北陸新幹線が3月16日(土)、金沢から敦賀まで延伸されて開通する。筆者(宮沢)はこれに先立ち、JRTT(独立行政法人鉄道・運輸機構)が発行している広報誌『鉄道・運輸機構だより』(季刊)の2024冬季号で、延伸された北陸新幹線の6駅をイラストでリポートした。本サイトでは、この仕事のついでに見たり、以前に見たりした「延伸エリアの注目建築」を紹介したい。
(駅そのものについては元の記事を読んでほしい。PDF版→「画文家 宮沢洋が巡る 北陸新幹線(金沢・敦賀間)新駅図鑑」)
1)小松駅周辺
まずは金沢に近い小松駅から。
小松駅東側の目の前には「サイエンスヒルズこまつ 」。設計は元倉眞琴/スタジオ建築計画+伊藤麻理/UAO。2013年竣工。屋上が地上から連続するグネグネの丘。
小松駅西側の丸の内公園には黒川紀章氏が設計した「小松市立本陣記念美術館」(1990年)がある。黒川氏らしい伝統の解釈。
石川県小松市丸の内公園町19
小松駅から少し北に戻ると、能美市の小松マテーレ本社敷地内に「ファブリック・ラボラトリー [fa-bo]」がある。
隈研吾氏の改修設計で2015年に完成。構造設計は江尻建築構造設計事務所。拙著『隈研吾建築図鑑』(2021年刊、アマゾンはこちら)でも取り上げた“びっくり建築”だ。
「CFロッドの引張ブレース効果による、耐震補強提案であり、屋根レベルと地上レベル(基礎レベル)を繋ぐことで、建物全体の補強効果を得ることが可能」(小松マテーレのサイトより)。
石川県能美市浜町ヌ167番地 小松マテーレ本社敷地内
見学予約:https://www.komatsumatere.co.jp/cabkoma/fabo.html
2)加賀温泉駅周辺
続いて加賀温泉駅へ。
加賀温泉駅から加賀周遊バスで山方向に向かい、山代温泉総湯・古総湯バス停下車。「山代温泉 古総湯」と「湯の曲輪(ゆのがわ)」。内藤廣氏と南雲勝志氏のディレクションで江戸中期の温泉街の街並みを再生した。
石川県加賀市山代温泉万松園通2-1
向かいに立つ「山代温泉 総湯」は内藤廣氏の設計による新築。2009年竣工。内部はそれぞれの個性がある。2施設に両方入浴できるセット券があるので、せっかく行くなら両方体験しよう。
古総湯・総湯もいいけれど、内藤廣氏の真骨頂はこの「九谷焼窯跡(くたにやきかまあと)展示館」だろう。2002年。出世作の「海の博物館 収蔵庫」にも似た静寂の空間。
石川県加賀市山代温泉19-101-9
加賀温泉駅に戻り、今度は加賀周遊バスで海方向に向かう。目指すは柴山潟のほとりに立つ「片山津温泉総湯」。谷口吉生氏の設計で2012年に竣工したモダニズム共同浴場の傑作だ。ぜひ片山津温泉に1泊して、2つの風呂(湖側と陸側)を両方体験してほしい。
石川県加賀市片山津温泉65−2
片山津温泉街の中心から柴山潟沿いに1㎞ほど北西に向かうと「中谷宇吉郎 雪の科学館」。設計は磯崎新氏。1994年竣工。磯崎節全開の建築も面白いが、展示も面白い。
石川県加賀市潮津町イ−106
展示を見て疲れたら、堀部安嗣氏が設計したケーキ店「イヴェール・ボスケ」でゆったりと。 2012年竣工。
石川県加賀市小塩辻町60−1
3)芦原温泉駅周辺
前編の最後は芦原(あわら)温泉駅。
駅前に2023年にできた「アフレア」(JR芦原温泉駅前周辺整備 西口賑わい施設)。坂茂?と思うが、設計は福井市の木下設計。
芦原温泉には小堀哲夫氏が設計した旅館「べにや」(2021年)があるが、行く時間がなかったので、写真を見たい方は小堀氏のサイトで(こちら)。
後編(3月17日公開予定)は、福井駅から敦賀駅に向かう。(宮沢洋)