巨大な「百貨店建築年表」は発見の宝庫、高島屋史料館TOKYOで「百貨店展」始まる

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 日本橋高島屋S.C.本館の「高島屋史料館TOKYO」4階展示室で9月7日(水)から「百貨店展――夢と憧れの建築史」が始まる。会期は2023年2月12日(日)まで。入場無料。開幕前日の9月6日午後に行われた内覧会を見てきた。

入り口で出迎えるのは石本喜久治の出世作、白木屋日本橋店のファサード模型。本展のためにつくったもの(写真:宮沢洋)

 以下は、公式サイトより概要の引用。

本展は、近代的な百貨店・デパートメントストアが誕生した20世紀初頭から、大型商業施設が多数出現する現代までを、主に日本の百貨店建築のファサード、あるいはその空間の変遷に注目しながら、年表形式でたどろうとする試みです。

これは、通常は脇役に留まりがちな年表を主役にするという、挑戦的な展示でもあります。さらには、現代のショッピングモールが外観に装飾を持たず、内装に本質がある*ことを鑑みると、示唆に富むアプローチとも言えるでしょう。(*東浩紀・大山顕『ショッピングモールから考える』幻冬舎,2016)

特に注目するのは、戦前の実験的な百貨店建築です。当時の百貨店は、人々の憧れを誘うもので、単なるショッピングのための空間を超え、エンターテイメント、ひいては文化装置として機能していました。そして、こうした百貨店の機能と役割は、その建築空間やファサードに色濃く現れました。

(中略)現存しませんが白木屋日本橋店(1928年、石本喜久治設計)のファサードは、壁面にガラスを用いて、重厚な百貨店建築を脱しようとする非常にモダンなものでした。2019年にグランドオープンした大丸心斎橋店(1922年心斎橋筋側・1933年御堂筋側、ヴォーリズ建築事務所設計)は、往時の百貨店建築の華やかさを今に伝える貴重なものといえるでしょう。

本展が、商業や消費活動がいかに現代の都市形成に深く関与してきたかを再認識する機会になるとともに、これからの未来の可能性を考える契機になれば幸いです。

 本展は浅子佳英氏(建築家・編集者/PRINT AND BUILD)と、菊地尊也氏(建築研究者)が監修、小泉立氏(建築家/PRINT AND BUILD)が協力して実現した。

企画意図を説明する監修者の浅子佳英氏(左)と菊地尊也氏(右)

 建築好きの心をとらえるのは、やはり壁の2面を使った巨大年表だろう。髙島屋でやっているので髙島屋中心かと思いきや、全国の主要な百貨店の歴史を俯瞰的に見ることができる。情報密度と質がとてつもなくて、内覧会でなかったら2時間くらい見ていられそう。これは菊地尊也氏がもともと研究していたものをベースにつくったという。

1920年代~30年代は百貨店建築黄金期だ

 年表は見る人によってツボが違いそうだが、私(宮沢)が特にはまったのは、西武百貨店の歴史の中のここ。

 我がOffice Bungaの拠点である池袋西武の初期写真だ。その先を追っていくと、この写真↓にびっくり。「1957年 東京丸物開店(設計:村野藤吾)*池袋東口民衆駅(池袋ステーションビル)に入居」とある。

 これって、今のパルコ! 外装の仕上げは変わっているけれど、壁面の割り付けはほぼ同じ! 村野藤吾の作品リストに「東京丸物」というものがあるのは知っていたが、自分の本拠地に現存していたとは。不覚……。これはいつか「池袋建築巡礼」で取り上げねば。

 今回、エリア別百貨店地図を展示物兼ハンドアウト(持ち帰り可)としているのも面白い。池袋がなかったのがちょっと残念だったが、主要エリアを全部つくったら大変過ぎるのもわかる。

 展示物のどれをとっても校正と関係者確認が大変そうで、制作陣に頭が下がる展覧会だ。

「百貨店」と「ショッピングセンター」の違いも勉強になった(いつか使える!)

 ところで、監修者の1人である菊地尊也氏と雑談していたら、菊地氏は百貨店建築全般よりも「百貨店で開催された展覧会の歴史」の方が詳しいという。ああ、それは見たい! すごく勉強になりそう(今後のネタになる)。

菊地尊也氏は東北大学の五十嵐太郎教授の教え子で、五十嵐氏とたくさんの共著がある

 その話を聞くと、今回の“百貨店全史”を皮切りとして、「百貨店の展覧会史展」「百貨店の屋上史展」「百貨店のエレベーター史展」「百貨店の内装史展」……と、いろいろできそうだ。むしろ細かく分けた方が見たくなる。楽しみにしているので、ぜひお願いします!(宮沢洋)

■展覧会概要
百貨店展――夢と憧れの建築史
展示期間: 2022年9月7日(水)→2023年2月12日(日)
※新型コロナウイルスの感染拡大状況等を踏まえ、臨時に休館日・開館時間を変更する場合があります。
開館時間: 11:00~19:00
休館日: 月・火曜日(休館日が祝日の場合は開館します)、年末年始(12月26日(月)→2023年1月3日(火))
入館料: 無料
展示場所: 高島屋史料館TOKYO 4階展示室
(東京都中央区日本橋2-4-1)
※5階旧貴賓室は、セミナー開催時のみ開館します。
主催: 高島屋史料館TOKYO