術館は、日建設計の山梨知彦氏(現・同社常務執行役員、チーフデザインオフィサー)が設計の中心となって2010年に完成した。国内では珍しかった写実絵画専門の美術館で、今年11月で開館10周年となる。昨年10月25日、豪雨により地下2階の収蔵庫や電気室、ギャラリーが浸水。収蔵作品の約2割に当たる約100点が水にぬれ、電気設備も被害を受けた。

(写真:特記以外は宮沢洋)

 復旧とコロナ対策のために、約9カ月ぶりのオープンとなる。初日の8月1日に、同館を訪ねた。改めてこの建築の魅力を見てみよう。

 よく見る写真のイメージでは森の中にあるように思うが、公園(千葉市昭和の森)は隣地で、建物自体は住宅街の中にある。この雑多な環境に、内外の視線をうまく切り取りながら、こんな非現実的な造形をつくり上げたことに改めて感心する。

 地上2階建てに見えるが、法的には地下2階・地上1階。敷地が傾斜しており、濃いグレーの片持ち部分(下の写真)が地上1階となる。

 この濃いグレーの部分(ギャラリー1)は鋼板構造。片持ちで約30m張り出している。仕上げは雲母状酸化鉄塗装。南側の壁面の下部には、ガラスのスリットが水平に伸びているが、この日は室内への反射を防ぐためにカーテンを閉じていた。

 入り口には東西両方向からアプローチできる、下の写真は駐車場のある西側からのアプローチ。

 アートのようなトゲトゲは柵。

 上の写真はエントランス。ここが地下1階となる。コロナ対策のため、入り口で検温する。密集を防ぐために、入り口側(左)と出口側(右)を分けて案内していた。

 いったん大開口で駐車場の方(西側)を見渡してから、180度折り返し、うねるような平面のギャラリー1(地上1階、下の写真)へ。

(写真:ホキ美術館)

 壁も天井も鋼板躯体現し。鋼板なので、作品を磁石で固定できる。照明はLED。完成当時はLED照明も斬新だった。

 上の写真はギャラリー1の先端部分。30mの片持ちの先端だが、制振装置が入っており、全く揺れない。この日は、反射防止のため、スリット(写真右下)のカーテンが閉じており、“片持ち感”が実感できず、ちょっと残念。

 ギャラリー1ではリニューアル記念展として森本草介氏(1937~2015年)の作品を紹介する「森本草介展」を開催中。会期は11月16日まで。森本作品は同館コレクションの第1号で、同館の「原点」でもある。
 
 地下1階のギャラリーへと下りる。階段の手すりがいい!

(写真:ホキ美術館)
(写真:ホキ美術館)

 地下2階の東端の展示室。この部屋は、昨年10月25日の豪雨でひざ下付近まで浸水した。

 地下2階のメインギャラリー(下の写真)は一転して黒い壁。ここも豪雨で浸水したフロア。もともとこの壁は黒い。

(写真:ホキ美術館)

 地下2階の階段裏が面白い。蹴上げの板がなく、光の縞模様が宙に浮かぶ。人が通ると、シルエットがCGのように見える。

地下2階の電気設備を地上に

 昨年10月25日の豪雨では、1カ月分の水量が数時間で降り、建物東側のスロープ(下の写真)から地下2階の収蔵庫とギャラリー、電気室に浸水した。

 水にぬれた作品約100点は洗浄や消毒、額の取り換えを実施。ぬれた床や壁の交換・修復作業にも取り組んだ。油圧式エレベーターも交換した。

 地下2階の電気室は上の階に移した。当初は樹木を植えてあった中庭部分に、機械設備が置かれているのが分かる(上の写真の中央)。さらに今後、建物内に水が入ることのないよう、東側のスロープには止水板を設置する予定だという。
  
 日建設計のWEBサイトを見ると、この美術館の招待券プレゼントを募集していた。「リニューアルオープンを記念して、同館鑑賞チケット(2枚)とBunkamuraにて開催された『超写実絵画の襲来』展の図録をセットで、抽選30名様にプレゼントいたします」とのこと。8月6日(木)が応募締切のようなので、タダで見たい方は今すぐ応募を!(↓)
https://www.nikken.co.jp/ja/news/news/20200715.html

■ホキ美術館・建築概要
所在地:千葉市緑区
敷地面積:3862.72㎡
延べ面積:3722.39㎡
階数:地下2階・地上1階
構造:鉄骨造、一部鉄筋コンクリート造
竣工:2010年8月(リニューアル2020年8月)
所在地:千葉市緑区あすみが丘東3-15 
開館時間:午前10時~午後5時30分(2020年8月1日(土)より)
※日時指定の入館予約制。電話、または、同館HPにて予約受付中
休館日:毎週火曜日

(宮沢洋)