熊本城天守4月26日再開、震災から5年で熊本駅前や桜町が大刷新〈フォトルポ〉

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 熊本城の天守閣が内部見学を4月26日から再開する。2016年4月14日夜と16日未明に発生した熊本地震から5年。震災の取材以来5年ぶりに見て回った熊本市内は、びっくりするほど以前と変わっていた。

(写真:宮沢洋)

 まずは、熊本城。天守閣(上の写真)の内部の見学が4月26日(月)から再開される。訪れたのはその前なので、内部がどう変わったかは見ていないが、それでも十分に楽しめた。1つには、以前よりも屋根がきれいになったこと。

 瓦をふき替えた屋根は、瓦の重なり部分のしっくい塗りにより、遠目には「真っ白」。黒い板壁との対比が鮮やかだ。

 そして、天守閣に至るまでの「熊本城特別見学通路」が素晴らしい。復旧工事期間のみの空中回廊で、全長約350m。設計は日本設計。昨年6月にオープンした。

 「地上約6mの高さから、これまでと違った新しい視点で熊本城を間近に見ることができる空中回廊です」「『今しか見られない』熊本城をお楽しみください」という謳い文句に偽りなし。明らかに、以前の地上ルートよりも景色がいい。石垣などの修復作業の様子が間近で見えるのも面白い。

 支柱を極力減らすために歩廊をカーブさせたり(リングガーダー構造)、石垣をギリギリよける形でアーチを架けたりと、建築的な見せ方もぐっと来る。床に県産材のヒノキを使用しているのも、歩いていて心地いい。期間限定ではあるが、復旧工事は20年かかるといわれており、急がずとも見られる。

ヒューマンな巨大開発?「サクラマチクマモト」

 熊本城から熊本駅方向に向かう途中の桜町には、2019年9月、「SAKURA MACHI Kumamoto(サクラマチクマモト)」がオープンした。エリア全体の設計者は日建設計・太宏設計事務所JV、施工者は大成建設・吉永産業・岩永組・三津野建設・新規建設JV。総事業費777億円という巨大再開発だ。

 これは階段状の屋上緑化がすごい。時間がなくて、全部見て回ることができなかったのだが、模型を見ると、こんなことになっている。

 1階の内部には日本最大のバスターミナル、「熊本桜町バスターミナル」があり、見ているとひっきりなしにバスが出入りしている。1日に約4000台のバスが行き来するのだという。

 バスターミナルがあるから、ということもあるのだろうが、商業施設がまだ開いていない朝の時間帯から2階テラスが開放されており、多くの人が木陰で本を読んでいた。ちらっと見ただけの印象ではあるが、超巨大な規模にしてはヒューマンさを感じさせる再開発だ。

熊本駅東口は安藤忠雄&西沢立衛で刷新

 そして、熊本駅前へ。2019年3月に完成した新駅舎のデザインは安藤忠雄氏。白川口(東口)側の外壁は、熊本城の石垣の「武者返し」をイメージしたもの。パースで見ていたときにはどうなんだろう(安っぽく見えなのか?)と心配していたが、さすが安藤氏らしいシャープな仕上がりで安心した。

 安藤ファンは、セビリア万博日本館(1992年)を思い出す外観だ。

 駅前に広がる広場は、ガラリと変わった。今年3月21日にオープンした新広場は、シンボル的な存在だった西沢立衛氏設計の“しゃもじ形庇”(JR駅と路面電車の乗り場をつないでいた)がなくなり、同じく西沢氏のデザイン監修による“リボン状庇”で複数の動線が可視化された。

 ホテルの客室から見下ろすとこんな感じ。

熊本駅ビルが開業、隣の宇土市では新庁舎着工

 そして、この広場に面して地下1階・地上12階建ての駅ビルが4月23日にオープンした。 設計は日建設計、施工は大林組。

 1~7階が商業施設「アミュプラザくまもと」、8階が結婚式場、9~12階がホテル(ザ・ブラッサムクマモト)。開業直前で中は見ていないが、1~7階の吹き抜け空間に設けた「水と緑の立体庭園」が目玉だという。

 もちろん、これらすべてが震災後に計画されたわけではないが、震災の被害が都市刷新の気運を高めたことは間違いない。コロナが終息したら、きっとV字で観光が復活するだろう。新たな活気に満ちている感じがした。

被災した宇土市役所(2016年5月撮影)

 熊本市ではないが、熊本地震の報道でよく写真を見た隣の宇土市の市役所(上の写真)は、解体され、ちょうどこの4月から新庁舎の工事が始まったところだった(下の写真)。設計は設計は久米設計・桜樹会・古川建築事務所JV。(宮沢洋)